第17話 美少女になんて挟まれない⑤
もっとも忌み嫌う父親の、最悪な愚行、愛人を侍らせたハーレム。
それを事も有ろうに自分が作り出しているだと……。
ハレオは金田の言葉に青褪め、そして座っていたソファーを振り返る。
確かに、そこには美少女と呼べる2人が座っている。そしてハレオに対し、熱い視線を飛ばしていた。
幼い頃から一緒に居たから気が付かなかった、いや、高校生になり、その魅力が増したのか、どちらにせよ、ハーレムと言うものは自ら名乗る状態では無い、それはハレオが一番よく分かっている。父親もそうだった、その財力に群がる女達を、自らの行為をハーレムだとは一言も言っていない、それは、他者が謳う事象、ハレームとは羨望の象徴、蔑みと欲望の俗称。
「俺は、ハーレまないと誓ったのに、俺は……」
「なんだよハーレまないって、まぁ自覚が無かったのなら、知れて良かったな、自重しろ、出来なければ登校するな」
そう言ってハレオの肩を叩く金田。
第一候補はボタン、スミレは第二候補、金田もまた、キャンパスのアイドル狙っていた。
「まぁ、自重しないなら、俺が力尽くで、お前を退学に導いてやるからな」
「力尽く」ハレオの耳にもその違和感ある言葉は入っていたが、それどころではなかった。一刻も早くこのハーレム状態をなんとか解消しないと、自身がそう思っていなくても、周りがそう思ってしまえば……「所詮、あの父親の子」「蛙の子は蛙か」「日本から出ていけ」幼いハレオに浴びせられていた侮辱の言葉が脳裏に浮かび、呆然と立ち尽くす事しかできない。
「どうしたのハレオくん、ねぇ、ハレオくんってば」
項垂れるハレオを心配し、駆け付けたボタンはその体を揺する。
「ハレオに何言ったんですか金田先輩、イジメたりしたら許さないって私言いましたよね」
ハレオを庇う様に、割って入り、金田を恫喝するスミレ。
「な、なにもしてねぇよ俺は、なぁ晴間、今日から仲良くやろうぜ」
スミレがあまりにも顔を近付けて恫喝するものだから、その可愛さにデレデレになり、そそくさとその場を離れる金田だった。
「ハレオくん、大丈夫だった?殴られたりしてない?」
「ったく金持ちのボンボンだからって、なんでも許されると思うなっての」
「でも、ホントダメだよスミレちゃん、あの人の父親はこのビルのオーナーで、このキャンパスを借りるのにも色々と口を利いてもらったらしいから」
「そんなの関係ないわよ、ハレオ何言われたか分からないけど、気にしないでね」
「ああ、ちょっと1人で考えたいことがあるから、ごめんな」
そう言って、ハレオはトイレを探した。
それから、その日の授業は何も手につかなかった。
幸いにも、メンターが教鞭を執る授業は2コマしかなかった為、なんとかやり過ごせた。
その他の自由に学習できる時間を、トイレや、新しい場所を一人で散策など、何かと理由を付けて、ボタンとスミレを引き離した。
そして、その日の最後の授業【グループディスカッション】
これは、W高の通学コースが毎日必ず最後の授業として取り入れていて、高校側や生徒自らテーマを決めて、テーマ選出者や指定された生徒が「促進する」「容易にする」「助長する」などの意味があるファシリテーターとなり、テーマの是非を話し合う授業。
会議の場などで求められるプレゼン能力、コミュニケーション能力を高め、高校生のうちから話し合い場に慣れ親しむことを目的としており、参加は自由だが、その有意義な授業故、参加する生徒は多い。
そのグループディスカッションの数分前。
「大丈夫かなハレオくん」
声を掛けてもうわの空のハレオを心配したボタンがスミレに寄り添う。
「うーん、そうだ今日ハオレの家に行く約束してたよね、その時にでも色々聞いてみよう」
「そだね、鴨南蕎麦も楽しみー」
「あっボタンちゃん、ハレオの家の中はまだ見てないんだよね?凄いんだよーどうしたらあんなとこ住めるんだろ」
「なにそれ自慢?」
急に機嫌が悪くなるボタン。
「あっいや、そういう訳じゃなくって」
「でも、わたしもソレは、気になっていたんだよね、ハレオくんの父親は財産を何も残さなかったって聞いた覚えがあるし」
「もしかして、宝くじでも当たったのかな?」
「えーそんな訳ないじゃん、というか宝くじ当たって高級マンション買う高校生ってどんだけーって感じじゃない?」
「あはは、確かに」
「まぁ色々聞いてみようよ」
「そうだね」
なんだかんだで仲の良いボタンとスミレ、そしてそんな2人の会話を聞いていた金田は、グループディスカッションの準備を進める生徒の肩に手を回し、何かを囁いた。
「ハーイ、じゃあ皆集まってー、今日のファシリテーターは金田さんが名乗り出てくれましたー」
メンターの1人が号令をかけ、皆を中央へ集めた。1年生から3年生まで全員だ。
「あれー今日は佐藤さんの「時間をお金で買うべきか」についてじゃなかったの?」
「佐藤さんは辞退したので、金田さんが代わりに努めるそうです、じゃあ金田さん、どうぞ」
「はい、宜しくお願いします。では、今日のテーマは……」
金田は、誇らしげに宣言した。
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