一日目・第3試合

実況「一日目注目の勝負。ローマ帝国対宋。まずはお互い、将軍を三人ずつ出し合うことで合意しました。一発勝負は怖いのでサイコロを三回振りたいそうです。主に作者的に」


ヘロドトス「一回戦だというのに、三人も出すとは豪勢なことだ」


実況「まずは宋ですが、モンゴルの攻撃から11年間襄陽を守り抜いた呂文煥。そもそも存命中はモンゴルが攻撃しようと思わなかった孟珙。最後に中国の武人といえばこの人、岳飛という三人です。ちなみに攻城戦モデル地形はその襄陽ということになっています」


ヘロドトス「一方のローマ帝国はティベリウス、アグリッパ、大ドルーススという三人だ。二代皇帝ティベリウスにその弟で名将の誉高い大ドルースス、アウグストゥスの前線指揮官アグリッパという取り合わせだ」


司馬遷「宋は籠城メインということで曹彬や狄青、虞允文、宗沢が温存された。もちろん最強の切り札趙匡胤も出ていない」


ヘロドトス「ローマもトラヤヌス、コンスタンティヌス、ハドリアヌスが温存だ。まだ初戦だから仕方ないが、これだけ温存して敗退したら悔やまれるところではあるな」


実況「開戦の銅鑼が鳴りました」


岳飛「者共、この入れ墨を見よ! 生きると思うな。死ぬことこそ生きることよ!」

呂文煥「絶対に諦めるな! 気合だ! 気合だ! 気合だー!」


実況「岳飛将軍の『尽忠報国』の入れ墨を見て、兵士の士気が上がっています。呂文煥将軍もビンタや気合いだコールを駆使。これで11年もったのかは定かではありませんが、心強い将軍です。その間に孟珙将軍が本城と支城を移動しつつ罠を仕掛けています。しかも移動する度に香を焚いています。憎いですねぇ」


ヘロドトス「一方、ローマ軍は川の北側に大ドルースス、南側にアグリッパ、ティベリウスが布陣している」


ハルドゥーン「大ドルーススは機転の利く劇場型の将軍だから、何かしら策を打ってくるかもしれないね」


アグリッパ「いいか者共。相手、南宋を侮ってはいけないが恐れることはない! 我々はアントニウスにだって勝ってきたんだからな!」


実況「ローマ軍の攻城は土を盛って城壁までの坂を作るか、シンプルに壁上りですが、襄陽城は間に堀がありますので簡単にはいきません。そうなると」


ヘロドトス「攻城塔が出てきたな。ローマは工兵隊が強いから、多少高い城壁でも簡単に作ることができる」


実況「ちなみに、1000年以上差のある両国ですのでそのままだと技術レベルにかなり差がありますが、それはないものとして扱っています。襄陽城を見合って、両軍が打ち合っていますが、これでは攻城側が決定機を得るのは難しそうです」


司馬遷「北側の大ドルーススは何をしているのかな? 奴が要注意人物だからということで孟珙は動いていないが、このままでは時間切れになってしまうかもしれない」


ヘロドトス「時間切れはどのタイミングだ?」


司馬遷「一か月。その時点の状況で、落ちそうか落ちないかを我々が審査する」


ヘロドトス「一か月だと兵糧攻めの形もとれないだろうな。せめて支城は落とさないといけないが、その支城に一番厄介な孟珙がいる」


実況「大ドルーススが動かないのが不気味ですね。もしかして、トンネルでも掘っている?ただ、さすがに長江より深い位置にトンネルを掘ることはできないと思うのですが…」


ハルドゥーン「水攻めも時間的に難しそうだよね」


実況「初日の夜を迎えました。ああっと! ティベリウス、アグリッパ軍の後方から火が上がりました! 孟珙の別動隊が川を渡って奇襲をかけたようです。攻城側は籠城側の奇襲を注意しなければいけないのですが、ここは見事にやられてしまいました!」


孟珙「奇襲がうまく行った割には損害を与えきれませんでしたね…。さすがにローマ軍というところですか (香を焚いて、土を清めて撤退していく)」


司馬遷「本当にキザだな」


ハルドゥーン「実況も交代制を採用するよ。実際に戦う人達は大変だよね」


司馬遷「ここまでは宋のペースだ」


ハルドゥーン「ローマのカギはやはり大ドルーススが握っているのだろうけれど、初日は何もしていなかったな」


司馬遷「北側は大ドルーススと孟珙がにらみ合いを続けていて、南側ではアグリッパとティベリウスが岳飛、呂文煥との小競り合いを続けているぞ」




実況「さて、五日目を迎えましたが、戦況には変わりはありません。このまま終わると判定勝負となりますが、明らかに宋が有利です。おっ、ついに大ドルーススが動き出しました。孟珙のいる支城側に動き出しています」


ヘロドトス「随分と真っすぐ向かっているな。川を渡れば支城はそこまでの守備能力はないだろうが、そこに近づけないように罠を仕掛けているはず」


孟珙「…随分とストレートな御仁ですね。ならば、爆薬を使って大損害を与えましょう」


孟珙兵「了解です! ポチッ」


孟珙「…む?」


実況「あれ、スルスルッと渡ってしまいましたよ」


大ドルースス「フフフ…、夜間に突貫作業で罠を解除して、川を渡れるようにしておいたのだ。ローマの工兵隊はぁ、世界一ィィィィ!」


実況「それはローマじゃありません! ドイツです!」


孟珙「何ですと? しかし、そのようなことがないように我々の部隊も毎夜哨戒していたはずなのに…」


大ドルースス「バレないように香を焚いておいた」


実況「何と、まさかの相手の癖を利用した策略。でも、確かに香が焚いてあったら既に孟珙将軍チェック済と判断して、調べることなく素通りしてしまいそうです!」


大ドルースス「何も考えないモンゴルと、我々ローマを一緒にしないでもらいたい!」


実況「大ドルースス、ドヤ顔で関係ないモンゴルをディスっています! これはいけません! 遺恨を作ってしまいます」


大ドルースス「支城は城壁にはりついてしまえば落とせるはずだ! 行け、行けぇ!」


孟珙「くっ…、持ちこたえられませんか…」


実況「ついに支城が陥落しました。これは大きい! 本城の士気も下がることでしょう!」


呂文煥「支城など関係ないわぁ。気合で持ちこたえろぉ!」


岳飛「忠誠あるのみだぁ!」


実況「…本城にいるのは脳筋ばかりなので、士気には影響しませんでした」


注) 呂文煥と岳飛が脳筋だというのはフィクションです


アグリッパ「支城落としたし、無理せんでもいいか」


ティベリウス「ローマは基本的にメンタル強いので、あそこまで鼓舞しなくても攻城は余裕でできるからな」


実況「ローマもあまり無理はしません。判定でもいいかという構えです」


孟珙「このままでは負けてしまう。何か打開策をとらなければ…」




実況「さて、28日が経過しましたが、状況は変わりがありません。ローマ帝国は余裕の包囲戦状況です」


司馬遷「判定なら間違いなく勝てるわけだし」


ヘロドドス「おや、城内から何か撒かれているぞ」


実況「何と、『モンゴルはバカじゃない』というビラが撒かれています。ビラには白鵬さんと照ノ富士さんが怒っている顔がプリントされています。この二人に勝つのはローマ兵でも厳しそうです」


ヘロドトス「それと同時に北の方から煙が上がっているぞ」


司馬遷「まさか、モンゴルが乱入してきたのか?」


実況「そ、そんなことをしたら乱入者は出場停止です。そんなもったいないことはしないと思うのですが、ティベリウス、アグリッパ両将軍が北に備えて準備をしています」


大ドルースス「ヤバ…。ちょっと調子に乗り過ぎたか? って、志村! じゃなくて兄貴、後ろ、後ろ!」


ティベリウス「うん?」


孟珙「御命頂戴!」


実況「おおっと! 孟珙隊がティベリウス隊の後背から猛然と仕掛けてきました。これは強い! これは凄い! みるみるうちにティベリウス隊が蹴散らされていきます」


岳飛「あ! 我々も行くぞ!」


実況「更に岳飛も城から出てきて、アグリッパ隊に攻撃を始めました。まさに乾坤一擲の大勝負! このまま両部隊を壊滅させれば宋の逆転勝利です!」


大ドルースス「救援に向かうぞ!」


ドルースス兵「もちますかね?」


大ドルースス「我々を誰だと思っている? ローマだぞ! ローマのメンタルはぁ?」


ドルースス兵「世界一ィィィ!」


ハルドゥーン「おおっ、間に合った!」


司馬遷「惜しい! 宋はあと一歩だったのに」


そして。


実況「タイムアップです! ローマ軍はかなりの被害を受けましたが、宋の支城を落としており、このまま包囲戦を続けていれば、音を上げる展開になりそうです。僅差ではありますが、ローマ帝国の勝利!」


岳飛「待てぇ! そんな机上の空論で決められても納得できん!」


呂文煥「少なくとも対戦期間を11年に設定すべきだ!」


司馬遷「ワールドカップなら2、3回開ける期間もやってられるか」



○ (7-19-9)ローマ帝国 VS 宋 (11-3-19)×

ローマ帝国が二回戦進出

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