第19話 皇太子怒鳴られる
料理クラブでは
今日は魚の裁き方を教わっている様だ。
窓からチラリと見えた彼女の
白い割烹着の袖を肘まで捲り上げた白い細い腕に、ドキリとした。
他の生徒達とキャアキャア笑ってる彼女が可愛らしい。
何時もの様に、何時ものベンチに腰かけ、彼女が出てくるのを本を読みながら待っていた。
カチャン
ドアが開き、彼女がひょこっと顔を出した。
大きな薄いピンクバイオレットの瞳が笑った。
「 殿下、ただいま~ 」
今日は彼女から言ってきた。
当たり前になったこの時間が嬉しい。
「 お帰り、今日は魚と格闘していたね 」
「 ええ、最初は怖かったけど、やってみたら案外簡単だったわ 」
そりゃあそうだ。
2度めのレティの人生は医者だったのだ。
魚の解体など何の問題も無かったのである。
「 おっ、言うね、御披露目、楽しみにしてるよ 」
2人で並んで歩いていると
彼女が何やらモジモジして、何時もより何気に距離をとる。 …………?
「 何? レティ? 」
彼女は言いにくそうに、頬をちょっぴり染めながら上目遣いで
「 き………今日の私は魚臭い………と思います 」
彼女に近寄って
腰を屈め、頬の横をクンクンと嗅いでみた。
「 大丈夫だよ、何の……… 」
………と言いかけた所で
「 殿下!女性の匂いを嗅ぐなんて酷いですわ 」
彼女が顔を真っ赤にして怒鳴った。
「 ご免、ご免、悪かった………… 」
両手を胸の前で広げて慌てて謝る。
「 全く失礼にも程がありますわ! 」
そう言いながら、彼女はプンスカ怒りながらスタスタと歩いて行った。
怒鳴られてしまった………
怒った顔も可愛いな♪
クックッと笑いながら後ろから付いていく。
「 あっ!そうだ!!600点満点おめでとう 」
彼女が足を止めた。
「 モーリス先生って酷いのよ 」
彼女は耳を垂れた子犬の様にシュンとしていた。
怒ったりシュンとしたり何やら忙しい。
「 いくら200点も要らないって言っても、聞いてくれないのよ 」
笑いが止まらなくなった。
「 まあ!殿下ったら他人事だと思って! 」
またまた、プンプン怒りながらウォリウォール家の馬車に乗り込んでいった。
馬車の中から
「 お前!魚臭いぞ 」
「 女性に臭いなんて言うんじゃない!!! 」
ラウルも怒鳴り付けられていた。
馬車の窓が開いて
「 殿下、送ってくれて有り難うございました 」
笑いながら
彼女に
「 またね 」とヒラヒラと手をふった。
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