第25話 追い掛けて
皇后主催の夕食会が終わった。
結局最後まで、リティエラ・ラ・ウォリウォール嬢が来る事は無かった。
これは皇后秘書官の完全なミスだった。
リティエラ・ラ・ウォリウォール嬢の名前は毎回リストに記されるが、何時も後に削除されるのであった。
あれだけ殿下が気落ちしてるのを見ると、皇太子殿下の秘書官としては許しがたい思いだった。
翌日クラウドは
ウォリウォール宰相に面会を申し出て、リティエラ嬢の欠席の理由を尋ねた。
宰相からは、成人まではリティエラ嬢を公に出すつもりは無い旨と、彼女は今は領地に行っている事を聞いた。
クラウドからの報告を受けての殿下の行動は早かった。
ウォリウォール領地に程近い皇族の領地にある、錆びた温泉地への視察の公務を、無理矢理捩じ込んで来たのだった。
皇帝陛下を何とか説得し許可も貰った。
勿論、公務なのでクラウドも行く事になった。
馬車なら2日かかるのだが
馬だと1日もかからない。
クラウドと護衛騎士を数名連れて城を後にした。
アルベルトはとにかく
レティに会いたかった。
それと平行して
ウォリウォール領地の館の執事から公爵邸に、リティエラの様子がおかしいと一報が入って来た。
屋敷に着いた時から泣き崩れ
食欲も無く
何か思い悩んでいるのか、時折夜には泣いている様だと………
この一報に父母や兄は驚愕した。
何があったんだ?
旅立つ前はずっと楽しみにしていて、当日は喜んで旅立って行ったではないか……
急遽、母親とラウルが領地へ行く事になった。
***********************
ルーカス・ラ・ウォリウォールは皇族に次ぐ最高位の公爵貴族で、シルフィード帝国の宰相である。
何代か前には、皇女が降下し嫁いできた、皇族の血筋でもある。
そんな父親の娘がリティエラである。
レティは親から見ても、小さい頃から見目麗しい可愛らしい娘だった。
そんな何もかも揃った娘には、当然ながら嫉妬や妬みが付いて回る。
ラウルは男だから自分で乗り越えて行くだろうが、
レティには、せめて成人するまでは、そんな邪悪な人達に接して欲しく無かったのだ。
アルベルト皇子が、立派な青年だとは分かっていた。
だけど、早くからお妃候補にはしたく無かった。
そんな思いもあってか、レティは主に領地で過ごさせたのだった。
しかし
最近のウォリウォール家の調査とラウルの話では、皇子がレティに感心を持った事は確かだった。
もしかして思い悩んでいるのはそこか………と………
一人ごちるのであった。
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