第41話 声優少女は眠れない②

 春雷が煩い所為でも、慣れない枕の所為でもない。 

 瞳を逸らすことなくBLアニメのセリフ完コピと称し「好き」だという言葉を3回もハレオに言ってしまった事実。その胸の高鳴りは収まることなく、スミレの眠気を彼方へ追いやっていた。

 

 「どうしよう、言ってしまった。確かにハレオの事は友達として好きだけど、どさくさに紛れて、あんな告白をしてしまうなんて、今日の私、どうかしてるな……」

 「ハレオ……気が付いたかな、私の本音が含まれていること……」

 「まさかね、あんなふざけた台詞、ハレオもそこまでおバカじゃないよね……」

 「そう、ハレオは、おバカじゃない、凄く料理が上手いし、節約上手だし、なんでも話聞いてくれるし、優しいし、カッコいいし……」

 「カッコいい?カッコいいかな……顔は普通よりちょっと上だとは思うけども……」

 「そういえば、最近背もぐんぐん伸びて、いつの間にか抜かされちゃったな、スポーツしてないのに、やけに筋肉質だし」

 「声の質も良いんだよね、ちょっと若い津田健次郎さんみたいな感じ……耳に優しい感じ」

 「手も大きいんだよな~、料理してる時のあの手の動き、惚れ惚れするわぁ」

 

 「……そりゃボタンちゃんも本気になるわ、嘘付いて泊まりに来るわ……何も出来なかったって喚いていたけど、なんだか嬉しそうだったんだよな~」

 「はぁ、どうしよ、なんかハレオのことばかり考えちゃう、眠れない」

 「ハレオ、寝ちゃったかな、流石にね、早寝早起きがモットーだっていつも言ってるし……」

 「じゃあ、今行けばハレオの寝顔を見れるのか……チラ見しておこうかな、見るだけならいいよね、見るだけ……」

 「いや~ダメダメ、何かあったらどうするの、ハレオがお父さんに殺されちゃう」

 「何か……ナニかって、何?あんなことや、そんなこと?」

 「は?何言ってるの、変な想像しないでよ私っ、もっと眠れなくなっちゃう」

 「でもさ、もしもよ、もしも私とハレオが、そんな関係になったら、やっぱりボタンちゃん怒るよね、ダメだよね……あれ、でもボタンちゃん一夫多妻制賛成派だったっけ、好きな人が好きな人を好きになって一緒に居られるならって……」

 「無理無理、だって独り占めしたいもん」

 「ハレオだって猛反対してたし、お父さんがあんなだったしね」

 「よし、じゃあ私がハレオを独り占めしようかな」

 「ってダメって言ってるでしょ、ボタンちゃんを泣かせる気?」

 「……いいの?ホントにそれでいいの私は、友達に気を使って自分を押し殺してさ……学校だってそうだったじゃない、お父さんお母さんの機嫌ばかり取って、陸上頑張って、声優の夢を押し殺してさ、だから今になって苦しんでいるんじゃないの?」

 「……でもな、ボタンちゃん泣かせたくないな……」

 「いや、そんなこと言ってるからダメなのよ、自分をもっと大切にしないと後悔するわ」

 「そうよ、私、行くわ、ハレオの寝顔を見に行く、それで何かあったら、もうそれはそれでしょうがない、ボタンちゃんに謝る、うん、しょうがない」

 「いや、しょうがなくないでしょ」

 「いや、でもな~」

 「う~ん」


 朝が来た。

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