第5話 証明

 6部屋の前に舞姫先輩が立っていた。


「わたくしじゃありませんよ?」


 さすがにこの構図は言い逃れができない。それに美白先輩は舞姫先輩を疑っていた。動機はある。そうなると蓮花さんをどこかに消したのも舞姫先輩ということになる。でも美白先輩は自分が犯人といった。


「わたくしより先に来た人物が犯人ですよ」


「いませんよね?6部屋は一番奥の部屋ですよ?」


「いえ、可能性はあります。殴った後、光さんの3部屋とわたくしの4部屋の間のトイレに隠れて自室に戻った。美白さんが犯人と仮定していたなら確実な動機を持った人物がいるはずです」


「蓮花さんの友達…結美さん」


 なら蓮花さんを消したのは美白先輩、美白先輩を襲ったのは舞姫先輩か結美さん。結美さんの部屋に行きましょう。



 2部屋の結美さんの部屋。


「結美さん、さっきどこにいましたか?」


「ん?あたし?ここにいたよ?」


「美白先輩と話したりしていませんでしたか?」


「してないけど?」



 6部屋から戻ってきたのか先生が奥側からやってきた。


「はぁ…また友利が第一発見者なのね、さっき竜奈にも聞いたけど何も知らないっていうし、まさか波乱ありとは言うけれどその本人が襲われるとは蓮花、次の狙いは美白、でも友利が怪しいわね。犯人が美白じゃないと考えるなら友利で確定ね」


「犯人が二人いるってあり得ません?」


「共犯者?それとも対抗者?貴方は随分と美白を疑ってたわよね、貴方が犯人でいてほしくはないけれどね、動機としては結美が濃厚なのよね」


 こういう時は一番犯人に遠い人物に聞こう。1部屋に向かった。でもいない。さっき奥側の6部屋から来た柳原先生が竜奈に聞いたと言っていた?まさか焔先輩が?6部屋に?でもいなかった。ならどこに?ああ、そうか、あの人食堂にいるんだった。なら焔先輩も殴るという意味では強そうなイメージ、犯人の可能性があるのでは?


「あの、さっき美白先輩と話しましたか?」


「あたしは魚と話してるわ」


「そ、そうですか。さっき美白先輩が…」


「次は美白なのね、なら5部屋、6部屋、終わりだわ。それともまた1部屋から、または管理室に戻ってあたしか柳原先生が殺されるわね。あたしが殺された場合、4部屋の姫か管理室の柳原先生が犯人ということになるわ」


「美白先輩生きてますよ。多分犯人は二人います」


「もう一人いるのね、なら被害者的に結美じゃない」


「そうなりますよね」


「竜奈」


「ふむ、姫ではないか」


「お話のところ悪いのですが美白さんが光さん、貴方を呼んでいますよ」


 多分問題が発生してパニックになっているのだろう。


「わかりました、行ってきます」



 6部屋、美白先輩の部屋でははらわたを抑えて美白先輩が待っていた。


「さぁ…答えを聞こうかな、次の被害が出るよ」


「もう一人の犯人を放っておいていいんですか?」


「おぉ、共犯者がいるとよく気づけたね、まあ合ってないだろうけど。答えを聞くよ」


「わかりました。まず、次の被害者は神崎光、私です」


「……まあ、色々と言いたいことはあるけど全部聞かせてもらうよ」


「勘づいている人は焔先輩、美白さんが苦手な人は蓮花さん、私を恨んでいるのは美白先輩、貴方ですよね?」


「まだ最後の問いが残ってる、よ」


「3日目の生存人数は美白先輩、貴方一人です」


「はぁ…」


 何か当たったんですね。私は美白先輩に勝った。あの美白先輩に。

 急にはらわたを抑えていた美白先輩がまるで殴られてないかのように嘘のように立ち上がった。


「あーあ、君にはがっかりだよー」


「え…えっと」


「結論から言うよー、全部外れ。それに一つは答えを知ってるはずなのにねー。でも理由は聞かないとねー、君なりに一生懸命頑張って調べた理由をね」


 予想外だった。すべて外れ…よって被害者はまだ出る。それにもう一人の犯人を知っている?


「まず、私に犯人と自白した、それは次に私を殺すからです」


「ふーん、そういう考えもあるのかー、次は次はー?」


「焔さんの意見は意外に参考になりました。私も納得させられたくらいです」


「どういう意見だったのー?」


「5、4、3、2、1、と殺していくんですよね?」


「ははっ、面白いねー」


 人を殺しておいてよく平然とそんなことを…。


「美白先輩が苦手な人物は蓮花さんだった。苦手だから先に始末した。違うんですか?」


「もっと面白い答えを期待したんだけどなぁ」


「私に見せない顔を見せた、あの時の美白先輩は怖かった…あの時に既に殺されるかと思いました。私を相当恨んでいたのでしょう」


「あの時の顔は実に面白かったよーやったかいがあったねー」


「……貴方は元から殺人犯だったんですね…それを貴方の最大の武器、嘘で隠し通し今回の機会をいいことに殺戮を目論んだ、違いますか?」


「0人という回答じゃなくてよかったよ、感想文を5枚提出するためにこの事件を論文にすると答えたから美白は生きてるよ」


「いいえ、貴方はもう感想文すらかけない。捕まります。でも一人ではない?共犯と、まさか柳原先生が…」


「はぁ…もう耐えられない。ふふっ、あははははははっ」


「何がおかしいんですか?人を殺しておいて」


「まだだよー」


「はい?」


「答え合わせだね、まあこの問題は答えが書いてあるのに間違えてるけどねぇ。次の被害者は光ちゃん君じゃなくて美白だよ?」


「はい?殴られることわかってたんですか?」


「美白さー、本当、真実は嫌いなんだよねー、あまり言いたくないというか。あとは頼むよー」


「はい、美白先輩の力になれてうれしいです!」


 病院のベッドのような場所、そこから現れたのは消えたはずの七宮蓮花さん。


「私の悲鳴の演技で舞姫先輩が死んだふりをした私を見つけてくれましたからね。うまく血のりで騙しましたよ」


 共犯者はまさかの被害者の蓮花さんだった。そもそも美白先輩は犯人とは言った物の人を殺したなんて始めから言ってない。


「舞姫先輩が職員室に行っている間に美白先輩の部屋に入って私は匿ってもらってましたよ。二人きり幸せでしたねー」


 完全に美白先輩の支配下に置かれている蓮花さん。


「殴られた演技もさすがです、私も美白先輩を見習わないと」


 それはやめましょう。


「つまり、美白先輩は誰にも殴られてないんですね?」


「そうだよー」


「私はこれだけ言ってあとは二人きりのほうがよさそうですね…私、蓮花は光さん、貴方を恨んでいた…」


「え、私が何を」


「貴方は美白先輩と一緒なんて、私もその座に就きたかった…」


「そ、そんな理由で恨まれても…」


「まあ、恨んでるというのと羨ましいの両方ですかね、あとは仲良くしてください」


「美白先輩、一つは分かりましたよ、つまり誰も死なない、生存人数は7人なんですね?」


「そうだよー、だからヒントあげたのにー。なんで蓮花がいないのに7人って言う選択肢があるか考えなかったのかなぁ」


「ですがあとの二つは本気でわかりませんよ、勘づいていた人、単純に舞姫先輩ですか?」


「蓮花は仲がいいんだよ?結美ちゃんと、美白の犯行って一番勘づいてたねぇ。竜奈はなんで出てきたかなぁ。竜奈の鋭さに負けたようだね」


「確かに蓮花さんなら美白先輩の話をたくさんしてそう…最後の一つですよ、苦手な人は誰なんですか?」


「竜奈だよ、鋭いからねぇ、話しててわかったよ。牙を隠すタイプだね。あの手の人間は一番騙しやすいように見えて変なところで意見がころころ変わる。ある意味一番読みにくいからなぁ」


「言われてみると私も美白先輩の次に敵に回したくないですね」



 次の被害者    神崎光   成瀬美白

 勘づいている人物 焔竜奈   桜結美

 美白の苦手な人物 七宮蓮花  焔竜奈

 光を恨む人物   成瀬美白  七宮蓮花

 最後の生存人数  1人     7人



「こう見ると見事に外してるねー、次の次の被害者なら妥協点で光ちゃんで合ってたのかもねー」


「まだ被害が起きるんですか?」


「美白に賭けで負けたらどうなるか知らないのかな?」


「そういうことですか、お金ですね…確かに負けました。屈辱です。そういう意味では被害に遭っていますね…」


 美白先輩に賭けで負けるということはお金を渡すということを意味する。金を取られる、私は被害者だ。確かなぜか5000円支払うという謎のルールがあるのですが5000円がない。


「あの、そんな大金がないと言いますか…」


「いいんだよ今回は、支払うという現実を突きつけられた。被害者に光ちゃんはなってしまった事実さえあればね。君は第一ゲームに負けた、第二回戦。美白と光ちゃんを抜きにしたこの5人の中で、美白が賭けた人物は何人?いない可能性もあるよー?0人から5人」


「賭けをしていたのは私だけではなかったのですか?」


「答えを言っちゃ賭けの意味がないよー、今日の夕食、君の賭けはこの賭けこそ光ちゃんの賭けということにしよう」


「前の残りの5個の賭けは?もう終わったよ、光ちゃんだけ特別に二回戦。この賭け内容を夕食に言ってもらうよ。今は蓮花が現れて寝たばらし中かな?、そろそろ夕食だねー。考えておいてねー、本番で嘘を吐かれないために」


 それだけ言うと美白先輩は自分の部屋から出ていくのであった。

 彼女のことなら他の人物にも賭けはやりかねない。特に美白先輩とほぼ一緒にいた蓮花さんはほぼ賭けていたとみていいでしょう。さらに蓮花さんと仲の良い結美さんも美白先輩に興味を持っているような感じがしたため賭けていた可能性が高いです。舞姫先輩。騙されないことに警戒したこの方は賭けていないでしょう。そして焔先輩。これは美白先輩がヒントをくれました。一番苦手な人物。苦手な人物にわざわざ賭けをしないでしょう。最後に柳原先生。そもそも先生が賭けに乗るとは思いません。よってこの答えは。

 数十分後、美白先輩を見つけた私は答えを言う。


「二人です!」


「ふーん、二人かー、じゃあ夕食だし答え合わせしようねー」


 蓮花さんが現れたことによりいい意味で混乱する一同を前に食堂に集まった私含める7人。


「はぁ…また貴方は、心臓が飛び出るかと思ったわ、やめなさい」


「でも美白、殺人者でも違和感なかったでしょー?」


「いい加減にしなさい…はぁ」


「くっ、また成瀬美白はわたくしをはめて…」


「ふむ、この場合最初の被害者誰になるのだろうな」


「蓮花が行ってる通り何か裏があるとあたし思ってたんだよね」


「まあ一件落着にもならなさそうね…始末書かしら…夕食にしましょう…」



 そろそろ始めようか、美白と賭けた人物達、証言はもう取ったからねー。美白が勝つか賭けた人物たちが勝つか。もう答えは美白は聞いてるけれど。



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