第13話ファンタジア

蛇は尾を噛み

世界を囲んでいる

宇宙卵のなかで

子はまどろみ

至福の時を生かされている


時に先立つ世界

すべては「母たち」の腕の中で起こり

永遠に終わることはなかった


深淵にへだてられ

乳色のもやが消えるとき

子は静かに目覚める

「母たち」は激しく抱き寄せようとするが

卵は割れてしまった


怒りが「母たち」を狂わせる

ひらり身をくねらせ

襲いかかり

我が子を貪る


淡い光のなかで

「母たち」は血に染まった口をぬぐう

白いゆびで胸をかきむしり

傷つきながら

声にならない悲鳴をあげる


ふたたび子は腕のなかにあった

輝く光の輪のなかで

つかのまのやすらぎを生きている


生まれ死に

ふたたび生まれ__

怒りは繰りかえされる


蛇はどこへ行ってしまったのか

太古の記憶は薄らいでゆく


時に先立つ世界

すべては「母たち」の腕のなかで起こり

永遠に終わることはなかった

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