其ノ十四 突撃
敵が、じりじりと俺らに迫る。少なくとも15人はいるであろう。
俺は、決意した…戦う、と。
俺は刀を抜き、構え、相手を睨む。
そして、一歩踏み出し
「かかれー!」
「「「「「「「うぉー!」」」」」」」
「いや無理ー!」
俺はくるっと180度回転し、一目散に逃げる!
いや俺1人で15人相手とか無理でしょ。
ぜぇはぁ。
肩で息をしながら顔を上げると、すでにそこに和さんと明がいた。
えっ…俺より逃げるの速い?着物、重いよね…?
「柊真、逃げるのが遅い。柊真が刀抜いたから、呆れて見捨てた。あそこは逃げなさいよ。」
「僕ら武器持ってないし、逃げるしかないんだよねー。」
「ねー。」
いやいや、和さん竹刀持ってたでしょ。(其ノ十)
「ったく…。で、どうします、これから。正面突破は難しいですよ。」
「そうでありますね…。」
「そうだねアリマス…ん?」
まって、足元からどっかの栗鼠もどきの声が聞こえてきたような…。
「栗鼠もどきとはなんだであります。僕は立派な栗鼠であります。」
「え⁉︎俺、なんか言ってた⁉︎『栗鼠もどき』とか。」
明や和さんに確認するけど、俺は特に何も言ってないらしい。
ってことは、俺の『栗鼠もどき』っていう脳内の考えを読んだってこと?
この栗鼠、頭の中読めるの?エスパー?
「エスパーではないでありますよ。」
やっぱりエスパーじゃん。
てか、この声の持ち主は…もうお分かりですよね。
「てかなんでここにいるんだよアリマス…。」
はい、人語を喋り、多分令和に来たことがあって、さっきエスパーだと判明した栗鼠…いやたぶん栗鼠もどき、アリマスですね。
「なんでお前がここにいるんだよ。」
こいつ、裏切ったくせに。敵のところまで誘導したくせに。(其ノ八)
「君たちに、協力しようと思ったであります。」
「……そんでさぁ、これからどうする?」
「無視するなであります!」
だってさぁ。
「胡散臭いじゃん。」
明が俺らの気持ちを代弁する。
「だって、敵だと言うことを隠して私たちに近づいて、窮地に追い込んだくせにさぁ、今になって突然『味方ですぅ〜、協力しますぅ〜』とか言って来られても信じないよ。
……社会はそんなに甘くないんだ!もう一度人生経験積み直せ!」
なんか最後上司の説教みたいなの入ったけど、大体言いたいことは一緒。
「拙者の話を聞くであります!君たちの味方になりたいのは彼らが敵になったからであります!」
その心は。
「葉月殿がタイムマシン持って帰ってきた時、拙者は褒美を葉月殿に求めたであります。その時、葉月殿はこう言ったであります。『栗鼠なんぞにやる褒美などない!お前のような小動物ごときがなに家来ぶってるんだ!お前は家来以下の存在だ!』」
あら、それはひどい。そんな存在否定されちゃって…。
「拙者は悔しいであります。褒美がもらえないなんて…。」
あ、褒美が貰えなかったことに怒ってるのね。
「とにかく、あの人たちには愛想をつかしたのであります。だから、あいつらを完膚なきまでに叩きのめす…ぐへへへへぇ。」
アリマス、キャラ崩壊してるから。
「事情はわかったけど、協力って何するの?」
それな。
「あなた方を裏口まで案内するであります。」
……地味に役に立つ提案をしてくるんじゃないよ。
全く役に立たないことで協力してくるんだったら、速攻でバイバイって言ったのに。
「ふふ、柊真殿。こう見えても拙者、有能でありますよ。役に立たないことをするわけないじゃないであります。
そんなこと言ったら協力の申し出を断られるに決まっているでありますからね。」
こいつ、また俺の脳内読んで。
「うーん、協力してもらうのにメリットはありそうだね。」
「うん、協力してもらおうか。」
「ああ、そうだな。」
でも、
「裏切ったら、斬るから。」
俺は刀を抜いて、アリマスの鼻先に突きつける。
「は、はい…ここもパワハラが横行してるでありますね…。」
『パワハラ』って、やっぱり令和の時代に来たことあるでしょ。
「うん、アリマスわかった?優しい僕でも怒ると怖いよ?」
そう言って、和さんがアリマスに竹刀を突きつけて、アリマスは高速で首を振る。
うん、これでオッケー…って、
やっぱり和さん竹刀持ってるじゃないですか。
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