三日目・第1~4試合

第一試合

実況「三日目第一試合はデンマーク王国とアッシリアの動物対決。デンマークからはコブハクチョウが出て来ました!」


司馬遷「コブハクチョウはデンマークの国鳥だが、どういう繋がりがあるのだ?」


フレゼリク6世「デンマークが産んだ世界的童話作者アンデルセンが『醜いアヒルの子』を書いている」


ヘロドトス「く、苦しい…」


実況「ともあれ、コブハクチョウの群れが飛び舞う姿は美しいです!」


ハルドゥーン「アッシリアはどうなのだ?」


実況「おっと、ライオンです。アッシリアはライオンを連れてきました!」


ヘロドトス「アッシュールバニパル王のライオン、らしい」


実況「そ、それも微妙ではありますが、どちらもギリギリ繋がりがあるとは言えそうです。ですので、この勝負は互角ということで判定したいと思います」


二十分経過。


実況「判定はデンマークです! アンデルセンの童話は強かった!」



第二試合

実況「二日前は恐ろしい思いをした料理対決。今日は円満に進んでほしいです。まず、ヴィジャヤナガル王国はラーマ・ラーヤが作っています。専横を極めた人ですが、後ろにクリシュナ・デーヴァ・ラーヤがいますので、大人しく作っています」


ヘロドトス「今回は南インドのライスで食べるカレーのようだな。スパイスが効いていそうな香りがする」


ラーマ・ラーヤ「これにさとうきびを入れる」


ハルドゥーン「何!?」


実況「塩で甘みを引き立てることはありますが、砂糖も辛さを引き立てることになるのでしょうか」


クリシュナ・デーヴァ・ラーヤ「さとうきびはヴィジャヤナガル王国産のものが欧州に沢山出て行ったからな」


実況「おっと。歴史的な自国産商品をアピールしています。これはポイント高いです。さて、一方のアッバース朝。こちらは創始者アッバースが出てきました」


マンスール「アッバース朝はこの時代、世界でもっとも料理が進歩した国なのだ。料理に対する書物も沢山残されているのだからな。贅沢を極めた料理も出来るのだ」


ヘロドトス「これも非常に楽しみだ」


司馬遷「まともな料理対決になってきた」


ヘロドトス「一昨日の試合は、酷すぎたからな」


ハルドゥーン(こいつらにいつかバートリスープを飲ませてやる…)


実況「邪なことを企てている人もいますが、料理は順当にできました。まずヴィジャヤナガル王国の料理は南インドカレー、シンプルに美味しそうです。砂糖がどのようなテイストをもたらすのか。一方のアッバース朝は昔ながらのアラブ料理です。アラブ料理が何かと聞かれて説明するのは難しいのですが、白いナンのようなものの上に、肉なりソースなりが乗っています」


司馬遷「こ、これは!?」


ハルドゥーン「どちらも美味いけれど、ヴィジャヤナガル王国のカレーのこの味は何なのだ? どういう理屈かは分からないがさとうきびが辛さを引き立てている!」


実況「判定は全員、ヴィジャヤナガル王国! 強豪アッバース朝に力勝ちして二回戦進出です!」


○ヴィジャヤナガル王国 (15) VS アッバース朝 (5)×

ヴィジャヤナガル王国、二回戦進出



第三試合

実況「スウェーデン・バルト帝国からはグスタフ・アドルフが出てきました。一方、スコータイ朝からはラームカムヘーンです」


グスタフ・アドルフ「フフフ、私はこういったことには強い」


実況「結構な自信ですが、それはどうしてですか?」


グスタフ・アドルフ「私は近眼だからな。相手の顔が見えないから無用な駆け引きに巻き込まれずに済む」


実況「なるほど。ただ、近眼なので戦闘中に不用意に敵軍に近づきすぎて射殺されてしまったという逸話もありましたね…」


ラームカムヘーン「仏陀が私の勝利を導いてくれるだろう」


司馬遷「さすがにラームカムヘーンは敬虔な仏教徒だ。勝利を仏に祈っている」


ハルドゥーン「スポーツ選手がキリストやアッラーに祈りを捧げているところはあるけれど、仏陀に捧げることはあまりないから新鮮だね」


実況「それでは勝負です! 最初はグー!」


両者「ジャンケン、ポン!」


グスタフ・アドルフ:グー

ラームカムヘーン:チョキ


実況「バルト帝国の勝利です! 駆け引き無用な近眼効果が出たのでしょうか!?」


グスタフ・アドルフ「いや、スウェーデンの諜報部隊にラームカムヘーンの過去のジャンケンを調べさせていた。その結果、彼は6割の確率で最初にチョキを出していた」


ヘロドトス「何と?」


司馬遷「バルト帝国はジャンケンでもしっかり研究していたのか」


注:そんな事実はありません。チョキの目が出たのは今大会初めて。


ハルドゥーン「でも一体どうやって、過去のジャンケンのデータを集めたんだろう?」


バルト帝国、二回戦進出



第四試合

実況「インカ連合軍はパチャクテク、マンコ・インカ・ユパンキ、トゥパック・アマルを出してきました」


ヘロドトス「インカ最大の皇帝と、実質滅亡後に抵抗した二人だな」


実況「フランス・ナポレオン帝国はベルナドット、ブリューヌ、ヴィクトル=ペランの三人です」


ハルドゥーン「エース級はいないね」


司馬遷「ナポレオン3世を入れればよかったのに」


実況「インカ連合軍が籠るのはヴィルカバンバです。正確な場所は分かりませんが、ペルー国内のアンデス山脈のどこかにあるという話です」


司馬遷「パチャクテクがいるので、築城技術はまあまあだ」


ヘロドトス「一方のナポレオン帝国、遠路はるばるやってきた。不安要素があるとすれば、将軍がイマイチなことと、兵士がアンデスに合うかどうかだな」


ハルドゥーン「アルプスで戦っていたこともあるから、アンデスであること自体はそこまで苦にならないとは思うけどね」


実況「さて、開戦しました! おおっと? 予想以上にインカ軍の防御力が強い!」


ハルドゥーン「史実では持っていなかった銃器製造の技術があるからね。インカの技術力自体は高いから、発想があればしっかりした防御戦ができる」


実況「しかしナポレオン軍、勇猛です! 多少の犠牲をものともせず突っ込んでいきます。指揮官がどうというよりも、兵士達が勇敢です!」


司馬遷「これが革命の産んだ兵士達。国のために戦う兵士ということだな」


ヘロドトス「戦場は全然関係ないペルーなのだがな」


ベルナドット「……私は帰る」


実況「あれ? ベルナドット将軍、勝手に戦線を離脱しました! ナポレオン・ボナパルトのために最後まで戦うつもりはないようです!」


ナポレオン・ボナパルト「おのれ! 余の元カノを妻としてやったのに、あいつはどうして反抗的なのだ!」


実況「…それで恩を感じる人はいませんよ…。ベルナドットのいなくなったナポレオン軍、一気に数が少なくなりましたが、インカ連合軍も反撃の糸口を見つけられない」


ヘロドトス「パチャクテクはともかく、残りの二人が防御しか考えてなくてオロオロしているからな」


実況「史実では防衛を余儀なくされただけで、最終的にはスペインに屈していますからね…。インカ連合軍、絶好の好機をフイにしてしまいました!」


パチャクテク「おのれ!」


ブリューヌ「うわぁ!」


実況「何と! パチャクテク隊の投げた爆弾がブリューヌ元帥に直撃した! ブリューヌ元帥、リタイアです! これでナポレオン軍はヴィクトル=ペラン一人だけになってしまった! インカ連合軍の勝利なるか? しかし、インカ軍も大分兵士が減っている!」


トゥパンク・アマル「どうしてだ? しっかり戦おう!」


実況「インカ軍、何とか鼓舞しようとしていますが…」


ヘロドトス「マチュピチュを見ても分かるようにインカの陣地は広いわけではない。なまじ兵士を入れ過ぎたことで物資不足が顕著になったらしい」


実況「一方のナポレオン軍、最後に残ったヴィクトル=ペランが兵士を鼓舞して、遂に城までたどりつきました! ここまで来たら兵士達も意気盛ん! そのまま陥落させてしまいました。ナポレオン軍、かなりグダグダでしたが、インカはそこに付け込めず。順当に勝利を収めました!」


司馬遷「三回ずつ振ってナポレオン軍は24(平均8)、インカ軍は22(平均7.7)という低調な試合になったな」

ナポレオン帝国 (19-1-4) VS インカ連合軍 (10-6-6)

ナポレオン帝国、二回戦進出

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