第7話 風の導き

気づけばよく見知った場所にいた。

倒壊している建物とそこにあったはずの道場がないことが、これが現実なのだと僕に知らしめた。

さてこれからどこに行こう。城壁の方に行っても村人は守ってくれないって言ってたし……。

周囲をあらためて見渡す。魔獣は今はいないもののまた出てきて僕一人で戦えるだろうか。

僕の攻撃は全く聞いていなかった。

ガタンッ。近くの家から物音がした。

僕は緊張した。魔獣だったらどうしよう……。

この場を去るか音の正体を確かめるか悩む。

考えている間にまた音がした。

魔獣との戦いに慣れるためにも僕は物音の正体を確かめようと、できる限り音を立てないように近づいた。

窓のそばまでくるとそっと中の状態をのぞいた。

「……」

獣にでも荒らされたのか、家の中が羽毛でいっぱいになっていた。

僕はホッと肩を撫で下ろすと、次の目的地へと足を運ぶことにした。


朝日が登り始めてきた。

僕は定期的に休憩をとりながら、木が生い茂った森を歩き続きた。

常に周囲に気を配らなければならないので、徐々に進むペースが遅くなっていくのがわかる。

城壁が微かに見えるようになってきた。

引き続き進もうとしたその時。

ガサガサガサッという音が聞こえ、背中に痛みを覚えた。

気づけば僕は地面に倒されていた。

「おっしゃー捕まえたぞー」

僕を見下ろしていた人物が元気よく叫んだ。

「ってありゃりゃ、人じゃねーか。お前大丈夫か」

僕を立ち上がらせながら聞いてきた。

「えっ……あぁ大丈夫です」

僕は凄みのある表情に圧倒されながら答えた。

「まぁ坊やこんなとこいたら危ないぜ。早く逃げたようがいいぞ……っと待てよ」

ぶつぶつ独り言を言い始めた。

僕は唐突にその男に抱えられた。

「ちょっと大人しくしろよ」

男が軽くジャンプしたかと思うと、少し前までいたその場所にカカカカカッと何かが刺さった。

「おいおいおいこちらは緊急事態だってのに」

彼は走り続けながらなおもぶつぶつ言い続けた。

その後も降り続く攻撃を避けながら、走る足はやめない。

「あっ、お前その腰に下がってる刀貸してくれねーか」

森を抜け見晴らしのいい場所に着くと、彼は僕をおろした。

「どうぞ」

僕は刀を渡した。僕が持つととても大きく感じる刀。

しかし手足の長い彼が持つと、小さく感じた。

彼は刀の感触を確かめると。

風光一来ふううこういちらい

刀を薙いだ。

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