三回戦・結果

十三日目・第1~4試合

第一試合

アケメネス朝 vs 東漢

実況「ほとんど関係ある動物が出てくることがなく、事実上運に左右されている動物戦。まずはアケメネス朝ですが…」


ダレイオス1世「アケメネス朝は全ての動物だ!」


ハルドゥーン「何だって?」


ダレイオス1世「ペルシアを代表する宗教・ゾロアスター教では、牛などに代表される多くの動物を口に入れてはいけないとしている。従って、ゾロアスター教信仰者には菜食主義者が多く、全ての動物を慈しんでいるのだ! 故に、アケメネス朝は全ての動物を守っている!」


ヘロドトス「な、何ということだ…」


実況「アケメネス朝ではなく、ゾロアスター教が…というのが気になりますが、全ての動物を守るというのはかなりポイント高いと思います」


ハルドゥーン「サーサーン朝は間違いなくゾロアスター教だったけれど、アケメネス朝がそうだったのかについては疑問の余地もないではないからね。ただ、ペルシア=ゾロアスターだし言い分が間違っているとは言えない」


実況「動物王で初めて、まともな動物の話が出てきたような気がします」


司馬遷「これは東漢が適当ネタだとハンデ10くらいになる、苦しいかもしれん…」


東漢明帝「東漢の動物はこれだ!」


ヘロドトス「これは!?」


実況「東洋ではおなじみの十二支ですね」


明帝「十二支の動物が確定したのは、我が東漢の時代だ! 故に東漢ではこの十二の動物を代表として出させてもらう!」


ヘロドトス「おぉーっ! その手があったか!」


司馬遷「何というハイレベルな動物戦! デリーを攻撃したからと短絡的に象を出してくるユーラシアの国に見習えと言いたい!」


実況「菜食主義対十二支という、現代まで伝わる概念同士につながる動物王となりました。ただ、先程も出ましたが、ゾロアスター教が即菜食主義につながるわけではないので十二支にハンデ2をつけることにします」


ヘロドトス「アケメネス朝は11。東漢は10以上なら勝利だ」


司馬遷「8だー! 1差負けだ!」


実況「アケメネス朝の勝利です! 世界史最強戦にふさわしい素晴らしい動物戦でした!」

○アケメネス朝 (11) vs 東漢 (8)×

アケメネス朝、16強進出



第二試合

カペー・ブルボン朝 vs サラセン帝国

ルイ14世「それでは、我が料理人たちよ。アレ・キュイジーヌ!」


実況「ルイ14世の合図で、料理人たちが一斉に料理を作り始めました!」


司馬遷「中々統率のとれたいい動きだ。フレンチ・コースというのは楽しみだな」


実況「一方のサラセン帝国は黎明期ということで、まだアッバース朝のような完成された料理ではありません。ただ、出来は悪くなさそうですね」


ハルドゥーン「それでは試食だ!」


二時間経過


ヘロドトス「サラセン帝国の料理は悪くないが、コース料理を堪能できるという点ではやはりブルボンの方が上だ」


司馬遷「デザートのチョコリエールやバームロールも美味しい」


実況「ブルボン違いです」


ハルドゥーン「全料理確認、オールクリア。完璧な勝利です」


実況「それはミホノブルボン」

○カペー・ブルボン朝 (18) vs サラセン帝国 (12)×

カペー・ブルボン朝、16強進出



第三試合

隋・唐 vs チャールキヤ朝

実況「どちらも三人。真っ向勝負をかけてきました。対戦地はデカン高原のサーターラーです。マラータとムガルの抗争地としても知られています」


ハルドゥーン「チャールキヤ朝はプラケーシン2世に、ヴィクラマディティヤ2世、ヴィクラマティディヤ6世か。前期と後期から選んできたね」


唐・玄宗「さすがに中々の者が出てきたな」


楊貴妃「作者の中に、楽そうなら三蔵法師玄奘でも入れようかというネタもあったようですが、そうは行きませんわね (ぼよーん、ぼよーん)」


司馬遷「お前たちが選んだら勝てるものも負けてしまうわ」


実況「隋・唐ですが、李靖、王玄策、高仙芝の三人です」


司馬遷「中国最強クラスの李靖に、インドをよく知っている王玄策、高原での実績のある高仙芝の三人だな」


プラケーシン2世「中国から遠路はるばるやってきた連中だ。なるべく短い距離で来たいだろうから、必ずこの隘路を使うに違いない」


ハルドゥーン「おっと。プラケーシン2世が策を練っているね」


司馬遷「確かに、遠路はるばるやってくるわけだから、なるべく移動距離は短くしたい」


プラケーシン2世「ここで落石を仕掛ければ、唐軍を一網打尽にできる」


実況「おおっと、プラケーシン2世、落石で何とかしようとしているようです」


ヘロドトス「そうこうしているうちに隋・唐軍がやってきたな」


王玄策「キュピーン! インド歴の長い私の勘に、この隘路は危険だとささやきかけるものがいます」


高仙芝「ピコーン! 高原歴の長い私の心に直接働きかける者がいます。この地は危険だと」


李靖「そ、そうか…。なら、多少遠回りをしよう」


実況「おーっと! 気づかれてしまった! これはプラケーシン2世、骨折り損のくたびれもうけ。兵士達もガックリ来ています」


司馬遷「悪い策ではなかったが、やはり経験の長い面々がいたのが良かったようだ」


実況「隋・唐の大軍がサーターラーを包囲しました。この地は正直それほど堅牢ではないので、籠城だけで守り切るのは難しそうです」


ハルドゥーン「マラータは城を守るより、城に引き付けてのゲリラ戦が得意だったからね。デカンの城は割合簡単に落ちるんだよね」


李靖「この戦況だと、相手の仕掛けてきそうなところは…」


実況「地理を生かす李靖に、地理の得意な二人がついているという理想的な組合せ。これはチャールキヤ軍、中々手が出せない」


ヴィクマティディヤ6世「何とか逆転の目を!」


司馬遷「おっと、ヴィクマティディヤ6世の部隊も城を出た」


ハルドゥーン「象兵で叩き潰すつもりだ!」


ヘロドトス「確かに籠城を続けていても苦しい。象兵で相手をパニックに陥れることができれば」


王玄策「あれは象だ。大きいが、目つぶしなどをすれば暴走して楽勝だ」


唐兵「そ、そうなのか」


実況「唐兵、動揺はしましたが、王玄策がよく知っていた! 逆転の目にはならない!」


高仙芝「おまえ達、さっさと開城した方がいいよ。勇敢に戦っても逃げかえったら処刑されてしまうからね。実際に処刑された私が言うんだから間違いない」


司馬遷「シュール過ぎるが、実際処刑されたからなぁ」


ハルドゥーン「タラス河畔の敗戦を勝ったと報告したり、問題行動も多いけどね」


チャールキヤ兵「そ、そうだな。降伏しよう」


実況「あーっと! 城兵が次々降伏していっています! これは決め手になるでしょう。隋・唐の勝利です!」

○隋・唐 (20-10-8) vs チャールキヤ朝 (17-8-12)×

隋・唐、16強進出



第四試合

ハノーヴァー朝 vs イタリア王国

実況「イタリア王国は1人を希望、大英帝国は3人希望です」


司馬遷「17-17のドロー。気を持たせるなぁ」


実況「やり直しは9-10! イタリア側の勝利です」


ハルドゥーン「あちゃあ…」


実況「イタリア王国は当然この人、アニータ・ガリバルディです! ブラジル出身、ガリバルディに一目惚れして夫を捨てて駆け落ち、最前線で戦いまくった逸話があり、イタリアでも夫とともに進軍して最後は病気に力尽きた、19世紀最強の女傑と言っていいでしょう!」


ハルドゥーン「大英帝国、大ピンチだ」


実況「ハノーヴァー朝からはフローレンス・ナイチンゲールです! クリミア戦争に従軍し、近代の看護概念を作り上げた女性です。妥協を許さぬ姿勢でも知られた人ではあります」


ヘロドトス「どちらが偉人かというと、当然後者だが、これは武力だからな。売り物が違う」


ナイチンゲール「喧嘩なんかしていても仕方ないでしょう」


アニータ・ガリバルディ「うるさい! 祖国の独立のために戦ったことのない奴なんかに偉そうに言われたかないね!」


ナイチンゲール「貴女の場合、祖国というより、一目ぼれの激情でしょう? カッとなって殴るのと変わりないわ」


アニータ・ガリバルディ「うるさいわい! おまえなんか出ていけ!」


実況「あーっ、持ち上げて放り投げてしまいました! やはり力の差はかなりあるようです」


ハルドゥーン「ハンデ3くらいかな…。あくまで武力という点では…」


実況「サイコロは5-4で、ハンデで逆転! イタリア王国、清に続いてハノーヴァー朝も撃破! この大会、最大の衝撃です!」


アニータ・ガリバルディ「イタリア! イタリア!」


ジュゼッペ・ガリバルディ「イタリア! イタリア!」


ヘロドトス「まさか大英帝国が三回戦敗退とは…」


ハルドゥーン「ウェリントンが、ネルソンが、キッチナーが、ゴードンが、グラッドストンが、ディズレーリが茫然としている…。まさか大英帝国が、イタリアに敗れるとは」


司馬遷「これが一発勝負の恐ろしさというべきなのだろうな」


ヘロドトス「この対戦形式以外なら、まともな野戦や女性文芸なら余裕で勝てていたはずなのに、よりにもよって唯一不利な対戦形式を引いてしまうのだから、分からないものだ」

×ハノーヴァー朝 (5) vs イタリア王国 (4)○

イタリア王国、16強進出

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