第49話 交わらない想い
今日は料理クラブの日
何時もの様にレティを待つ。
ベンチに座って本を読む
………しかし全く読む気にならない。
ドアが開いて、ひょこっと彼女が顔を出した。
どうやら終わった様だ。
「 レティ、お帰り 」
「 ただいまです、殿下 」
黙ったまま2人で歩きだす。
「 私の悪役令嬢どうでした? 」
「 可愛い悪女さんだったよ 」
2人でクスクス笑い合う。
君に言いたい事がある………
誤解しないで欲しい。
あの令嬢と劇場に行ったのは、僕の意思じゃ無いんだ。
あれは間違いなんだよと………
違うんだよと言いたいのに言えない
口を開け、何度も言おうとして口をつぐむ………
言葉にしたいのに言葉にならない。
********
──『階段を登り、手を取り合った2人は 護衛騎士に囲まれ劇場の中に入っていった』──
私はこの光景が忘れられなかった。
夕焼けに染まり
1枚の絵の様な………本当に綺麗な瞬間だった。
この光景が
過去であり未来で見る現実と重なる………
彼女が、殿下には選ばれない女性だと言う事は知っている。
彼女じゃ無い………
そして自分でも無い。
3度の人生はずっと殿下に恋をしていた。
でも、その時とは違う小さく芽生えていた恋心が哀れに思われた。
私は、その小さな恋心に蓋をした。
だけど
あの夏祭りの夜に殿下と手を繋いで歩いたのは私………
「 殿下………お祭りで手を繋いでいたのは私ですよね? 」
アルベルトは心臓を鷲掴みにされた。
レティが愛しくて愛しくてたまらない………
うんうん………と頷き
ああ………
そうだよ、君だよ、僕は君が好きだよ、大好きなんだ。
溢れる思いを口にしようとした時
ラウルと目があった。
ラウルが馬車の中からこちらを見ていた。
固まった。
レティは
「 殿下、送ってくれて有り難うございます 」
スカートの裾をキュッとして馬車に乗り込んだ。
「 ああ…………またね………… 」
ラウル………寝てないんかい!!!
過ぎ行く馬車の中から
「 オーホホホ、………… 」…………と聞こえて来た。
ラウルが言わせているのだろう。
本当に仲の良い兄妹だ。
羨ましい…………
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