第1話
異形専門機関Rebel。本部を東京に置き、突如現れた異形の情報収集及び殲滅、異形に関する全ての権限を持った政府公認組織。
Rebelは二年前の大量虐殺事件から日々異形との戦いを続けている。Rebelの設立者にして機関のトップである桜羽一稀総帥は数ヶ月前に病で伏せってしまった。そのせいで息子である僕が総帥になってしまったのは悲劇でしかない。
異形と戦う隊員達には序列があり、上位16名で構成された
僕も総帥になる前はそこのリーダーをしていたわけだけど、もう一生やりたくない。普段から辞めたいとは思っていたけど、もっと面倒くさいことになってしまった。誰か代わって。
「はぁ·········眠い」
元はと言えば《下総》の皆が僕を推したのが悪いのだ。僕が面倒事大嫌いなことを知りながら笑顔で「総帥に相応しいのは瑛人しか居ない!」等と言うからこんなことになってしまったのである。タンスに小指ぶつけろ。
あぁー考えれば考える程憂鬱だ。僕はただ眠っていたいだけなのに。異形来んな。思わずため息を吐くと、隣から鋭い視線が飛んでくる。総帥補佐の如月和紗だ。
「瑛人総帥。本日はもう8時間も睡眠を取られたはずですが······?」
「一日は24時間だよ。神様が寝るためにくれた時間に違いない」
「はぁ、············バカなこと言ってないで仕事に集中して下さい」
えぇ······。隊員職員全員分の情報覚えたのに次は異形の種類を全部覚えろと。無理だよ。僕はそんなに活動的じゃない。
そもそもこの硬っ苦しい司令室に居る時点で精神を消耗するのだ。僕は総帥であり総司令官でもある。目の前には大きなモニター。後方左右には色々な機器と大勢の部下達。壁床はシンプルで対異形素材で出来た強固な銀色だけの空間。バタバタと人が駆け回る音と機械音。全くもって寝るのに最適じゃない。
どうせならもう少し楽な地位が欲しかった。今更言ってどうにかなる話じゃないけれども。仕方が無いので机に置かれた資料を読み進めていく。
高画質で写っている6mサイズの異形。大きな蛾のような見た目で、その全身は真っ暗な空に星がキラキラと光っているかのような姿だ。美しい見た目に反して中身は正真正銘の化け物である。
資料によると一般人被害者が三桁を超え、準3級隊員2名が重体。羽は鉄のように固く、体から放たれる鱗粉には麻痺作用があり、呼吸器系に悪影響を及ぼす。広範囲に効果があるから後方で控えていたスナイパーも軽傷、と。なるほど········。
僕は資料を置き、隣で鋭い視線を向ける人物に笑顔を向けた。
「これ、僕にどうしろっていうの?」
「·········それを考えるのがあなたの仕事です。死者が出る前にどうにかしてください」
いや、これ普通に無理ゲーじゃん。近づいたら鱗粉で麻痺、遠距離では気絶か羽でガードされる。しかも異形と来た。心臓が三つとかシンプルにヤバいし、普通に帰って欲しい。
「よし、一級隊員呼んできて。高火力でバーッと行こうよバーッと」
一級は隊員の中で1番上の階級だ。チャチャッとやってくれるでしょチャチャッと。僕に聞かずにそっちを頼ってくれ。
「一級隊員の殆どはAクラス以上の異形殲滅任務の為県外に居ます」
「············誰だよ、そんな任務与えたやつ······」
「3日前の桜羽瑛人という方です」
それ、僕の名前じゃん。なにやってんの3日前の僕。なんだか頭が痛い気がしてきた。ここ最近殆ど寝ていないから寝不足だ。たったの8時間で満足できるわけがない。僕は頭を抑えつつフラフラと立ち上がる。そのまま歩いていくと、和紗が焦ったようにそそくさとついてくる。駆け回っていた部下達も僕を見て頭を下げた。
「瑛人総帥が動くとは、珍しい·······」
「あっちの方向は──総帥の異権装が保管された部屋では?!」
「まさか自ら赴くつもりなのか?」
ヒソヒソと。これもうわざと聞こえるように言ってるだろ。良いよ、僕が直々に行くよ。死んだら一生恨むからな。
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