第2話 王国再興概要
カリストブルグ王国滅亡の理由は今もなお不明である。1302年のグランジオ大震災の影響で領土に甚大な被害が出た事は確かだが、しかし普通に考えて、地震の影響がそのまま政体の崩壊に繋がるとは考え辛い。実際にその王家、アッシャークラウド家の血統は生き延びており、後に王国を復興しているのだ。
「要するに呪われたんでしょ?」
歴史的経緯や宗教上の理由や政治など関係のない愚昧な庶民は、しかしだからこそ、立場のある人間が言い辛い事実をあっさりと指摘してしまう事もあったりする。
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かつてカリストブルグ王国は敬意を込めて「約束の国」と呼ばれた。現在は嫌味を込めてそう呼ばれる。そしてそれは前後で少し意味が違う。判り辛いのでここでは滅亡前を「前カリストブルグ」、復興後を「後カリストブルグ」と呼び表す事にしよう。
前カリストブルグはエヌフォニ神の真の加護を受けた約束の地、約束の国と呼ばれていた。その実態がエヌフォニ教で「法力」と呼ばれる魔法研究の成果を背景にした医療技術だったにしても、列強は大いにその力を頼り、そして敬意を払った。
後カリストブルグは一応正統の王家の末裔が再興した国ではあるが、列強は前カリストブルグとの同一国家との認定に消極的だった。
「王家の正統後継者である事と、国家が同一であるかは別の事である」
つまりアッシャークラウド王家の末裔が、大地震で崩壊した後80年近く放置された旧領土を復興して国家を開くのは構わないが、旧王国が持っていた列強への影響力、具体的には債権やら密約やらを無条件で認めたくないのである。
そして後カリストブルグの復興は、そのかつてあったはずの列強への債権を担保にしたもので、つまり王国の真の再興のためには、是が非でもこれらの存在を確保し、列強への承認と共に債権を回収しなくてはならなかったのである。
「約束は絶対である!」
別に国是という訳ではないが、カリストブルグ33代国王、というより後カリストブルグ初代国王カジル・アッシャークラウドはそう激励し、その約束の根拠を求めて旧王宮への探索を命じたのであった。
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