第26話 慟哭
私は1年振りに領地へと向かった。
いや、3度の人生の時の経過から数えたら
実に16年振りの里帰りだったのだ。
侍女のマーサと護衛のカイルが同行する事になった。
マーサはレティと共に馬車に乗り、馭者の横にカイルが座って出発をした。
「 行ってきまーす 」
「 私もお父様も後から行きますからね、道中気をつけて 」
母が心配そうに言った。
「 カイル、マーサ、レティを頼むぞ 」
「 はい、旦那様 」
「 楽しんで来いよ 」
ラウルが手をヒラヒラと振った。
皇宮での仕事が一段落したら、父も長期休暇を取れる事になっていた。
屋敷を空けるわけにはいかなかったので、今回はラウルはお留守番だ。
カラカラカラ…………
「 お嬢様、少し荷物が少な過ぎませんか? 」
「 大丈夫よ、必要なら向こうで買えば良いのだから 」
旅にはトランク1つあれば十分よ。
私は楽な様にと、淡いピンクのワンピースを着ていた。
手には白い帽子を持っていた。
ウォリウォール領地は皇都から馬車で2日位離れた街だが、 自然豊かな街だった。
私は街へ買い物に行くのも楽しみにしているのだ。
記憶を辿ると、確か名物のお饅頭が美味しかった事を思い出した。
馬車は皇都を出て、周りには緑の木々が揺れていた。
少しずつ空気が涼しくなって来て、風が心地よかった。
カラカラカラ………
途中の宿に一泊して
その日の夕方には屋敷に着いた。
馬車の音に
家人達がわらわらと外に出て来た
「 お帰りなさいませ、リティエラお嬢様 」
「 ただいま~ 」
懐かしい場所
懐かしい顔
ああ………
私は確かにここに居た…………
入学式が始まりでは無かった。
入学式前にも私はちゃんと存在していたのだ。
涙が次から次へとポロポロと零れ落ちた。
何かを吐き出す様に嗚咽し、立っていられなくなり膝から崩れ落ちていた………
家人達が慌てて駆け寄って来ていた。
それからの事はあまり覚えていない。
私の3度の人生は一体何なんだろうか
何故こんなにも繰り返してしまうのだろうか
それとも今が夢なのか?
もはや現実が何なのかもわからなくなった………
ずっと考えない様にして来た思いが溢れだした。
死への恐怖。
死ぬ時は痛かった、苦しかった、辛かった………
また、今度も20歳で死んでしまうのだろうか?
どんな風に?
5年後には私はどんな死に方をするのだろうか?
恐くて恐くて震えが止まらない…………
死にたくない、死にたくない、死にたくない
死んだら、また、やり直しの人生が始まるのだろうか…………
いや、死んでもいい
だけどまたやり直すのは嫌だ
もう、こんな生き方は嫌なのだ
いくら考えても答えは出なかった……………
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