第2話 思いもよらぬ大波乱

 一日目の昼、美白は自分の6部屋から5部屋の蓮花の元へと向かったが不在だったので続いて手あたり次第4部屋の友利の部屋に着いた。


「入るよー」


「貴方ですか、なんですか?また何かしでかしに来たのですか?」


「いい金づるだからねー」


「くっ…なんで寄りにも寄って貴方が…残念ですが今はそんなに持ってませんよ。要件は何ですか?」


「人間観察?」


「貴方に見つめられると何か盗まれそうな気がして怖いですね」


「心でも盗んじゃおっかなー」


「本当で言ってるのか嘘で言ってるのかわからないところが本当に怖いです…」



 2部屋では同学校同士の蓮花と結美が美白のことで盛り上がっていた。


「えー、そうなの蓮花ちゃん、あの先輩蓮花ちゃんでも騙されたの?」


 スポーツガールの容姿とは裏腹に蓮花も相当騙す側には耐性はあったらしい。


「そうなんだよね、美白先輩中学から転学を繰り返してるみたいでここで会えたのは運命だよ、絶対何か起きるよ」


「蓮花ちゃんでも驚くようなことが!」



 光は食堂兼フリースペースでサンドイッチを買っていた。自動販売機型のシステムで他にもジュースはもちろん小腹に入れて置けるおにぎりやカロリーメイトなどがある。

 光は食堂の大きなスクリーンのように映っている海の光景に夢中の竜奈を見つけた。確か友利から馬鹿と言われていた人だ。1部屋の竜奈。


「あ、えーっと、竜奈さんですよね?」


「おー、見事な絶景。ん?ふむ、あんたは確かなんか姫が警戒している美白って子と同じ学校の子よね?」


「はい、そうです、神崎光と言います」


「知ってるわ、あたしは焔竜奈よ。何か起きるって言うけれどもう起きてるじゃない、ほら、こんなに魚がいるのよ」


「まあ海ですからね…えっと、舞姫先輩とはどういう語関係で?」


「あー、あたしが兵士で姫が姫って言う設定よ」


「設定ですか…」


「そうよ!あんたの兵士じゃないわ、それにしてもあんたこそ美白とどういう関係よ」


「私たちは特に関係はなくて…Cクラスはくじ引きで、Dクラスは美白先輩が制しているので美白先輩がほぼ確定で行く結果だったんですよ」


「あんた巻き込まれたみたいね、まあいいわ、何かあったらあたしに頼ることを許可するわ」



 管理室、たかが三日、されど三日。柳原は生徒たちを取り仕切る先生だ。何かあったら今回は柳原が受け持つことになる。

 成瀬美白にはいろんな噂がある。

 以前は100万単位の金を賭けて賭けをしていた。しかし美白によって大富豪から貧民に落ちて10万単位で勘弁してくれと貧民に落ちた元大富豪は美白に泣きついた噂。生徒たちには1万円で賭けをしていたが5000円に変わった噂。どの噂にも美白が負けたから掛け金が減ったという噂はなく美白に負けたものが掛け金を減らすという噂ばかり。成瀬美白は負けたことがないのだろうか。


「はぁ…三日くらい何も起こらなければいいけれど…」


 貧乏くじを引いた柳原は素直にそう願うのだった。



 手探りのように3部屋の光へ、しかしいない。2部屋の結美の部屋で結美と蓮花に遭遇した美白。


「噂をすれば美白先輩じゃないですか」


「何か起きるって聞いたんですけど本当ですか?」


「わかってるねー君たちは、じゃあ美白とゲームをしよう。でも掛け金はもらえないなー、学校が違うからねー」


「何を考えているんですか先輩っ」


「面白いの期待してますよ」


「この二人を美白はどうしちゃおっかなー?」



 夜、6人と先生は夕食を済ませた。


「食堂のの自販機の隣、浴室あるわよ、小さいわね」


「温泉じゃないのかぁー」


「美白先輩、ここ一応潜水艦なんですからないですよー」


「ざんねーん」


 美白と蓮花、ついでに結美までもが美白と仲良くなっている。

 浴室は一人暮らしの浴室くらいの小ささ、自販機の面積のほうが多いくらいだ。


「私は最後でいいわ、1部屋の竜奈から入りなさい」


「よかろう」


「で、美白?貴方は6部屋だから最後よ?」


「知ってるよー」


「何か企んでない?」


「違うよー、まだ竜奈ちゃんと話してないからねー、先に光ちゃんにしよっと」


「怪しいわね、あのまま追い払わなかったら絶対何かしてたわ」


 

 光は3部屋にいると美白から声がかかった。


「光ちゃんいるー?」


「え、美白先輩?どうしたんですか?」


「話そーよ、2年のCクラスってどんな人がいるのー?」


「そうですね、優しい人が多いですよ」


「光ちゃんは優しいかな?怖いかな?」


「優しくはないですね」


「そっかー、なんか面白いこと起きないかなぁ」



 浴室から出た竜奈は美白と遭遇した。


「おぉー、偶然だねー」


「偶然に見えないんだけど?」


「友利ちゃんとどういう関係よー」


「またそれか、あんたの後輩からも聞かれたわよ。あたしが兵士で姫が姫という設定だ」


「結ばれないねぇ、その中をボロボロに引き裂く、それも面白いかなぁ?」


「あんた恐ろしいこと言うわね…」



 光は蓮花とすれ違った。


「美白先輩と同じクラスの光さんじゃないですかー」


「同クラスなんですから光でいいですよ」


「はい、私のことは蓮花で!美白さんと仲がいいんですか?」


「いえ、そんなことないですよ」


「そうなんですか、同じ学校なのに羨ましいですよ!あ、結美帰ってきましたよ、風呂じゃないんですか?」


「そうですね、行ってきます」



 それから問題なく美白まで風呂が終わり最後の先生の柳原が風呂に入る。


「はぁ…風呂くらいゆっくりしたいわ、何か騒ぎになってなければいいけど」


 22時には消灯、23時には自分の部屋へ、起床だ。22時からは食堂兼フリースペースに立ち寄れなくなるのでそれまでに自動販売機で夜食を食べる人は買っておかなければならない。

 柳原は21時を確認し、おにぎりとジュースを大量に買った。なぜなら0時から2時間おきに見回りをしなければならないからだ。

 8時に起床の生徒だが先生は2時間おきに起きなければならないので仮眠に等しい。


「別に病室じゃないんだから、生徒部屋は病室みたいなベッドだったらしいけど管理室には寝るベッドもないわ…この三日間夜が一番辛いわ…一日目の夜と二日目の夜ね、三日目は戻れるからよかったわ…四泊なら三回夜があるところだったわ…」


 22時の消灯、23時までは他の人の部屋に入っても良い。23時からはトイレ以外自室だ。先生の長い夜が始まろうとしていた。



 友利は時計を確認した。23時も過ぎた。もうトイレしか行けない。


「はぁ…23時ですか、美白さんは今日は仕掛けてきませんでしたね、いえ、もう仕掛けているのかもしれません。侮れませんからね」


 寝ようとしたそんな時、ものすごい悲鳴が5部屋から聞こえた。原則もう他の部屋に入ってはいけない時間ではあるがただ事ではない。そんな悲鳴だ。

 友利は5部屋に駆け寄ってみた。


「大丈夫ですか?」


 返事がない。


「開けますよ?」


 この潜水艦部屋には鍵がないため簡単に開けられる。友利は部屋を開けてみた。


「はっ…」


 そこには血を流して倒れる蓮花の姿があった。その姿に友利は震えてしまった。

 

「せ、先生に伝えないと…」


 管理室にたどり着き5部屋で七宮蓮花が血を流して倒れていたことを柳原に伝える。


「え…嘘でしょ…殺人が起きたってこと…?」


 友利と柳原は5部屋に向かう。途中で光が心配そうに3部屋から顔を覗かす。


「先生と舞姫さん?さっきものすごい悲鳴みたいな落としませんでしたか?」


「そうです、蓮花さんが殺されたんですよ…」


「え…どういうことですか?」


「ついてくれば分かります」


 友利、柳原、光は5部屋に向かう。

 奥の6部屋が開き、美白が出てきた。眠そうにしていた美白と対面するように向かい合わせになる。


「あれ、せんせーたち?さっきすごい音聞こえた気がしたけど気のせい?」


「気のせいじゃないわよ、5部屋を見てみなさい」


 一歩先に反対側方向の美白が5部屋に着く。


「なにこれ?」


「見てわからないんですか、死体があるでしょう?蓮花さんの」


「え、ないけど?」


「何を寝ぼけているのですか」


 友利たちも美白と合流し5部屋を覗く。しかしそこには血は残っていたものの倒れていた蓮花がいない。


「どっちが寝ぼけているのかなー?」


「あれ、さっきは間違いなく蓮花さんがここに」


「いないわよ?この赤いのが血ってこと?」


「トイレに行ったのではないでしょうか?」


「そういえばあの子、結美と同じ高校ね。結美の部屋を調べてくるわ」


「では、トイレを調べてきます」


「なんかよくわからないけど美白は眠いからね。寝るよー、おやすみー」


「おかしいですね…確かに倒れていたんです」



 嫌な予感がする。もう起きているのかもしれない。柳原は結美の部屋にいることを賭けた。


「開けるわよ、蓮花見なかった?」


「え、もう23時過ぎてますよね?5部屋にいると思いますよ?」



 光はさっき行ったトイレをもう一度調べるもののどこにも蓮花はいなかった。



 柳原はさらに禁止されているもの先生の立場。もしかすると緊急事態。食堂を調べた。立ち入って調べたがいない。



 友利は血を流して倒れている蓮花を確かに見た。

 しかし、トイレから光、管理室から柳原、6部屋から美白と合流するものの、蓮花の姿だけが消えていた。殺人なのかもわからない謎の緊急事態。

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