第2話
第2話
「じゃあ。シャル本気で行くよ」
「うん。アレス。負けないからね。」
そう言って、僕たちは試合を始めた。
まずジャブを繰り出して、シャルを牽制する。シャルはガードを固めて、僕の攻撃を防ぐ。
がら空きになったボディーにボディフックを叩き込んだ。
「ああっ」
シャルは、苦しそうに顔をしかめて、一歩後ろに下がった。
チャンスとばかりに、ワンツーを繰り出した。しかし、シャルもさるもので、スウェーバックして、パンチをかわしながら、カウンター気味に右ストレートを放ってきた。
僕はそれを左腕でブロックした。
そして、その腕を振り払って、左アッパーを放つ。
今度はシャルが右腕でブロックし、また距離ができた。
お互いの拳が届くか届かないかという微妙な間合いだ。
そこで、お互いに構えなおす。
「そろそろ本気出すね。」
そう言って、シャルが構える。
ボクシングのような構えではなく、空手とか中国拳法に近いような構えをとる。
右足を前に出して半身になり左手を顔の前に出した構えだ。
一方、僕もシャルと同じ構えをする。
右手を出して左足を前に出し、軽く腰を落として構えている。
そして、お互いに向かって走りだし、お互いの顔の前で止まる。
そこから、僕達は同時に技を放った。
右ストレート同士がぶつかり合う。
次に、回し蹴りやローキックなどを繰り出す。
僕達の戦い方はまるで、漫画やアニメに出てくる主人公みたいな戦い方だった。
そんな感じでしばらく戦っていると、お互いに疲れてきたのか動きが悪くなってきた。
「どうした?もう終わりかい?」
「まだまだこれからだよ。」
「こっちだって、まだまけないもん!」
二人は再び接近すると殴り合ったり蹴ったりしている。
だが、徐々にシャルの動きが鈍くなっていき、逆にアレスの攻撃が当たるようになってきた。
「ぐっ……うぅ……」
とうとうシャルは膝をついてしまった。
「これで僕の勝ちかな?」
「まだ!負けてない!」
シャルは立ち上がってファイティングポーズをとった。
アレスはそれをみて少し笑った後、ゆっくりと近づき始めた。
それから数分の間、激しい攻防が続いた。
アレスのミドルブローがきれいに入り、
シャルは大きく後退した。
しかし、すぐに体勢を立て直すと反撃を開始した。
アレスもそれに対応して、また打撃音が鳴り響く。
ついに、アレスの足払いが決まり、シャルが尻もちをつくような形で倒れた。
すかさず、マウントポジションをとり、顔面目がけてパンチを繰り出す。
「ぐうう……」
シャルが苦悶の声を上げる。
数発殴ると、シャルの目からは涙が流れ始め、鼻血が出てきた。
それを見て、さすがにやりすぎたと思い、起き上がり声をかける。
「ごめん。大丈夫かい?」
シャルは何も言わずに立ち上がり、服についた埃を払うとこう言った。
「もう一回やるよ。」
「えぇ!?︎」
驚いている間にシャルが突っ込んできて、ハイキックを繰り出してくる。
それをしゃがんでかわすと、次は前蹴りが来た。
それも、横に飛んで避けると今度はジャブを出してきた。
それをガードしながらこちらもジャブを出す。
お互いの腕が当たりながらも相手の出方をうかがうようにじりじり動く。
やがて、どちらからということもなく、一気に踏み込みパンチを出した。
それと同時にお互いの頬にクリーンヒットする。
そのまま、どちらも倒れず、また距離ができる。
今度はお互いが駆け寄り、近距離での打ち合いが始まる。
最初は互角だったが、だんだんと差が出始める。
「はぁ……はぁ……」
息切れし始めたのを見て、アレスが勝負に出ることにした。
今までよりさらに大きく振りかぶって渾身の一撃を放つ。
「ぐふぅっ」
もろに入ったようで、シャルの口から赤いものが垂れる。
それでも、シャルは倒されず、むしろこちらに向かってきているようだ。
「やばいな……。」
そう思った時にはすでに遅く、シャルは僕の腹筋目掛けてボディブローを放っていた。
「ああああっ」
思わず悲鳴を上げて後ろに下がる。
そして、追撃を警戒したが、その心配はなく、代わりにシャルのボディーブローが決まった。
「ぐふぅっ」
お返しとばかりに右ストレートを放つ。
しかし、それは空を切り、逆に左フックを食らってしまった。
「ぐああ」
僕はたまらず後ろに飛び退って距離を取る。
お互いに構えなおして睨み合う。
そして、お互いに走りだし、また殴り合いが始まった。
それから数分の間、激しい攻防が続き、二人の体には生傷が増えていく。
アレスもシャルも、お互いの攻撃をかいくぐりながら、相手に攻撃を当てることだけを考え、集中力を高めていった。
そして、アレスが先に仕掛ける。
右ストレートを放つが、これはフェイントで本命は左フックだ。
これをシャルがスウェーバックで回避し、カウンター気味に右ストレートを放ってくる。それを読んでいたため、カウンター気味に来た腕を掴むと、そのまま背負投げを決めた。
「わあっ!」
背中から地面に叩きつけられたシャルが苦しそうな声を上げた。
そして、アレスはそのまま馬乗りになり、マウントポジションをとる。
「どうだい?降参するなら今のうちだよ。」
「まだ!負けないもん!」
「じゃあ続けるよ。」
それからしばらく、打撃音と少女のうめき声だけが聞こえていた。
「そろそろ本気出すね。」
シャルが構える。
ボクシングのような構えではなく、空手とか中国拳法に近いような構えをとる。
右足を前に出して半身になり左手を顔の前に出した構えだ。
一方、アレスもシャルと同じ構えをする。
右手を出して左足を前に出し、軽く腰を落として構えている。
二人はお互いに向かって走りだし、お互いの顔の前で止まる。
そこから、アレスが技を放った。
右ストレート同士がぶつかり合う。
次に回し蹴りやローキックなどを繰り出す。
アレス達の戦い方はまるで、漫画やアニメに出てくる主人公みたいな戦い方だった。
そんな感じでしばらく戦っていると、お互いに疲れてきたのか動きが悪くなってきた。
「どうした?もう終わりかい?」
「まだまだこれからだよ。」
「こっちだって、まだまけないもん!」
二人は再び接近すると殴り合ったり蹴ったりしている。
だが、徐々にシャルの動きが鈍くなっていき、逆にアレスの攻撃が当たるようになってきた。
「ぐうう……」
とうとうシャルは膝をついてしまった。
「これで僕の勝ちかな?」
「まだ!負けないんだから!」
そう言うと、立ち上がってまた向かってきた。
アレスはそれを迎え撃つために拳を構える。
今度はパンチの応酬になった。
アレスの方がリーチが長いため、若干有利だったが、だんだんと押され始めてきた。
そこで、一旦離れると、今度は両手を組んでハンマーのように振り下ろしてきた。
それをジャンプして避けると、そのまま空中前転して踵落としをしかけてくる。
それもなんとか避けたが、着地したところに今度はハイキックが飛んで来た。
それを両腕をクロスさせてガードする。
腕越しに衝撃が来るが、何とか耐えられた。
反撃として、上体を反らしながら思いっきりアッパーカットを放つ。
顎先に命中し、シャルの体が宙に浮いた。
そのまま、落下してくるところに合わせてかかと落しを放つ。
「きゃうっ!」
頭に直撃し、今度は仰向けに倒れた。
それでも起きあがろうと手をつく。
「はぁ……はぁ……。」
肩を大きく上下させながら呼吸をしている。
「はあ、はあ、はあ、」
僕も同じように息切れしていた。
「どうだい?そろそろ諦めたら?」
「はあ、はあ、まだやれるもん……。」
そう言いながらも、シャルの目は虚ろになっていた。
「しょうがないな。じゃあそろそろ終わらせるよ。」
僕はシャルに向かって駆け寄る。
そして、倒れているシャルの胸ぐらを掴んで持ち上げた。
「ぐえっ」
苦しそうな声を上げるシャルを無視して、もう片方の手を振り上げる。
そして、思い切りシャルの顔面めがけて拳を叩きつけた。
「ぎゃああ」
シャルの口から血が出る。
そして、手を離すとシャルの体は地面に落ちていった。
それからしばらくして、シャルが起き上がった。
頬には大きなあざができており、口元は真っ赤に染まっていた。
シャルの目からは涙が流れ、鼻水も出ていた。
しかし、その瞳はまだ死んでおらず、強い意志を感じさせるものだった。
(ここまでやるつもりはなかったんだけどな。)
僕は内心で少し後悔しながらも、止めをさすことにした。
シャルは立ち上がると、こちらに向かって歩いてくる。
「覚悟してね。」
シャルがファイティングポーズをとった。
それに対して、アレスも構える。
次の瞬間、二人が同時に動いた。
シャルがジャブを放つ。
それをアレスがスウェーバックでかわす。
続いて放たれた右ストレートを同じく右フックで弾き飛ばす。
「あう!」
シャルがよろけるが、すぐに体勢を立て直す。
「まだまだー!!」
今度は、左のローキックを繰り出してきた。
「甘いよ。」
アレスはそれを軽く受け止める。
続けて右ストレートを放ってくるが、これも左手を使って弾く。
次はシャルが連続攻撃を仕掛けてきたが、全て捌き切った。
その後も攻防が続くが、シャルの攻撃が次第に大振りになり、隙が多くなってきた。
アレスはそのすきを狙って、右ストレートを放った。
シャルの顔にクリーンヒットし、後ろに吹っ飛ぶ。
さらに、追い打ちをかけるように、ジャンプしてからのかかと落としを放った。
シャルは地面に叩きつけられて動かなくなった。
「ふう。」
アレスは一息つくと、シャルの方に向かう。
そして、シャルのそばに立つと、彼女の髪を掴み、無理やり顔を上げさせた。
「まだ終わってないよね?」
「うぅ……」
シャルは弱々しく顔を横に振る。
「まだやる気なんだ。すごいね。でも、これ以上やったら死んじゃうかもよ?」
「いいもん!!」
「はぁ、仕方ないな。」
アレスは再びシャルの髪をつかむと、思いっきり頭突きをした。
「ぎゃん!」
シャルはあまりの痛さに悲鳴を上げた。
額から血が流れる。
続いて、腹に蹴りを入れられ悶絶する。
最後にアッパーカットを食らい、空高く舞い上がるとそのまま落下してきた。
だが、それでも立ち上がろうとする。
そんなシャルをみて、あきれ果てたのか、シャルの胸ぐらをつかみあげる。
そして、そのまま思いっきり殴り飛ばした。
シャルの体が吹き飛び地面に転がる。
それを見て、もう勝負がついたと思ったが、彼女は起き上がろうとしたので再び髪の毛を掴んで引きずり起こした。
そして、また思い切り殴った。何度も、何度も、飽きることなく、ただひたすらに暴力を振るう。
「ぎゃう!ごふっ、げほっ!」
シャルは殴られるたびに嗚咽を漏らし血反吐を吐き出した。
それでも、なおも起き上がろうと足掻いている。
「はあ、はあ、はあ……。」
アレスは肩で息をしながら、ようやく手を止めた。
シャルはうつ伏せに倒れ、ピクピク痙攣しているだけだった。
「はあ……はあ……。」
アレスは大きく息を吸って呼吸を整える。
(そろそろ終わりかな?)
そう思ったとき、シャルがゆっくりと立ち上がった。
まだ戦う気力があるらしい。
「はあ、はあ、負けないんだから……。」
シャルがフラつきながら近づいてきた。
そして、再びパンチを放つ。
その攻撃をひょいとかわし、カウンターの掌底を突き出す。
「ぎゅえ!?」
変な声を出してシャルの体がくの字に曲がる。
そして、今度は回し蹴りを放ち、シャルを吹き飛ばす。
シャルはゴロゴロと地面の上を転がり、やがて止まった。
「はあ、はあ、はあ……。」
アレスは荒くなった息を整えていた。
しかし、シャルは立ち上がり、ファイティングポーズをとる。
「はあ、はあ、まだやるの?」
アレスは呆れてそう聞いた。
「はあ、はあ、当たり前じゃん。」
シャルは満身創痍だったが、その瞳には闘志が宿っていた。
(しょうがない。)
アレスは覚悟を決めた。
お互いに構えると、同時に動き出した。
アレスは距離を詰め、右ストレートを放った。
それをスウェーバックで避けて、逆に左フックを放ってくる。
アレスはそれを腕を交差させてガードすると、右足でローキックを繰り出す。
シャルはそれを両腕を上げて防ぐ。
続いて左ストレートを放ってくるが、これを体を横にずらすことで避ける。
シャルが続けて右ストレートを放ってくるが、スウェーバックして回避する。
さらに左フックを放ってくるが、これは左腕を使って弾き飛ばす。
続けて右ストレートを放ってくるが、こちらも右ストレートで迎撃。
それから、激しい攻防が続いた。
シャルの攻撃は全て見切られているようで当たらない。
一方、アレスの攻撃も全て防御されてしまっている。
二人の実力はほぼ互角だった。
お互い決定打を与えられないまま、時間が過ぎていく。
アレスは体力の限界を感じ始めた。
対するシャルはまだ余裕がありそうだ。
このままではまずいなと思い、一気に決めようと決めることにした。攻撃のパターンを変え、フェイントをかけつつ、ジャブやストレートなどのオーソドックスなボクシングの技で攻め立てる。
シャルはそれを冷静に見極め、的確に捌く。
だが、徐々にアレスの攻撃が当たり始めてきた。
そして、ついに一発当たってしまった。
シャルはよろけるがすぐに体勢を立て直す。
アレスは続けて攻撃を仕掛けるが、シャルは落ち着いて対処する。
そして、とうとう反撃に転じた。
シャルの拳が、アレスの顔面にヒットする。
「うおっ!」
思わず声が出る。
だが、アレスも負けじと左のショートアッパーを放つ。
シャルの顎に命中し、彼女の体がのけぞる。
すかさず、左ボディブローを叩き込む。
お腹を殴られたシャルの顔が苦痛に歪む。
それを見たアレスは、ここだと思った。
続けざまに、左右のコンビネーションを打ち込んでいく。
シャルが必死に耐えているが、ダメージが大きいようだ。
そして、とどめのアッパーカットを繰り出そうとしたとき、シャルがニヤリと笑った気がした。
嫌な予感がしたが、すでに後の祭りだった。
「……!」
シャルの頭突きがアレスの目に当たる。
予想外の一撃に怯み隙ができたところへ、強烈な膝蹴りを胸に食らう。
「がはっ!!」
肺の中の空気が全て吐き出される感覚。
次の瞬間、ボディーへの連打で意識を刈り取られそうになる。
なんとか耐えたところで、最後の仕上げとばかりに、渾身の右ストレートが放たれ、アレスは吹き飛ばされた。「かっ……!」
そのまま地面に倒れ伏し動かなくなった。
シャルは勝利を確信した。
「はあ、はあ……。やったぁ!勝ったー!!!」
シャルが大喜びしているところに、アレスが立ち上がってきた。
「えぇ!?嘘ぉ!?」
完全にKO勝ちをしたと思ったので、シャルは驚きの声を上げる。
「はあ、はあ……はあ……。」
アレスは肩で息をしながら立ち上がると、ファイティングポーズをとった。
「え?まだやるの?」
「はあ、はあ……当たり前だろうが!」
そう言って、今度は自分から突っ込んできた。
「えええ!?」
予想外の行動に戸惑いながらも、反射的に右ストレートを放つ。
それをスウェーバックで避けられて、逆に左フックを食らってしまう。
「きゃあっ!」
思わぬカウンター攻撃に悲鳴を上げてしまう。
その後も、アレスの猛攻が続く。
次々とパンチを浴びてしまい、シャルは徐々に後退していく。
(このままじゃ負けちゃう。)焦りを感じたシャルは、咄嵯に回し蹴りを放った。
アレスは上体を反らすことでこれをかわす。
しかし、その動きでバランスが崩れてしまった。
(今ならいけるかもしれない!)
そう思ったシャルは大きく踏み込み、左ストレートを放った。
「ぎゅえ!?」
変な声を上げてアレスの体がくの字に曲がる。それを好機と見たか、シャルはラッシュを仕掛けた。
右ストレートを何発も叩きこむ。
右フックを脇腹に打ち込む。
左ストレートを頬にぶち当てる。
右フックを側頭部にぶつける。
左ストレートで顎を跳ね上げる。
右ハイキックを鼻に当てる。
左ミドルキックを股間に放つ。
右ローキックを太ももに喰らい、アレスはもう限界を迎えていた。
それでも、シャルの攻撃は止まらない。
右ストレートで腹を突き上げ、左アッパーで胸を打ち上げ、更に追い打ちの右ストレートで顎を打ち抜く。
アレスの体は浮き上がり仰向けに倒れた。
シャルの表情が明るくなる。
「よし、これで私の勝ちね!」
アレスの方へ駆け寄ろうとしたときだった。
突然、目の前でアレスが起き上がったのだ。そして、一瞬の内に距離を詰められ、右ストレートを叩きこまれる。
「ひゃうん」
女の子みたいな声を出して吹っ飛んだ。
「ちょっと待ってよ!今のは反則じゃないの!?」
立ち上がって抗議するが、アレスは無視して突っ込んでくる。
「きゃん!」
再び、無防備なお尻に強烈な一撃を受ける。
「痛ったいなぁ!えいっ!」
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