第3話 試される光
私は2年Cクラスの神崎光。私の学校にはAクラスは正統派の生徒が多い。Bクラスには近寄り難い生徒が多い。Cクラスには人望が厚い生徒が多い。Dクラスには変な生徒が多い。と勝手に決めつけられている。
そして、この学校で知らない人はいない言葉。成瀬美白いるところ波乱あり。この課題合宿でも波乱は起きてしまった。
私は蓮花さんが倒れているところを見てはいないけど5部屋には血があった。そして舞姫友利さんは七宮蓮花さんが確かに倒れていたと言っていた。
少し動揺を隠しきれていない私の担任の先生、柳原里海先生自室にいるように指示した。
「も、もう夜だから…とりあえず寝なさい…悪戯が過ぎるわね…」
翌日、8時起床だったけどいつもなら学校で7時起床。今日は昨日のこともあり6時に目が覚めた。
動揺している先生が部屋に入ってきた。
「あら…おはよう…見回りよ、早いわね」
「あの…昨日の…」
「ないのよ…」
「え…?」
「いないのよ…蓮花がいないの。1部屋の竜奈の部屋から6部屋の美白の部屋まで見回りをしたけどいないのよ…」
「それって…おかしくないですか?」
「おかしい…わよね。成瀬美白いるところ波乱あり…」
「関係あるんですかね…」
「確証はないわ、でも美白が絡んでる可能性は大きいわね」
9時、朝食を取るもののやっぱり蓮花さんがいない。
仲が一番いいと思われる結美さんから声がかかる。
「先生?蓮花はどうしたんですか?」
「ふむ、そういわれると蓮花とやらがいないわね」
「……」
先生は黙ってしまった。先生はきっと公にしていいかどうか迷っているのだろう。
この蓮華さんを除いた6人の中で唯一この波乱になれている人物がいる。その人物がいるところには波乱が付きまとう。
「あー、昨日のあれかー」
「美白先輩知ってるんですか?」
「なんかねー、蓮花ちゃん消えたらしいよ?神隠しとか?それとも殺人事件?面白くなってきたねぇ」
その言葉に美白以外が緊迫の表情になる。
「美白、貴方ねぇ…他人事じゃないわよ…殺人事件ならこの中に犯人がいることになるのよ?」
「美白が名探偵やろっか?」
「もしかして貴方…」
「どうしたのー友利ちゃん」
「貴方が殺したんじゃないんですか?」
「美白が?殺す動機がないよー、だいたい何時から何時の間の犯行なのー?」
「結美が23時には出たと言っていた、あの時の時間は15分だったわね、あくまで私が見た時間よ。友利、最後に蓮花を見た時間は?」
「それは…そこまで頭が回らなくて…ですが23時は過ぎていました。寝ようとしたら悲鳴のようなものが聞こえました」
「悲鳴ですか?2部屋からは聞こえなかったですよ」
「あたしは22時過ぎに寝てたから知らないわ、寝る子は育つのよ」
蓮花さんが殺された?どちらにしても最後に見たのは友利さんということになる。でも蓮花さんはいない。
「じゃあ美白的に胃袋にいるんじゃない?」
「どういうことですか」
「サメの胃袋に、シャチでもいいかなー」
「え?もう蓮花ちゃんこの船に乗ってないってこと?」
「潜水してるからねー、ここから出たら海だよ、殺した後に海に放り投げた、とかー?」
美白先輩は殺人で考えているけど確かにあの血、蓮花さんはいない。もう海に放り投げだされたのかもしれない。でも誰が?どこで?どうやって?
「わたくしは美白さん、貴方しか考えられませんが。貴方は平気で嘘を吐く。そしてついに殺人という超えてはならない一線まで超えてしまいましたか…」
「美白を容疑者扱いするなんて酷いねぇ、だいたい友利ちゃん以外倒れた蓮花?を見た人いないんでしょー?自分でやって自分で目撃者になったんじゃなーい?」
「わたくしこそする動機がありません、わたくしは貴方が犯人と睨んでますよ」
「じゃあこの中で一番犯人に遠い人に聞こうよー」
「この中で一番犯人に遠い人?仲の良い結美さんですか?」
「違うねー、表上仲が良くても裏では恨んでる可能性もあるよー?それにせんせーの話では23時直前まで蓮花は結美ちゃんの部屋にいたんでしょ?」
「そうよ」
「だから毒を飲ませて殺すことはできるんだよー」
犯人に一番遠い人物、ということは私はトイレで友利先輩と鉢合わせになったから違う。美白先輩は5部屋の隣だから違う。5部屋から一番遠い部屋。管理室。
「柳原先生ですね」
「惜しいなー光ちゃん、せんせーは全員の行動を把握できる立場、もしかしたら監視カメラとかあるかもしれないしねー」
「残念ながらないわよ」
「ふむ、一番遠い人物か、誰よ、難しいわ」
「貴方ですよ、竜奈」
「え、あたし?寝てたから知らないんだけど?」
「だから聞きたいんだよー」
「話を聞く限り一番最初に見た姫になるけど?」
「だってさー、自白したらー?友利ちゃん」
「本当にわたくしはやっていませんしやっていたならわざわざ先生にまで報告に行きませんよ、それよりも貴方の冷静さが怖いんですが」
「美白は蓮花が倒れたところなんて見てないしなー」
殺人なのかすらわからないが確かに血はあった。まだ生きているかもしれない。でも、美白さん、この人だけは平然としている。私も思ってしまった。この人ならその気になれば何でもできてしまうんではないかと。
朝食後、柳原先生は公になれば大変なことになる…など呟きながら管理室へ向かっていたところ、結美さんから声がかかった。
「光さん、あたし、美白さんが怪しいと思うんだ」
私と同じ考えの人は他にもいたようだ。
「実は私も、あの人なら、あの人ならできてしまうんじゃないかなって思ってて…」
「なるほどね…蓮花ちゃんが行ってた意味が分かった気がする」
この人はCクラスにいそうな人物だなぁと思った。そして蓮花さんは美白さんを尊敬していた。蓮花さんはDクラスにいそうな人物だ。
「私、探ってみようと思います」
「え、あたしはやめとくよ、蓮花ちゃんの話を聞く限り取り返しのつかないことになりそうだから」
「それでも私は美白先輩と同じ生徒です」
「そっか、気を付けてね」
「ありがとうございます、結美さん」
美白先輩を探ることにした私は美白先輩を尾行します。トイレに行って帰ってくるため一旦自分の部屋に身を潜めます。手鏡で自分の髪型を気にしながら自分の部屋に入りました。少しだけ扉が開いています。覗いてみましょう。その瞬間、美白先輩の声がこちらに向かって響きました。
「光ちゃーん、付き合ってあげてたけど尾行が下手くそだよー」
「あ、え…」
「美白は鏡を持ってるんだからさー、鏡ってどこを映すか知ってるー?」
美白先輩は髪型を気にしていたのではありません。手鏡を使って私の尾行を見つけていたのです。隠れる素振りもしていたため言い訳のしようがありません。
「まあ、入って入ってー」
6部屋に入った私。自分の部屋と全く変わらない光景。
「君は約束は守るだろうね、言わないなら教えてげるよ。そうだよ。美白が蓮花ちゃんを消したんだよ」
「それって…殺人…」
「こんな何も刺激のない生活耐えられないからねー」
「美白先輩…貴方は嘘だけでなく、本当に人を殺めるなんてことを…」
「賭けようか、君はこの話を誰かに漏らしたら次の被害者を問答無用で出す」
「まだやめないんですか…金…ですか」
美白先輩は犯人だった。そして私に自白した。今は6部屋は私と美白先輩のみ。
殺される…。
「あ…あぁ…」
「次の被害者そうだね、君がこの中で一つでも当てられたら出さない、自首しよう。そして一つでも当てられたら君は初めて美白に勝ったことになる。相談するのはありだよ、相談はね。消した人が誰か漏らしてしまったのなら当たっていても君は問答無用で負けだよ」
「はぁ…はぁ…はい…」
壁ドンされる形で顔を近づけてくる。
「五つだよ、五つ。一つでも当てれればいいんだよ。ヒントはあげるよ。美白はね、潜水艦の中で魚を見ているだけで感想文5枚も書ける人間じゃないからね。今回のこの騒動を感想文にしたら楽しそうだねぇ。何より自首を賭けた戦い。命を賭けてるようだねぇ」
この人は狂っている。賭け事のためなら人すら殺す。出される五つは何だろうか。
「この騒動を論文にする前に警察に捕まります…負けたら金は払います」
「捕まらないのが美白だよ。わかってるねぇ、美白はそれなりの物を賭けたからね」
「五つ…なんですか?」
「一つ、次の被害者7人のうち一人、でもいないって選択肢もあるよー」
「ま、間違えたら…」
「まぁまぁ、あと4つあるからー、次に二つ、もう美白って一番勘づいている人物」
「そんな簡単な…」
「ちゃんと考えるチャンスをあげてるんだから」
確かに美白先輩が負けたことは聞いたことがない。つまり何も考えず友利先輩と答えるにはまだ早い。
「三つ、美白が苦手な人物、これは美白以外の6人ねー」
「この中に美白先輩が苦手な人物が?」
「4つ、光ちゃんを恨んでいる人物、これは光ちゃんを抜いた6人で」
「え…私が誰かに恨まれている?」
「そして最後の5つ、この特別試験が終わるまでに生存している人物、選択肢は0人から7人」
「なっ…」
次に被害者になる人物は夜だと思っていた。一人だと思っていた。でも選択肢を聞く限り被害者は一人だとは限らない。
美白先輩はもう私の耳元まで来ている。そしてささやいた。
「さーて、美白を楽しませてねー?」
結美さんの言う通り、取り返しのつかないことになってしまった。それに次の犯行がなければいいけどいつ起きるかわからない。私は美白先輩に試されている。何としても美白先輩に勝って見せる。そして殺人をやめさせ自首させる!
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