八日目・第1~4試合

第一試合

実況「まず、人数が折り合わなかったのでサイコロを振った結果、幕末・明治が勝利しました。これで両者三人ずつ投入です」


司馬遷「幕末・江戸は、沖田総司、斎藤一、中村半次郎。人斬りばかり入れればいいというものでもないと思うが」


実況「ですが、幕末でイメージする個人武芸だとそうなるのではないでしょうか。一方、ムガル帝国はフマーユーン、アウラングゼーブ、サイード・マフムード・カーンを出してきました」


ハルドゥーン「アウラングゼーブは若い頃には象と喧嘩するくらい血気早かったし、サイード・マフムード・カーンも最前線で戦い続ける猛将だった。フマーユーンは体格がいいし勇敢だったらしい」


実況「ということで試合開始しましたが…」


中村半次郎「ちょっと待て! 何でこいつら、象に乗っているんだ!?」


フマーユーン「え、馬は乗ってもいいんだよね?」


ヘロドトス「馬…? まあ、個人武術だから、騎乗術も含まれるは含まれる」


司馬遷「刀では象の上の人まで届かんぞ」


実況「ちょっとズルい気もしますが、徒歩で刀という選択をした以上、仕方ないといえそうです。そして当然ですが、相手になりません…」


沖田総司「婆さん、斬れねえよ。象は斬れねえよ」


実況「そんな中、斎藤一が頑張っています!」


斎藤一「斬!」


ハルドゥーン「ゼロ距離での突きで象を跳ね飛ばした!」


実況「刀で象を吹き飛ばすとは無茶苦茶です! あ、しかし…」


アウラングゼーブ「フハハハ、やるではないか」


アウラングゼーブの象「パオーン!」


実況「斎藤一、象を二頭倒しましたが、アウラングゼーブの象の体当たりで跳ね飛ばされてしまいました!」


土方歳三「やはりこれからの時代は銃砲がないとどうしようもないな」


実況「そういう問題でもないような気がします」


ハルドゥーン「結局、象が二頭いなくなったが、ムガルは全員残った。というより、フマーユーンとサイード・マフムード・カーンは何もしておらん」


実況「ムガル帝国が勝利しましたが、大国なのにやり方が姑息な気もしないではありません。あと幕末・明治の敗因は某明治の剣豪漫画に沖田総司がいなかったことでしょうか…」


ヘロドトス「間違いない。ちょっとだけ出ていたけど、対決シーンがなかったからな」


ハルドゥーン「しかし、この手を使えばインドやアフリカの面々、個人戦武術で負けることがないんじゃないか?」


アウラングゼーブ「馬鹿者! 余は象に立ち向かったことがあるぞ! 象が反則みたいな言い方はしないでもらいたい!」


司馬遷「ほとんどの地域はそもそも象がおらんから」

○ムガル朝 (16) VS 幕末・明治 (5)×

ムガル朝、二回戦進出



第二試合

実況「江戸時代はやはり中々女性文化人がいません。楠本イネ、天秀尼、池玉蘭が出てきました。この三人でエカチェリーナ・ダーシュコワに挑みます。六か国語を操り、ロシアの科学アカデミー、ロシア・アカデミーのトップを務め、ロシア語辞書編纂にも参加したという最強の文芸・科学人に勝つことができるのでしょうか…?」


ヘロドトス「江戸がどうこうというより、世界中探しても勝てそうな女がどれだけいるのか。それこそ同じロシアのエカチェリーナ2世くらいしか思いつかない。あとはゼノビアか」


司馬遷「則天武后は政治センスこそ抜群だが、数か国語話すとか、学術の最先端を極めたというわけではないからなぁ」


ハルドゥーン「ついでにエカチェリーナのクーデターでは、調略活動で大活躍しているから、武でも活躍の余地があるしねぇ」


エカチェリーナ・ダーシュコワ「ちょっとお待ちなさい。三人でも構いませんが、こちらはもちろんタイマン勝負を要求しますわ」


ハルドゥーン「あ、相手に一人だけにするよう要求はするのね」


実況「三人まとめてかかってこいという方がかっこいいのに…。6-19でロマノフ朝が勝利しましたから、一人勝負になりました」


池玉蘭「酷い!」


エカチェリーナ・ダーシュコワ「ほほう。これが貴女の絵ですか。素晴らしいですわね。私も絵を多少はモノにしますのよ。この絵を世界的に解説すると…」


実況「やめて! せめて違う分野で勝負してあげて!」


司馬遷「本業じゃないのに、相手の得意分野で勝負するなんて、嫌味すぎる」


池玉蘭「うわあああん!」


実況「完全に泣かされてしまいました。容赦ないです」


×江戸 (13) VS ロマノフ朝 (13)○

ロマノフ朝、二回戦進出



第三試合

実況「秦・楚は始皇帝、マムルーク朝はシャジャル・アッドゥッルと今回も創始者が料理を作っています。楚・秦ですが、昔は強い火力がなかったので、現代の中国にはない刺身などの料理も多かったという話です」


ハルドゥーン「マムルーク朝があったのはイスラームの中心地カイロ。当然、その料理はこの前のアッバース朝も出してきたようなアラブ料理の影響が大きい」


司馬遷「ビールを作っているが、イスラームは禁酒じゃなかったか?」


ハルドゥーン「マムルークは奴隷身分ということもあるし、イスラームにそんな厳格でもないから適当なんじゃないかな」


司馬遷「何てこった」


実況「料理ができましたので、試食したいと思います」


司馬遷「うむ。まず秦・楚だが、どちらかというと質素な味わいの中に調味料の味が活かされている。中々の味だ」


ヘロドトス「次はマムルーク朝だな。うん?」


実況「ビールを出すか出さないかで揉めていますね」


バイバルス「いいじゃねえか、ビールくらい」


ナースィル・ハサン「そんなことは認められません! もっと戒律に厳格になるべきです」


ハルドゥーン「喧嘩が始まった」


司馬遷「段々エスカレートしてきたな…。あっ! 料理を蹴飛ばしてしまった」


実況「床に落ちて滅茶苦茶なことになりましたが、本人達は喧嘩に夢中で気づいていないですね」


ヘロドトス「さすがに床に落ちた料理は食べられないだろう。ということは、秦・楚の勝利ということか」


実況「何とも締まらない試合となってしまいました」

○秦・楚 (14) VS マムルーク朝 (3)×

秦・楚、二回戦進出



第四試合

実況「チャクリー朝からはターオ・スラナーリーが出てきました!」


司馬遷「ラオスが攻めてきた時に足止めをしたモー夫人のことだ。タイの四大女傑と呼ばれている、その一人だな」


実況「李氏朝鮮からは桂月香です。朝鮮の役の際に密偵として働いていたという女性です。内藤如安を暗殺したという逸話もあるのですが」


司馬遷「死んでないし…」


ハルドゥーン「実在性に疑問はあるけれど、まあ、そういう人達がいたことの仮託という部分もあるのだろうし、全く縁のない話でもないのだろう。ただ、ここはチャクリー朝にハンデ3くらいになるのかな」


ターオ・スラナーリー「曲者だ! 曲者がいるぞ!」


実況「あーっと、桂月香は密偵ということでこっそり近づきたかったはずですが、開始早々見つかってしまいました! 軍隊に追い回されてしまって、もうジ・エンドです」


ヘロドトス「さすがに四大女傑というだけのことはあった」


実況「ちょっとサイコロの目が一方的になることが多いですね。一回限りだから仕方ないですが」

○チャクリー朝 (18) VS 李氏朝鮮 (4)×

チャクリー朝、二回戦進出

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