「6回チェンジしたらヤクザが来たでござるの巻」とは、昔の2chでよく知られた『忍者ハットリくん』の架空サブタイトルのネタであるが、本作はまさしく、好みに合わないデ○ヘル嬢に客が宣告するそれのように、勇者ケンジが行く先々の世界に「チェンジ」を突き付ける物語である。
……とまあ、この時点でコメディなのはお分かり頂けると思うが、ヒロインとのイチャイチャを捨ててでもチェンジを叫びたくなる各世界の事情が、実に丁寧かつシニカルな笑いを誘う筆致で綴られており、現代版ガリバー旅行記といった様相をも呈している。
ケンジを様々な世界にたらい回しにする張本人・女神ベアリスとの詭弁に満ちた掛け合いや、どの世界でも運命の如く現れる宿敵・カルアミルク(通称)との丁々発止も面白く、次の世界にはどんな滅茶苦茶な「裏」があるのか、カルアミルクはどこで出てくるのかと、読者は良い意味での「お決まり」に期待しながら読み進めてしまうこと必至だ。
物語はいよいよ5つ目の世界を巡り終え、6つ目の世界に突入するところ。不幸にも女神に振り回され続ける哀れなケンジが、6回目のチェンジを叫んだ時に何が待っているのか、完結まで目が離せない一作である。