第84話 忍者が恋なんてするわけない③(セバスチャン視点)

 なんてことだ、なんてことだ、なんてことだ。

 私には、モッカお嬢様という心に決めた人が居るというのになんてことだ。


 ここは楽園か、なんなんだこの女性達は……。


 トウカといったか、今は粗削り、だが磨けば必ずや光り輝くであろう幼女。


 しなやかで無駄のない筋肉、だが信じられない程の透明感を持った柔肌の美女スミレ。

 

 その大きさ、形、張り、弾み具合、もはや芸術、何を食べて育てばあんな胸が完成するというのだ、あれではもう胸元に広告を張り付けたTシャツを来て動画配信するだけで生きていける領域に達している。ボタン、あれは逸材だ。

 

 極めつけはユウという女、なんなんだあの言葉遣いは、けしからん。あの罵倒は玄人の技、罵倒しているように見せかけたご褒美、あんなに綺麗に成長した大人の女性から繰り出される魅惑の言葉に耐えられる気がしない。


 モッカお嬢様が居たから、モッカお嬢様だけに心を向けていたから、厳しい御屋形様にも仕えてこれた。

 だが、今目の前に広がるこの楽園に、私の心は悲鳴を上げている。


 もしも、もしもだ、この楽園にモッカお嬢様が住まわれることになれば……。

 

 それはもう楽園とは呼べぬ、形容すべき言葉は唯一つ。


 ハーレムっ。


 なんということだ、ハレマ・ハレオ、貴様はこの大罪の城を、どうやって作り上げたのだ。けしからん、実にけしからん。私も住みたい、なんとしてもこのハーレムの住人に加わりたい。

 例え御屋形様に謀反者と罵られようとも、伊賀の里を追放されようとも構わない……ふふふ、裏切りは忍者の専売特許だからな。


 だが、このことを誰かに悟られてはならん、取分けハレオ殿には気付かれぬ様振舞わねば、不本意だがハレオ殿の機嫌取りも心がけよう、まずはそれからだ。

 そしてモッカお嬢様を迎え入れる準備を整える。この大罪の城の改造だ。


 「なぁセバスチャン、なんでここを忍者屋敷に改造する必要があるんだ?」

 ふっ、愚かな奴め、モッカお嬢様が大の忍者好きということも知らぬとは、このままカラクリ扉の扉にでも括りつけてやろうか……いかんいかん、ハレオ殿には優しく接しておかねば。


 「ハレオ殿、ここは素晴らしい場所だな、こんなに若いのに立派な城を持つとは、恐れ入ったよ、見直した。なかなかやるではないか」

 「なんだよ急に、さっきまで粛清してやるとか言ってたくせに、怪しいな」

 くっ、めんどくさい奴め。


 「モッカお嬢様が心配だからな、だが、ここならば少し手を加えれば喜んで住まわれるだろう」

 「そ、そうか、それは良かった、そうかモッカがここに住むかもしれないのか、それは良いな」

 たわけがっ、ニヤニヤしおって、下心が見え見えだ。お前に似合いの牢獄をこしらえてやろうか。


 「ハレオ殿、悪いが部屋を一つ私に譲ってはくれぬか?」

 「ああ、いいよ、空いてる部屋を自由に使ってくれ、でも共用部分は皆の許可を貰ってくれよな」

 「感謝する」

 バカめ、その言葉が命取りだ。


 「そうだ、風呂とトイレは一番奥な、俺はキッチン横の狭いシャワールーム使ってるから、奥は広くてジャグジー付きだ、多数決で女専用になってるから仲良く使ってくれよな」

 ……仲良く、ジャグジー風呂……。


 「どうしたセバスチャン、鼻血出てるぞ」

 「あ、いや、これは……毒、かな」

 「毒?」

 「ほ、ほら、忍者は毒に耐性を付けるために、色々な毒を少しづつ服用して体に慣らしているんだ」

 「へー流石忍者、じゃあ後はよろしくな」

 「ああ、任せろ」


 最高の忍者屋敷にしてやる。

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