第50話 黒の魔法使いと白の魔女





「 マジかよ……… 」



私はおよそ令嬢らしくない言葉を発していた。

これの何処が『虎の穴』だと言うのか…………



今日は週末の休日。

朝から虎の穴に来ていた。


皇立特別総合研究所は、宮殿の敷地内の別棟にあり、ホテルみたいな豪華な造りで

中に入ると、床はグリーンの絨毯が敷き詰められ天井には豪華なシャンデリアがあった。


直ぐ右手にはフロントがあり、受付嬢はグリーンの制服を着てにこやかに笑っている。



「 中に入ったら薄暗く、目の前には3つの扉があって、1つ目の扉を開けると魔女が鍋で薬草を煎じているのよ、それが虎の穴なのに………… 」



「 どんな想像だよ? 」

いつの間にか横に来ていたアルベルト殿下がクックッと笑っていた。


あっ、聞かれてた…………


「 殿下、お早うございます 」

「 お早う、レティ……ほら、フロントで名前を言って 」



「 あっ……リティエラ・ラ・ウォリウォールです 」

「 今日からですね。虎の穴にようこそ。ハイ、名札です 」

………と受付のお姉さんから名札を渡された。 うわっ………

虎の穴が浸透してる………



「 アルベルト・フォン・ラ・シルフィードだ 」

あっ殿下も名前を言うんだ……

顔パスじゃ無いのね……

あっ受付のお姉さん、顔が真っ赤ね。



殿下は虎の穴が初めてでは無いんだわ。

そりゃあそうか………

ここ(皇宮)に住んでるんだから…………



そこで制服を支給された。

白のローブだ。

魔法学の殿下は黒のローブ。


因みに錬金術研究者は青のローブ、物理学研究者は赤のローブで色分けされており、このローブはダメージを吸収出来る様になってるそうだ。




さっとローブを羽織る殿下。

今日は黒の軍服を着てきているので全身黒だ。

魔法のダメージを少しでも軽減する為に、分厚い軍服を着ているそうだ。


何時も式典などではマントを羽織って着なれているからか、着用姿も様になっててドキドキする。


ローブなんて着なれなくて、もたもたする私にローブを掛け、衿のリボンを結んでくれた。



「す……スミマセン……」

真っ赤になって声が小さくなる。

殿下が満足そうに笑った………




そこに

ルーピン所長が、やあやあ言いながらやって来た。

「ようこそ虎の穴へ」


また、私をハグしようと手を広げたが、警戒していた殿下に睨まれ手を下げた。

この所長の女性への挨拶はハグみたいだ。

セクハラ所長にハグされない様に気を付けなくっちゃね。



「殿下は開花の為に、魔法の部屋にご案内しますよ」

「ウォリウォール君は、案内の子が施設の案内をするからもう少し待っててね」

ルーピン所長がそう言って歩いて行った。



殿下は

「可愛い白の魔女さん、じゃあ、行ってくるね」

………と私のフードを頭に被せて、黒のローブを翻して魔法の部屋に行ってしまった。



うっ、うっ………かっこ良すぎる。

あっ、受付のお姉さんも赤くなってボーとしてる………




案内のお姉さんが施設の使い方とかを案内中に、すれ違う人達がにこやかに声を掛けてくれた。


うーん……

想像していた虎の穴とは全然ちがうわね………

錬金術の研究部屋、物理学の研究部屋、他部所にも凄く興味が湧いた。



魔法の部屋の前を通りがかったら、窓から殿下が中央に立っているのが見えた。

ホールは円形でだだ広く、部屋は特別頑丈な措置がされてる様だ。



暫く立ち止まってその立ち姿に見惚れる…………



殿下の前には光り輝く魔石が台に乗せられており、殿下は魔石に向かって両手を前に付き出していた。



殿下がニヤっと笑ったとたんに魔力が発動した。

どーーーーん!!!


殿下の黄金の髪が靡き、黒のマントが翻った。



「 うわ~っ凄い、雷が落ちたみたい 」

思わず叫んでた。



後から聞いたら

普通は魔法の開花は1ヶ月以上鍛練が必要らしいが、

殿下は、ものの1時間で開花したらしい。


ルーピン所長が大魔法使いだと大興奮していた。

ギャラリーが一気に増えた。

あっ、案内のお姉さん目がハートだわ………

あっ、受付のお姉さんもこっちに来てる………

目がハートだわ………





私は案内をして貰った後に

皇立図書館へ行って、特別室に入り、専門書や資料をテーブルに引っ張り出して読んでいた。

虎の穴に入ると、この特別室に出入り出来る様になるのだ。



ここでの研究の過程がファイルされ、天井まである本棚にきちんと整理されていた。

虎の穴のスタッフ達と色違いで同じ制服を着ている。

図書館のスタッフ達は紺色だ。




暫く熱心に資料のページを捲り、ペンを走らせ集中していると、テーブルがコンコンと叩かれた。



「君、凄いね、医療の専門書が読めるの?」

殿下がいつの間にか前に立っていた。



はい、医者でしたから…………とは言えない。



「はい、白の魔女ですから」








  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る