第6話 任務遂行

「それじゃあ、後のことは任せたぞ。」

「おう、行ってくる。」

シデンに挨拶し弟子の元へ向かう。

「用事は済みましたか?」

「おう、ライデンも言い残すことはないか?」

「別にねぇ。さっさと行こうぜ。」

ユウの質問に答える。その後ライデンの気を配り話しかけたが無意味なようだ。

「あれだけ嫌がっていたのに旅に着いてくるなんてなんか怪しいですね。」

「まぁ、いいだろ。」

サキの疑問に返事をする。

(ライデンが加わりこいつらがどうなることやら。)

二人を見ながら俺は考える。


「それでは皆さんお気をつけて。ライデンも風邪とか引かないでよ!」

「気をつけて行ってこいよ!」

「寂しくなったら帰ってきてもいいんだぞ〜!」

「うっせぇてめぇら!見送りもちゃんと出来ないんかぁ!」

ライチさんと共に里の人達がライデンを見送る。乱暴な言葉遣いをしているが里の人達からは嫌われてはいなさそうだ。

(むしろからかわれてるみたい。)

「みんなも世話になったな。本当にありがとう。」

「里の皆さんもお元気で。」

「良き経験になりました。」

師匠の後に僕とサキは里の人達に感謝を述べる。

「そうだ、ライチ。シデンのことだが心配するな。俺の知り合いの医者をここに派遣することになった。腕の良い奴だからすぐに良くなるだろう。」

「本当ですか!ありがとうございます!」

(師匠って医者の知り合いもいたんだ。)

そんなこんなで僕らは雷人の里へお別れする。

「そうだ!ライデン!」

「あぁ?どうし」

ライデンに声かけるライチさん。すると彼女は彼を抱きしめた。

「ちょ!おま!こんな大勢の前で!」

「今までありがとう。元気でね。」

囁くようにライチは言う。

そんなライチをライデンはおもいっきり引き剥がした。

「ちょっと!なにすんのよ!」

「それはこっちのセリフだ!急に抱きつくんじゃねぇよ!」

そんな彼らを里の人達ははやし立てる。

「おっ!また喧嘩か!」

「相変わらずだな〜」

この光景はどうやら里の名物みたいだ。

「まったく。でもありがとな。心配してくれて。」

「え?」

「でもよぉ!そんな湿気た言葉は姉貴には似合わねぇ!それに何も一生会えなくなるんじゃねぇからな!そこんとこ勘違いすんじゃねぇぞ!」

「ふふ、分かったよ。ライデン。」

雷の姉弟は互いに笑いあう。また会えることを信じて。

「つか、最後の何?ツンデレかなんかなの?」

「はぁ!?別にデレてねぇし!」

「いや、今のはツンデレだったな。」

「典型的な例でしたね。」

「僕でもデレたの分かりました。」

ライチさんの指摘に僕達は同意する。

「だからデレてねぇよ!」

ライデンはツンデレキャラだと分かったところで僕達は里の人達に見送られながら旅を再開した。


「さて、これから俺たちはマキナという国に行く訳だが。その前に!今更だがライデン!2人に自己紹介しろ!これから一緒に旅する仲だからな!」

「分かったよ。えーとライデンだ。気安くライデンと呼べ。」

「ユウです。これからお世話になります。」

「サキです。あなたのことは完全に信用してはいませんが、まぁ仲良くしましょう。」

僕達は互いに挨拶する。サキは相変わらずライデンのことをよく思っていないようだ。

「んで?こっから先どこ行くんだ?」

「これから俺たちはマキナという国に行く。ただ、ここからかなり離れているからなぁ。」

「離れてようが関係ねぇ。俺たち雷人はその気になれば1日でいくつもの山をかけるくらい早いからな。」

師匠に自信満々に話すライデン。きっと本当の事なのだろう。

「そっかぁ。ちなみにそんだけ走っても疲れないか?」

「いや、身体に負荷をかけて走るからな。1日も全力で走ったら流石に死ぬ。」

「それでは1日でいくつもの山をかけるの無理じゃないですか。」

師匠の質問に答えたライデンにサキがツッコミをする。

「そら昔の親父なんかはできたが今の俺には無理だ。」

(なぜ無理なことを言うのだろう?)

そう僕は心の中で思う。

「ライデンの速さなら1日もかからないだろう。」

「ほんとか?なら大丈夫だな。」

師匠の指摘にライデンはニヤリと笑う。

「なぁ、2人とも。提案があるんだが。」

「どうしました師匠?」

「私たちはライデンのように速く走れませんよ。」

「いや、お前たちが走るんじゃなくて俺が走るなら何とかなるかもしれん。」

その言葉を聞いて僕とサキは嫌な予感を感じた。


「師匠、ほんとにこれ大丈夫ですか?」

「下手したらこれ死にますね。」

「大丈夫だ!俺もこれやられた事あるけど生きてるぞ!」

心配する僕とサキを尻目に師匠は答える。師匠は僕とサキはそれぞれ腕に抱えながら走ってマキナまで向かうそうだ。

「なぁ、2人も抱えてほんとに大丈夫なんか?」

「お、2人の心配をしてくれるのか?」

「ちげぇよ。アンタが俺着いてこれるかって話だ。」

ライデンは師匠に挑発するように言う。だが師匠にはそんなのは効かないようだ。

「ライデンこそ、途中でバテても文句は言わせないぞ。」

こうして2人のマラソン対決が始まった。


同時刻 とある場所で

「ゴウが動き出したそうだ。時期にマキナに着くだろう。」

「先生、彼に任せて良かったんですか?」

書斎のような部屋に2人の声が響く。1人は黒の鎧に身を包んでおり中の人物を特定することは不明。

もう1人は赤色の短髪の少女。人間とは異なり耳の先端が尖っている。

「たしかに彼は先生に次ぐ力を持ち合わせています。そこは私も認めましょう。だけど今回のような任務は彼のような人物では少々部が悪いのでは?」

「ゴウだけなら心配だろう。だが奴は弟子を作ったそうだ。それも短期間に3人。彼らの実力を知るいい機会にもなるだろう。」

「その弟子も私たちの仲間に加えるつもりですか?」

「できればそうするべきだ。今は力を蓄え温存しなければならない。たとえ若い兵士でも正義のために戦うべきだ。」

「例の【奴ら】にそなえてですか?」

「あぁ、そのためにも今ここで見極めなければならない。」

2人は水晶玉を見る。そこに映し出されてるゴウ達を見てどう思ったかは不明だ。


「よぉーし着いたぞ!お前たち大丈夫か?」

「風圧で首がもげそうでした。」

「これ長時間やるもんじゃないですよ!」

「長時間つっても1時間ぐらいだろ。いや、それより早く着いたか?」

マキナに着いた僕達。師匠の恐るべき速さにより走ってない僕とサキですら疲れがきている。

「はぁ、はぁ、はぁ」

「ライデンもよく頑張ったなぁ!小遣いやるから後で好きなもん買っていいぞ!」

師匠の隣には疲れ果てたライデンがいる。

「はぁ、はぁ、おかしいだろ。こんだけ走って息ひとつ上がらねぇとか。人間じゃねぇ。」

本当に息ひとつ師匠は上がっていない。超人離れしているとは言え、いくら何でも次元がおかしすぎる。

「お前ら、へばってる余裕ないぞ!ほら見ろ!あれがマキナだ!」

そうして師匠が指さした方を僕達は見る。

そこには高くそびえ立つ鉄の建物がいくつも並んでおり、僕らの住んでいた所とは全く違っていた。

川や木はおろか、自然すら何も無い。そんなところに果たして人は住めるのか?などと疑問が浮かぶ。

「俺たちがいた国はワドウと呼ばれていて、四季折々の自然を味わうことが出来るがマキナは違う。夜もあの建物なんかが光り輝く。ライデンのいた雷人の里と同じ電気を使い光っているが、マキナは太陽の熱や風の力なんかを電気にしてる。」

師匠が語り始める。それを聞きながら初めて見る場所に目を奪われる僕達。

「俺たちはあの国でとある人物について調べる。だが規模が規模だ。いちいち国民全員に話しかけたりする暇はない。俺も全力を出して進めたいが、あれだけ大きい国だと派手に動けん。だからお前たちに手伝ってほしい。」

「分かりました。できる限り頑張ります!」

「いわゆる聞きこみ調査ですね。地道な作業は得意です。」

「俺の実力を見せる時だな。誰よりも早くこなしてやるよ!」

僕とサキに続きライデンも気合いを入れる。師匠だけに無茶はさせたくない。ここは僕ら3人が頑張る時だ。

「んで?誰を調べるんだ?」

ライデンが師匠に質問する。

「あぁ、そういや言ってなかったな。だけど人物が人物だ。馬鹿正直に聞いてたら怪しまれる。会話してる時にその人物の名が出たら聞いた方がいい。」

師匠は注意深く言った後にその人物の名を言った。

「調べるのはあの国の王。ルーツという男だ。」

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