第14話イマジネーション

Ⅰ 影


真夜中に目覚めて

闇をかきわける

なぜこうしているのだろう


けだるく

皮膚が重い


影だ

陽のなかで真実だと信じていたものが

いまは重い


イメージのキャンドルをともし

皮膚を脱ぐ

もう一本ともし 肉を脱ぐ……


透明になった躰をとりまいて

闇のなか

十本のキャンドルが燃える



Ⅱ 樹


果てしない闇のなかで

アインが凝縮する

何かが起こる


闇は集中して

まばゆい一点があらわれた


光は肥えた土のように

大きな木を育てる

天に深く根をはり

大地に向かってそびえている


十の果実がみのった

実のなかで

ひざを抱えた胎児が

熟している



Ⅲ 海


激しく

水が流れている

鼓動がする

規則正しく風が通りぬける


両手ですくい取られるような

あたたかい場所で

進化している


アミノ酸のひとつぶから

人間へ

何億年という過程を

瞬時に超えて


小宇宙ミクロコスモス

あか

小さくて大きな海

源初からの記憶を溶かし

与え続けている

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