第4話 味方か敵か

グルルルゥ

魔獣の重低音の咆哮が響く。威嚇されながら、腰に下げていた刀を手に持ち構える。

目の前にいた大きな魔獣が襲いかかってきた。

敵から目を逸らさずに、刀を振り下ろした。

しかしそれを見透かしていたかのようにサラリと躱された。

どうしようどうしよう。鼓動が早くなる。

道場で稽古をしていたとしても実戦は初めてなのだ。どうすればいいのかわからない。

どこを狙えばいいのか、どのタイミングで攻撃すればいいのか。

魔獣は体勢を整える間も無く、再び襲いかかってくる。

考えがまとまらないまま、魔獣の頭めがけて刀を振った。

しかしやはり避けられた。

頬に汗が一筋つたう。

……初めて死を感じ恐怖で身体がすくむ。

しかし魔獣は僕の考えなどお構いなしだ。一斉に襲いかかってきた。

……終わった……。僕は目を瞑った。

「しゃがんで」

小さいけれどよく通る声が聞こえてきた。僕は素直に従う。

一瞬スンッと音が聞こえるとドタドタドタっと音が聞こえ。僕は恐る恐る顔を上げる。

えっ……何これ…何が起こったの?

辺りを見回すと、僕を取り囲んでいた魔獣は全て倒されており、魔獣の血を浴びた男の子が立っていた。

男の子がボソボソと何か呟くと汚れていた衣類が綺麗になった。

男の子が私に近寄ってくる。

「大丈夫?」

男の子が手を差し出す。

僕は立ち上がると「……ありがとう」となんとか声を絞り出し答えた。

「あっ!」

「えっ?」

男の子が急に叫んだので反射でつられて声を出してしまった。

男の子は僕より遥か奥を見つめていた。

そちらをみると、先ほどとは違う二足歩行の巨大な魔獣が立っていた。

「ごめーんちょっと行ってくるね」

そういうと男の子は一瞬で魔獣の元まで近づくと、敵の頭上より高く跳び上がりどこから出したのか巨大なハンマーを思いっきり上から敵に目がけて振り下ろした。敵に攻撃するその瞬間圧倒的な迫力に少し彼が大きく見えた。

一撃を受けた巨体は横に倒れるとドシーンと地響きがした。

……一撃……。彼は圧倒的な強さを持っていた。そして何より戦うことに慣れている。僕を殺そうと思えば一瞬なのだと思うと心拍数が上がり呼吸が浅くなった。

気づけば彼のハンマーは消え、また私の元に戻ってきた。

「ここ魔獣がいっぱいだねぇ〜」

ニコニコしながら答える。

「……そう……だね……」

「キミは騎士団の人じゃないよね?ここで何してるの?」

首を傾げながら聞いてくる。

「えーっと……」

なんて答えれば彼に敵と見なされないのか?答えに迷う。

「道に迷っちゃって……へへ」

笑って誤魔化す。

「そっかぁ〜それなら仕方ないねぇ〜」

ホッとしたのも束の間。男の子の目つきが鋭くなった。

ひぃぃぃぃぃぃ終わったぁぁぁぁ

瞬間ドスっと鈍い音が聞こえ、振り返るとそこに魔獣が倒れていた。

「ふぅぅ」

男の子はまたニコッと微笑んだ。

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