第15話 魔王達との集会
さて、身代わり作戦も成功しマナを欺く事に成功したので何かボロが出てしまう前に用意してある覇王城の会議室へと向かった。
会議室は円卓の間を意識したので部屋の中心に大きな円卓を置き12時の方向に俺の席を用意しそこから時計と同じ様に座席が配置してある。
マナは丁度1時の所で、11時の所にはデフォルトが座る、俺と二人の席の間にシーラとキーラがそれぞれ座りまさに両手に花だ。
後の席は大体自由なので座れる所に座る。
ちなみに参加者は俺、シーラ、キーラ、マナ、カオス、デフォルト、メトラ、プランチェス、エミール。それから巨人族の魔王フロトニスト、獣人族の魔王デルナ、蜘蛛族のエーナ、龍族のマーシャ、それからミーシャだ。
カオスはこのような会議じみたものが好きじゃないらしい、と言うより...生命を奪う事に対した思い入れがないのだ。
カオスからしたらこの世界の生命とは自分が生み出した様なものなので自分が作ったものを自分で壊している様な感覚らしく、なんら罪悪感を抱く事はないらしい。
だが、そんなカオスも一応俺達に協力的なので無意味に命を奪う事はしない、意味があれば迷わず奪うだろうけど...
全員が集合し最初に話し合うのは現在の国の情勢や物流などの政策に関してだ。
主なやり取りをしているのが巨人族の魔王と獣人族の魔王達だ。巨大な農園を所有する獣王国と食料品の消費が激しい巨人族、かつては取引なんてできる様な間柄では無かったらしいが間に俺達が入る事で友好的な関係を築けている。
獣王国からは食料を、そして巨人族からは労働力を提供し合っている。
俺達の国であるノエル王国は特に提供は受けていない。そもそも自給自足できるのだからわざわざ他国から買う必要もないのだ。
ここで一つ気付いたのだが、いつの間にかプランチェスと蜘蛛族の魔王のエーナが仲良しになっていたのだ。
どうやら、かなり上質な友好関係を築けたらしく一部の森に住処を与え森の警備を行って貰うようだ。
一度エミールが襲撃を受けた事もあったのでそこら辺を警戒している様だ。
この世界でエミールを倒せそうなのは俺達の陣営ぐらいなものだが...。
さらに以前から計画していた各国を繋ぐ街道の整備も進んでおり街道が完成すればさらに物流が良くなるだろう。
各国の話が終わったら議題は次へと移る。
次に上がった議題は新しく建国する龍大国に関する事柄だ。
この世界でも5匹しか存在しない龍種。それらを傘下に収める龍神のマーシャ。
他国からすればかなりの脅威が誕生することになる。
同盟を組んでいる国同士ならば心強い味方になり得るだろうが同盟を組んでなければこの世界で最も強いとされていた龍種を同時に5体以上相手取る事になってしまう。
今回はその龍種達の顔見せに過ぎない。流石に龍種ともなれば人に擬態することも可能なようだ。
だが、残念な事にこの龍種の中に修羅の世界と同じ者はいない。
どうやら倒されたり世代替わりなどが激しく、トップの入れ替わりが行われているとの事。
恐らく異世界人の仕業だろう。
まったくただの称号の為に龍種を狩るなんてどういう思考をしているんだか...。
5匹の龍がそれぞれ俺に挨拶をする。この世界の中では確かに強者なのだろう、まぁ俺直属の配下と比べてしまうとあまりにも劣る。
それに、俺が魔力を隠しているからかどこか見下している様な気がするのだ。
確かに、龍神たるマーシャには敬意を払っている様だが、マーシャが敬意を払う俺に対しての忠誠は残念ながら見られない。
と言う事で、ビビらせる名目で俺の相棒を召喚するとしよう。
【邪龍ヘリドジュバン】
修羅の世界生まれの龍であり俺の魔力を受け剣へと変質してしまった。
元から膨大な魔力を有していたが俺の魔力に当てられ桁違いの能力を手にしてしまった。誇り高く威厳のある龍だったが一度マナにすべての力を奪われてからマナを危険視していて軽くトラウマになっている。
俺の剣と化した邪龍ジュバンだが、最近では肉体を与え普通に暮らしてもらっている。普通と言っても【時空の狭間】で暮らしてもらってるが、いつでも呼び出せるのだ。
本人は『我はもう遅れはとらないぞ』と息巻いていたので時空の狭間にて放し飼いにしている。大方マナへの対抗意識だろう。
「ジュバン」
俺が名前を呼ぶと空間が開き一匹の龍が顕現した。
全身を漆黒の鱗が覆い翼には蒼白い炎が宿っている。
何故か本来の姿に戻っているジュバンの登場を見守っていると。
龍たちが戦闘態勢を取る。
どうやら俺が召喚したと思っていないらしく野生の龍が乱入したと思っているようだ。
お互いやる気満々なのでそいつらの居る空間を拡張し空間の固定化を行う。
正直この会議室はそこまで広い訳ではない、流石に龍種6匹は収まりきらないというか1匹ですら怪しい。
そんな場所で戦われたら困る所の騒ぎではない。
俺の魔法の意味を理解したのかジュバンは嬉しそうに力を解放する。
蒼白い炎はより一層輝きを増し怒号の様な咆哮を轟かせる。
こいつ...本気で叫んだな...障壁の外側に居る魔王達は萎縮してしまっている。
俺直属の配下は楽しそうにそれを眺め、巨人の魔王は未曽有の大事態に戦闘態勢を取っている。
どうせ、エリアに入った所で何もできないと思われるのでそのまま観るように指示を出す。
ミーシャとマーシャも手にした配下の力を見てみたいのか興味深々だ。
まぁ残念ながら...勝てないだろうが。
手始めに【龍種覇気】を解放する両者だが、残念ながら格が違い過ぎる。
無残な事に覇気だけで赤龍、青龍、緑龍はノックアウトだ。
残る聖龍と邪龍も辛うじて生きてるだけでほぼ虫の息だ。
そんな龍種を鼻で笑うジュバン。
「その程度で龍種を名乗る等片腹痛いわ!精進するがいい」
呆気なく戦闘は終了し俺達陣営は拍子抜けも良い所だ。
結果は分かりきっていたがもう少しジュバンの力を見てみたかった処だ。
「そうか...こうなると邪龍として差が出来過ぎているか...」
俺の聞こえるか聞こえないかの呟きを鋭敏な聴覚で聞き取ったジュバンは俺の方を向きつぶらな瞳を見せる。いや、つぶらと言えるものではないんだが...。
この際なので称号を変えるとしよう。
覇王のペットたる龍なのだからわかりやすいのが良いと思う。
「わかった...お前は今日から覇龍を名乗ると良い」
「おぉ主よ、主と同じ覇を称することが出来るなんて、感謝感激です」
感謝の意を示すジュバンの元にカオスが近づいて行く。
興味深そうに全身を観察し何かに気付いたカオス。
「お前...もしかしてジュバンか?」
「むむ?其方は...いやその声...その顔...そしてその忘れることの出来ないその赤髪...まさか...混沌様...?」
「うむ、随分と成長したようだな、かつて我輩に挑んできたときは只のトカゲだったが今では立派な竜になってるではないか」
「嘗ての主よ、今はあの時の様な無様な結果にはならんぞ」
「ほう、我輩は過去形か、言うようになったではないか」
不敵に笑うカオスとジュバン。
今にも戦闘が始まりそうな雰囲気を醸し出している。
まったく会議だと言っているだろうが...戦闘狂が...。
「もう争いはやめるんだ。せっかく会議で集まってるんだからな」
戦闘が始まりそうな二人を宥め先に龍達の意識を復活させる。
何が起きたのかも理解できてなさそうだが、格の違いだけは理解させられただろう。
「結局の所...今の主とカオス様...どちらが強いんでしょうか」
ジュバンの問に対し俺とカオスは一瞬だけお互い見つめ合った所で同時に答えを出した。
当然だろ?
「俺だな」「我輩が勝つな」
「なんだと?」「どう考えても我輩だろ?」
「決着がつかなかったことを忘れたのか?」
「であるならば我輩でもよかろう」
「決着がついてないんだから引き分けだろ」
「ならば我輩が決着を付けてやろうか?」
「やれるもんならやってみるといい」
バチバチな空気のまま俺とカオスはその場を離れ亜空間へと向かった。
【時空の狭間】でもいいのだが、本気で戦うと世界が壊れてしまう。
本当の意味で戦うのならば外部への影響が皆無な亜空間に行くしかない。
会議の進行はマナやシーラ達に任せて俺とカオスは白黒つける事にする。
いや、今までも何度か戦っているのだが結局白黒つかないグレーな状態で戦闘が終わってしまっている。
だけどカオスと戦っている時だけ真の意味で戦いと言うものを実感できる。
俺も人の事言えないな...
俺は戦闘狂じゃないと思っていただけに少しショックではある。
――――――――――――――――――
「行っちゃったわね...」
「もう兄様ったら...」
「では、ここからの進行は私が行います」
今後の龍大国の方向性をシーラが話始める。
それはもう話し合いではない。ほとんどの者が反対意見を抱く事が無かったのだ。
坦々と説明を終え質問を求めるが誰からも反論はなくシーラの計画がすべて受領される事になる。
龍大国の方針として―――
まずは俺達の友好国として大々的に宣伝しする。各種龍の存在も公表し民の受け入れを行い領土は龍種が治めていた領域をそのまま領土とする、龍種5体の領土はかなり広範囲になるので、それぞれの龍達には引き続き統治を行って貰い、その統括をミーシャとマーシャで行う。
シーラのお陰で早々に会議は終了ムードに突入するが未だにグレースとカオスが帰ってくる気配はない。
「まったくどこ行ったのよ...」
シーラに聞けばすぐにわかりそうなものだが、シーラは会議が終わると直ぐにどこか別の場所に転移してしまった。なのでシーラに頼る事も出来ない。
マナ自身も全力でどこに行ったかを追跡しているがまったく足がかりが無いのだ。
「ハオーはたぶん別次元なのだ」
「別次元?」
その可能性は十分に考慮していた。
あの二人が本気でやり合えばこの世界への影響力はとてつもない物になる。
それを知って居る二人ならば別の次元、もしくは【時空の狭間】に行っていると思われた。
なので、シルビアを狭間に向かわせたのだが、結果はそれぞれの従者が戦っているだけだった。
グレース達が無事なのはわかりきった事なので心配しているわけではない、ただ...いつもやりすぎる二人を危険視してるのだ、あの二人が起こした事は秘書であるマナ自身に後始末として降りかかってくるのだから。
別次元とわかった時点で捜索に関しては打ち切っている、シルビアにも狭間でセシリア達と遊んでもいいと伝え私も自分の家に戻り新しく出来た従者の仕事ぶりを見る事にした。
あれから1ヵ月。グレースが戻ってくることは無かった。
そしてもう1ヵ月経ってもグレースは戻らない。
シーラも戻らずなんの解決策も出ずただ過ぎて行く日々。
ゼルセラも焦り始め配下の者達には動揺が広がる。
セシリア達にも協力してもらい、別次元を虱潰しに探しているが結局この二か月なんの成果もあげられていない。
そしてさらに...エミールの従者であるセシリアの報告に眉を顰める。
「団長の姿が昨日から見えないんです」
「エミールが行方不明??」
笑えない冗談だ。
グレースとカオス、さらにシーラとエミールまで行方不明?
こうなってしまっては負けられない。
恐らく、エミールは見つけたのだろう。
シーラは真っ先に二人の元まで向かいその後を追いエミールは辿り着いた。
エミールに出来て私に出来ないわけが無い。
渋々ゼルセラに協力を要請し再び捜索を開始した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます