第37話 たった独りで背負うもの
私が20歳の時、つまり今から5年後に3度の大きな出来事が起きた。
私にとっては過去であり未来に起こる事だ。
もしかしたら5度目の人生が始まるかも知れない………
これは………考えない様にしょう………
4度目の人生をスタートさせた現在。
今までの人生と違う所と言えば………
殿下よね。
アルベルト皇太子殿下が何故か私に関わっている。
いや、寧ろ関わるだけでなく好意を持たれている………
う~ん………
これはどう言う意味を持つのだろうか?
アルベルト皇太子殿下は将来シルフィード帝国の第16代皇帝になる。
これだけ歴史に残る重要人物が関わって来てるのなら
何かが変わるのかも知れない。
ああ、頭がパンクしそうだわ。
まあ、殿下の事はおいといて…………
更に考える…………
1度目の人生では私は海に落とされ死んだが
2度めの人生ではあの船は沈没していた。
だから
2度めの人生で私は疫病にかかり死んでしまうが
船が沈没するのを知っているから
疫病が流行るのは船の沈没事故より後になる。
………3度めの人生で
船が沈没したのも疫病が流行ったのも知っていたので
3度めの人生で私が死ぬのが最も後の時期になる。
確か、騎士団の第3部隊と第4部隊がこの疫病でかなりの死者を出して壊滅的になった所での魔獣の襲撃だったのよね。
よし、時系列ははっきりした。
これの皆を回避出来たら、私は生き残れる事が出きるのだろうか?
やり遂げるしかない。
見捨てるわけにはいかない。
だって…………
絶対に回避しないと、あまりにも大勢の人が亡くなってしまうのだから。
…………と思案していたら
「 レティ、レティ、お父様がお着きになったわよ 」
と母の声が聞こえた。
「はぁい」
………と階段を降りて行く。
久しぶりの父の顔をみた。
「 お父様、心配掛けて申し訳ありません 」
父に抱き付いた。
父の腕の中で安心した様に泣き出した。
私には最も頼りになる大きな存在だった。
そう言えば、
どの人生でも、私のやりたい事を許してくれる父母だった。
「 お父様、お母様、大好き 」
「 あらあら、レティは甘えん坊さんね 」
母は優しく笑った。
「 すっかり元気そうだね、 良かった 」
父は安堵して、優しく頭を撫でてくれた。
父にとっては久し振りの長期休暇だったが
毎日の様にあちこちに視察に出掛けたり
執事のセバスチャンと帳簿に目を通し、管理が上手く行ってるのかをチェックしたりして忙しそうにしていた。
その合間に
父と私は馬で遠乗りに出掛けた。
「 レティ、上手くなったな 」
「 まだまだですわ、まだお尻が傷みますもの 」
「 お父様、お兄様みたいに私にも馬を下さい 」
「レティがおねだりとは珍しいな」
父が嬉しそうに片眉を上げた。
「そうだな、これだけ乗りこなせるなら自分の馬があっても良いだろう」
少し考えながら父が言う。
「 嬉しいですわ♪ お父様有り難うございます 」
「 子馬は自分で選びたいので、買い付けには私が行きたいから、お父様も一緒に行って下されば嬉しいのですが………」
「 良いだろう、一緒に行こう 」
父が嬉しそうに破顔した。
おお、お父様もかなりの美顔だわ。
お母様が夢中になって押しまくったと言うのも分かる気がするわね。
今でもラブラブだし………
今度、そこの所を聞いてみようかしらね。
馬上で夏の終わりを感じる頃
父の長期休暇も後僅かになり
私も父母と一緒に帰宅の準備に入った。
ただ平凡に生きたいと思って歩みだしたレティの4度めの人生は
どの人生よりも
独りで背負うにはあまりにも大きく重たくなって行った。
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