其ノ十五 侵入
「こっちであります!」
アリマスの指示で、蜂が舞う獣道を通り、腹這いでしか進めない狭い洞窟を痛む肩を庇いながら通り、そして、裏門にたどり着いた。
「って、もっといい道あったろ⁉︎」
「そうでありますか?」
アリマスはとぼけるけど、俺には人っ子一人いない整備された道が見えるんだが⁉︎
「柊真、馬鹿なの⁉︎」
明に言われるなんて心外だ。
「あんなとこ通ったら敵に丸見えでしょ!」
…明に正しいこと言われるなんて、心外だ。
「そうであります。そもそも、あの道でひいこら言ってる君の方がおかしいであります。拙者などほら、ぜんぜん疲れてないであります。」
そりゃお前は俺の頭にずっと乗ってたからな!
「このしゅうまいが!」
アリマス、俺のこと悪意持って『しゅうまい』って呼んだよね。
「悪意なんてないであります。」
思考を読むな。
「って、茶番は置いといて、行くよ!」
和さんが言う。
「東北に?」
なぜ東北に行く、明。
「違う違う、北陸に。」
今から旅行しに行こうとしている点では、和さんも変わらない。
「違うでしょ二人とも!突撃するんだよ!」
「「あぁ。」」
全く。
「ほら行くぞ。」
そう言って、俺は門扉を押す。でもやっぱり、
「開かない…。」
まあ、開いてたらおかしいよね。
「柊真、押してダメなら引いてみろ、知ってる?」
そう言って、明は門扉を思いっきり後ろに引っ張る。
「ふんがー…開かないっ!」
でしょうね。
でしょうとも。
「二人とも、押しても引いてもダメなら、こうするんだよ。」
そう言って和さんは、門扉を障子の要領で横に敷いた。
「ガラガラガラ」
開いた。
「「……なぜ引き戸?」」
と言うわけで、和さんのおかげで中に入れた俺らは、敵の一人とも遭遇せずに楽々と敵の本丸に辿り着いたんだけど…
「「「怪しくない?」」」
だって、誰とも遭遇しなかったんだよ⁉︎本丸なのに。ボスいるのに。
まさか……この前と同じで……
「アリマス、お前……。」
「ふっ、バレちまったらしょうがねぇなぁ」
「「「アリマス⁉︎」」」
口調が変わった⁉︎まさか⁉︎
「そう、あんちゃんが思ってる通りだよぉ」
俺は、刀に手をかける。
「俺はなぁ!」
えっ⁉︎
「自分でもなんで誰もいないのかわからないであります。」
「「「ズコーッ」」」
いやなんでこんな茶番付き合わされたんだよ⁉︎
「いや、なんかそっちの方が展開的に面白いかなと思ったであります。」
「お前、そんな茶番繰り返してたら、みんな胸焼けしてくるだろ⁉︎」
ほんと、すみません。
「ったくもう……進むぞ。」
その時。
「しっ、静かにするであります。」
アリマスが、急に真面目な声をしていった。
「どうした?」
「そこに見える扉、あれがボスのいる部屋であります。」
は?
「なんでそんなとこで茶番を繰り広げたんだよ⁉︎」
俺が小声で言うと、アリマスは頭の上で足をパタパタさせた。
「気づかなかっただけであります。拙者だって栗鼠でありますから、間違いだって犯すであります。」
全くもう!
そのとき、
「外で何か音がしたぞ!」
「曲者か⁉︎」
部屋の中から声がする。
ばれた!
「ついに……最後だね。」
明が言う。
「頑張ろ、二人とも。」
和さんが言う。
「絶対に、勝つ。」
俺は言う、そして、思う。
もう一度、
「美沙さんに……戻ってきて、欲しい。」
明が、俺の気持ちを代弁するかのように、言う。
まだ、どこかで、美沙さんを信じてしまっている。
俺は、刀を構える。和さんが、姫の格好で木刀を構える。
がらっと扉が開いた時、和さんが小さくつぶやいた。
「美沙なら、絶対に、大丈夫だよ。」
はい、毎度毎度更新が遅いきなこもちです(^^)/
今回もまたギャグ回になってしまうか…⁉︎と思いきや、最後でなんかかっこいい感じに……なってますか?なってますよね( ;∀;)
「泣き顔でゴリ押すな。」
柊真に怒られました。すみません。
……とそれはともかくとして、ラストに近づいてきました、ついに!
長かったですね……もっときなこもちが更新早かったら半分くらいの期間で終わったでしょうね……(´;ω;`)
ぜぇぇぇぇぇぇったいに今年中には本編の方を完結させますので、気長に待ってください!
……でも、これからまた更新が止まりそうなので、お詫びとラスト直前記念ということで、これまでのあらすじを!書きたいと思います!
それでは、なんか泣いてばっかりなあとがきになりましたが(笑)、次のあらすじでお会いしましょう!
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