決勝戦②
⑤海戦
実況「ロードス島近辺での海戦対決。まず、迎え撃つオスマンから紹介します。歴戦の勇者で地中海の伝説ドラグートことトゥルグート・レイス! スレイマンの親友とは別人です、紅海方面でサウード家を倒し、後にエジプト独立に貢献したイブラーヒーム・パシャ! インド洋こそ我が命・我が海、ポルトガルを追い払ったセルマン・レイス!」
ハルドゥーン「錚々たるメンバーだ」
実況「続きまして隋・唐です。中華最高皇帝はこの人ともう一人くらい有名です、太宗李世民! 17歳から70代まで頑張りました高句麗遠征の立役者李勣! 終わりは全うしなかった張亮の三人です! 準々決勝のカペー朝戦に続いて、またまた地中海にやってきました」
ヘロドトス「ロードスという名の島がある」
実況「そっちのロードスではありません。トルコのすぐ南西にある城塞です。ここを落とせば、隋・唐の勝利です」
ハルドゥーン「あっちのロードスは今思うとオーストラリアくらいの大きさがありそうだ」
李世民「ふむ。今回は大分大陸から近いな」
李勣「前回の面々は地中海入ってからが一苦労でしたものね」
李世民「それでは軽く攻め取ってしまうか」
張亮「そんなにうまくいきますかね? あっ、前方にオスマン艦隊。あれはセルマン・レイス隊です!」
李世民「よし! 蹴散らしてしまえ!」
実況「隋・唐軍がセルマン・レイス隊に襲い掛かります!」
ハルドゥーン「セルマン・レイスの動きは何だか陽動っぽいね。囮部隊に見える」
司馬遷「負けたふりをしてロードス側に引き込んで、城からの砲撃で一網打尽にしたいのかもしれん」
実況「面白い作戦ですが、その前段階でセルマン・レイス隊がボコボコにやられております」
セルマン・レイス「お、俺は、地中海はダメなんだ…。インド洋こそが俺の海なんだ…」
トゥルグート・レイス「何を情けないことを言っているんだ!」
実況「何ということでしょう! セルマン・レイス隊、地中海に拒否反応を示しております!」
ハルドゥーン「確かエーゲ海のレスボス島出身のはずなんだが」
セルマン・レイス「負けた~」
実況「セルマン・レイス隊、艦隊を半分以下に減らして敗走しています。これは囮ではありません、間違いなく敗走です!」
トゥルグート・レイス「役に立たん奴め。いいだろう! この俺が迎え撃ってやる!」
ヘロドトス「何という剛毅な態度。さすが歴戦の勇者だ。奴が艦船で迎え撃つ姿は様になる」
トゥルグート・レイス「何言ってんだよ。俺、砦防御任されてんのよ。この大砲で迎え撃つに決まってるだろうが」
ハルドゥーン「あまり様になってなかった」
李勣「このまま進んでしまいましょう。うん?」
実況「おや、唐軍の後ろの方で波しぶきが…」
イブラーヒーム・パシャ「ハハハハハ! 覚悟しろ!」
ヘロドトス「隋・唐軍の後ろにイブラーヒーム・パシャの艦隊が!?」
ハルドゥーン「一体どこにいたんだ? アレクサンドリアから急行してきたのか?」
イブラーヒーム・パシャ「紅海近辺に隠れていて、隋・唐軍が通り抜けた後にスエズ運河を渡してもらったのだ!」
実況「ズルい! ズルいですが、イブラーヒーム・パシャはエジプト総督ムハンマド・アリーの息子! そのくらいはできるでしょう」
ヘロドトス「まだスエズ運河はなかったんだが…」
司馬遷「それを言い出すと、隋・唐軍もどこから来たんだという話になるし」
李世民「おのれ小癪な!」
トゥルグート・レイス「この間に、俺達も反撃だ!」
李世民「負けるな! 撃ち返せ!」
実況「ロードス島近辺で、李世民艦隊と城の部隊の撃ちあいが展開しています。どちらが勝つのか!?」
トゥルグート・レイス「うわぁ!」
実況「あーっと、トゥルグート・レイスが被弾した!」
イブラーヒーム・パシャ「撃て、撃てぇ!」
張亮「うわぁ!」
司馬遷「張亮も被弾したぞ!」
李勣「陛下、艦隊指揮官がいないと、これ以上まとまった攻撃は…」
李世民「ぬぅぅぅ。もう少しだったのに」
実況「悔しがる隋・唐陣営! 艦隊に与えたダメージは隋・唐の方が明らかに上でしたが、城を占領することができず。地の利の助けもあってオスマン朝の勝利となりました」
セルマン・レイス「俺には地の利はなかった」
ハルドゥーン「知らないよ」
×隋・唐 (14-11-17) vs オスマン朝 (8-18-14)○
ハルドゥーン「オスマン朝は三勝目、世界史最強に王手だ!」
⑥野戦
実況「第六戦の野戦。まずはホームのオスマン朝が戦場であるニコポリス近辺に到着しました。勝利条件ですが、隋・唐軍がニコポル要塞を占領したら勝ちになります。オスマン軍ですが、早世しましたが戦争は強かったムラト4世、プレヴェン要塞でロシア軍相手に破格の粘りを見せたオスマン・ヌーリ・パシャ、チャンダルル家の権威を確立させたチャンダルル・アリ・パシャの三人です」
ハルドゥーン「弱いメンバーではないけれど、少し落ちる感もするね」
実況「隋・唐軍もやってきました。玄武門で殺されたせいで過小評価されていますが、実際は唐建国にはかなり貢献している李建成、南北朝統一に欠かせない力となった隋の楊素、最後に遠征なら任せておいて裴行倹の三人です」
李建成「遠いな~」
裴行倹「まあまあ。これでもかなりショートカットしたんですよ」
楊素「それは分かっているんだが、とにかく遠いよ。こんだけ遠くに来たんだから、異国の姫でもかっさらって継室にしたいな」
李建成「奥さんはどうした?」
楊素「あいつさぁ、夫婦喧嘩でカッとなって『そんなこと言うなら俺が皇帝になった時、おまえを皇后にはしてやらんからな』って言ったら、それをそのまんま皇帝にチクってさ。あんな奴嫌だよ」
裴行倹「そんなこと言って、よく殺されずに済みましたね」
司馬遷「雑談をするくらいには元気があるようだ」
ムラト4世「行くぞ、お前達! わが軍の鉄の規律を再度復唱せよ!」
オスマン兵「No、煙草! No、お酒! No、コーヒー! No、サボリ! No、煙草!」
ヘロドトス「厳しすぎる。ちなみに煙草が二回入っているのはミスではないぞ」
ハルドゥーン「煙草がとことん嫌いだったらしいよね。喫煙者三万人を自ら処刑したなんていう話もある。市井の人に紛れて調べに行ったらしいよ。君主がこっそり変装して町を出歩くっていいエピソードが多いけど、ムラト4世は処罰するためだから質が悪い」
実況「コーヒーもダメなんてなったら作者なら死にますよ」
ムラト4世「よし、行くぞ!」
実況「さあ、李建成とムラト4世の軍が衝突しました! しかし、禁欲的だからか、ホームだからかムラト4世の方が優勢です」
ムラト4世「押せ! 押せ!」
李建成「こ、このままでは持たん! 父上、世民を寄越してくだされ!」
司馬遷「弟に頼ってどうする!」
楊素「本軍が押されているが、李建成も強いはずだ。ここまで負けるのは何か理由がある」
オスマン・ヌーリ・パシャ「補給はお任せください」
実況「オスマン軍、後方のプレヴェンを補給基地にして物資供給は滞りがありません」
楊素「補給の差か…」
裴行倹「そいつは聞き捨てならんな。補給路を断ってしまおう」
楊素「いや、しかし、ここ敵地だぞ? そんなことできるのか?」
裴行倹「私は西域歴が長いからな。こんなこともあろうかとブルガリアのあたりも調べておいた」
楊素「マジかよ」
実況「おっと、裴行倹の部隊が迂回してプレヴェンへと向かいますよ」
ハルドゥーン「これを倒せれば、優位だが果たしてうまくいくかな?」
ヘロドトス「守るは、オスマン・ヌーリ・パシャ、ロシアの猛攻にも5か月耐えた男だからな」
裴行倹「ロシアが何だ! 俺は裴行倹だ! こんなこともあろうかと、この辺りの地形は獣道に至るまで調べつくしてある!」
オスマン・ヌーリ・パシャ「えっ!? 南から既に入られていた、だと!」
実況「これは! 裴行倹、間道を見つけたようで南から旅人の恰好をしてプレヴェンに侵入してしました! 城門の中に入られたらどうにもなりません。あっという間に陥落です!」
ムラト4世「補給がなくなった!? ということは酒…じゃなかった、食糧が来ないのか?」
李建成「ようやく一息ついた」
楊素「よし! 補給がなくなった相手だ、叩き潰してやる!」
司馬遷「楊素が力押しでつぶしにかかる!」
実況「強引です! しかし、これを勝ち抜けばニコポル城も一気に占領できそうです」
チャンダルル・アリ・パシャ「撃て! 撃てぇ!」
楊素「名門のモブは、黙っていろ!」
司馬遷「突破した! そのまま楊素がニコポルを占領した!」
ヘロドトス「プレヴェンとニコポルを占領した以上、オスマンはこの地を諦めるしかない!」
ムラト4世「おのれぇ! うっ! 飲みすぎで肝硬変が…」
実況「あーっと! ムラト4世、部下には禁酒なのに、自分は肝硬変になるほど酒を飲んでいた! これはいけません!」
司馬遷「ともあれ、これで三勝三敗と再びタイになった!」
〇隋・唐 (10-8-14) vs オスマン朝 (6-19-5)×
⑦女王・文
実況「泣いても笑っても、この戦いで世界史最強国が決まります! 女王三人の文学…というか政治勝負! まずは隋・唐。則天武后の正統後継者太平公主! 世界三大美人は伊達ではない、楊貴妃こと楊玉環! 最後に五代に渡って皇太后を務めた懿安皇后郭氏です!」
司馬遷「最後の懿安皇后は明にも同じ名前の皇后がいて、しかもそちらの方が有名だから、郭氏と張氏と分ける必要がある」
実況「続きましてオスマンです! スレイマンの唯一の妃、トルコでハーレムを牛耳る女といえばこの人ヒュッレム・スルタン! 同じくハーレム支配しました、キョセム・スルタン! スレイマンの娘としてやりたい放題やった才人、ミフリマール・スルタン!」
ハルドゥーン「ありうるとは思ったが、恐ろしい女の戦いで締めくくることになるとは…」
ヘロドトス「この三人同士の戦いは本当に怖いな」
ハルドゥーン「ハンデは…、ヒュッレムと太平公主だとオスマンに1、キュセムと楊貴妃は互角、ミフリマールと懿安皇后もオスマンに1。オスマンに2ということでどうだろうか?」
司馬遷「異論はない」
ヘロドトス「同じく」
実況「それでは、いよいよ最終決着の時です! 一回目、2-16!」
ヘロドトス「これは痛恨だ! オスマンのリードが16まで広がった!」
実況「二回目、9-3!」
ハルドゥーン「詰まったが、それでも差が10だ」
実況「運命の三回目! 16-12!」
司馬遷「オスマンの勝利だ!」
実況「ということで、栄えある世界史最強決定戦・優勝国はオスマン朝に決定いたしました!」
オスマン・ベイ「やったー! 心の友よー!」
スレイマン1世「ご、ご先祖様。苦しい…」
ヒュッレム・スルタン「グスッ…。こ、これは涙ではありません。汗。そう、目から出た汗ですわ!」
司馬遷「決勝戦にふさわしい死闘だった」
ハルドゥーン「いや、しかし、試合前の司馬遷さんの予想、見事に当たりましたね」
司馬遷「確かに、唐が一、三、六。オスマンが四、五、七を取って、最終的にはジャンケンで勝ったオスマンが勝利をモノにした」
実況「実は準決勝の時点で残りの人数整理をした時に隋・唐は今回のメンバーが揃いましたが、オスマンは半分くらい足りませんでした。バルト帝国と秦・楚は、それ以上に足りませんでしたけれど。ですので、作者は『多分隋・唐が楽勝するのではないか』と思ったそうです。そこから、特に海戦で巻き返しを計れたのがオスマン優勝の決め手になったものと思われます」
ヘロドトス「隋・唐もオスマンも海戦を二回戦い、二回とも錚々たるメンバーを集めてきたからな」
司馬遷「最後の対決となった女王・文。隋・唐は準決勝で則天武后、独孤皇后、長孫皇后と一戦早くエース三人を出さなければならなかったことも大きかったかもしれない」
実況「オスマンは準決勝でジャンケン二回ということもあり、投入人数は少なかったですからね。更に準々決勝のマリ王国に女性がほとんどいないということで女性を温存できたのも大きかったです」
ハルドゥーン「しかし、決勝戦だけは本当に僅差になった」
実況「残る一回で、今回の反省と、第二回大会をやるならどうするかということを考えたいと思います」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます