第12話朱い海の歴史

月が満ちてくると

入り江から果実が流れてくる

種子のない果実は

太母ののなかで

あかい海の底に沈んでゆく


月が満ちてゆくと

朱い海の水はあふれ

土に吸われて消えてゆく

入り江から果実は流れ去る

形にならなかった果実の存在を示すような

小さな痛みをのこして


果実は生まれ続け

朱い海は果実を殺し続ける


永遠に

繰り返す時間のなかで

月は満ち

月は欠ける

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