第36話 恐れてなんかいられない




皇太子殿下御一行様が帰城し

続く様にして、ラウル達も帰宅し館は静かになった。



領地に着いたとたんに、押し殺していた感情が一気に溢れ、アルベルト殿下達や兄も来た為に、私がここに来たかった本来の目的を忘れていた。




ここに来たかった目的とは

私は馬に乗れるかを試したかったのである。




3度めの人生では私は騎士だった。



1年生から騎士クラブに入り

学園の卒業後に、1年間の騎士養成学校を経て、皇宮騎士団に入団したのである。



騎士養成学校では弓術訓練所に入り鍛練した。



私は騎乗した馬を走らせながら弓を射る事の出来る

類い希なる女騎士だったのである。




その日は突然に魔獣ガーゴイルが攻めて来た。



皇太子殿下率いる皇宮騎士団が討伐に挙兵した。

空飛ぶ魔獣には弓が効果的だが、弓兵の数が少なかった。


あまりにも突然に魔獣が攻めて来たが為に

アーチャーレティは、新米騎士の初陣であるにも関わらず、

隊の最前線で騎乗し、先頭を走りながら弓を射ち続け、皇太子殿下を庇い、命を落としたのだった。




これは3度めの人生での事だから、つい4ヶ月前の出来事だ。



あまりにもリアル過ぎて、考え無い様にしていたが

今は冷静に考えられる様になった。




取りあえずは

今の私が、馬に乗れるかを確かめたかった。



よし、と決めて

先ずは厩舎に行き、馬の世話をする。

馬に乗るには先ずは馬と友達にならないといけないのである。


15歳のレティも馬には乗れるが、それはただ散歩を楽しむ程度で、馬を自由自在に乗りこなせる様になったのは、騎士養成学校に入校してからだった。




アーチャーとして

ちゃんと、風の様に馬を自由自在に乗りこなせるのかを確かめたかった。




弓兵には訓練がいる。

ましてや騎乗して、弓を射ると言う凄技には更なる訓練が必要となる。



あの急な襲来では、かなりの被害を受けた事に間違いない。


前もって備えていれば……………

沢山の弓兵を養成し弓矢も大量に作っていれば……………




さあ、それをどうやって伝える?


何時もここで頭を抱えてしまうのである。



とにかく、今は馬に乗れるのかを確かめねば…………




早朝から馬の世話をし、乗馬服に着替えて馬具を着けた。



「良い子ね………私を乗せてね」


馬を撫で、キスをした。

馬に股がり手綱を引き静かに歩きだした。



いける………

風を切って走り出した。



初めて乗った馬だけど

馬もレティの手綱さばきが上手いからか、走りやすそうにしていた。



1時間程走らせたが、

馬に乗る技術と感覚は覚えていたが、身体は15歳の少女だった様でお股とお尻が痛かった………

駄目ね………


これはもう、頑張って乗って馴れるしかないわね。




それに………

私の馬が欲しいな。

帰ったらお父様に買って貰おう。


もし、駄目と言われたら

こっそり飼って育てよう!(←こんな奴)

お金なら………デザインで儲けた蓄えもあるし………




何時までも、恐れて泣いているレティでは無かった。






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