第27話 無二の友
「君は研究者の鑑だよ」
バント博士はジゴー博士にそう声をかけた。
「そして私の最も大切な友人だ」
バント博士はジゴー博士に優しく声をかけ続けた。
バント博士とジゴー博士の邂逅の場は結構ものすごい事になっていた。魔法陣はもとより、その貴重な実験器具も実験素材も破壊され、燃え尽き、熱で溶けているのだ。勿論当のジゴー博士も無事ではない。その身体はほぼ消し炭となっており、普通の生物なら完璧に死んでいる状態だった。しかしジゴー博士はまだ死んでいなかった。
「本当に、君には感謝しかない」
バント博士は心からジゴー博士に感謝を述べた。
バーズ博士が不老不死の研究を行っているのに対し、バント博士は蘇生魔法の研究を行っていた。しかもそれは実はまだ彼が人間だった頃にほぼ完成していたのだ。
しかしこの術にはまだまだ研究課題がある。というよりその課題を解決しない限りはほとんど意味がない。何故ならばその蘇生術は非常に時間がかかる。例えば150年前にバント博士がジゴー博士を蘇らせた時には80年近くかかったのだ。そして勿論、蘇生中であっても生物の寿命が先延ばしになる訳ではなく、つまり蘇生中に寿命で死んでしまうという根本的な欠陥があるのだ。
しかしバント博士にはジゴー博士という無二の親友が居た。この友の素晴らしい点は基本的には死なず、しかし自身の召喚魔法の実験で勝手に致死になってくれるので、実験素材としては非常にありがたい存在だったのだ。
「しかし喜んでくれ給え、今度の研究ではかなり早い蘇生が可能なはずだ」
バント博士は無二の親友であり、貴重な実験素材にそう優しく語りかけた。
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