買い物

 さっき先生に渡されたお金で小説を買いに行くため、時雨と一緒に本屋に向かっている。

「ねぇ先輩、どのジャンルのラノベ買うんですか?」

「ラブコメとか異世界系とかかな」

 あとは、こっそり百合の小説も買──と、考えてる時に横を見ると 時雨はこっちをじーっと見てきていた。

「な、なんだよ」

「それ以外は?他に何か買いたいものがあるっすよね?」

 ギクッ。なんで…なんで分かるん!?うちの周りみんな心読んでくるじゃん!

「は〜、まぁ良いです。先生には言わないから何買うか教えてくださいっす」

そう言われて、自分はどうせ、心を読まれるなら言った方がましだ!

そう思い、本当に欲しいものの事を伝えた。

「へぇ〜先輩こういうのが好きなんすね」

「気に入ったら本を貸してあげようか?」

「あっ、大丈夫っすよ。自分で買うっすか」そんな事を話していると本屋に着いた。

「じゃあここで一旦分かれるか」

そう言って分かれたけど多分後ろにいる。

さっきの言動ではまだ確信はなかったけど、買うやつ同じだ。さっき自分で買うってたやつ貰ったお金で買うやつだ……

そして、そのコーナーの中にはさっきまで後ろに居た時雨が待っていた。

「──あれ?先輩奇遇っすね」

「奇遇?お前後ろに居ただろ」

そう言うと時雨の肩がビクッてなった。……当たりか。

「で、結局何買うんだ?うちはさっき見せた本を買うんだがお前はどうするんだ?」

「先輩と同じ本を買うっすよ?あっ、けど私が買うのは1巻ですけどね!」

この本は3巻まで出ている。うちは3巻を買う予定だから大丈夫か。

「まぁ、買ってから帰るか。ほら会計行くぞ」

そう言ってそれぞれ本を取り、会計に向かい、買った。

買い終わり、学校に向かって歩いていると、 同時にスマホが鳴った。自分のスマホを確認すると──


────────────────────

先生

おーい、二人とも早く帰ってこい。

お前ら二人待ってるやつが居るぞ。早く帰ってこないと、お前がデートしてるとかいうデマ流すぞ〜。リミットは10分だ。

────────────────────


それを見て自分は時雨を見た。時雨は何故か悩んでいる様子だった。

「おい、時雨!行くぞ!」

「あっ、先輩やっと名前で呼んでくれたっすね!」

「そんな事より早く帰るぞ!お前も見ただろ!?あのメールを!」

そう言うと時雨は頷いた「でも──」

「デートって思われても良いな〜って思うんすけど」

時雨は顔を赤らめていた。それを見て自分も耳が赤くなっている気がする。

けど、もう時間が無い!

うちはそう思い、時雨の手を取り走り出した。

「せ、先輩!?ど、どうしたんすか!?」

「もう時間が無いんだ!行くぞ!」

「っ!了解っす!先輩!」

そう言って手を繋ぎながら学校に向かって走り出した。


────────────────────

部室


残り30秒。私は部室の扉を見ながらそう呟いた。5分以内に帰れる距離なはずなのにまだ来ない。もういいか、デマ流す準備しよ。

準備している時に隣にいる五月雨と片霧(妹)が話しかけてきた。

「結局デマを流すんですか?」

「あぁ、流すさ。流すと言ってもさっき言ったこととは別のデマだけどな」

残り10秒──「ぜぇぜぇ…間に合った!」

そう呟いた直後に扉が思いっきり開かれた。

そこには手を繋いでいる時雨と片霧(兄)だった。

それを見た片霧(妹)と五月雨は驚きで声も出ないようだった。

私は片霧(兄)に言う。

「お前らやっぱり付き合ってたのか?」

「ちがっ──」

「あっ、分かるっすか〜?」

「やめろ、嘘を言うな!」

「嘘だったらお前らさっさと手を離せや。そっから手を繋いでた理由を話してもらおうか」

片霧(兄)が言っていたのはこうだ。

「残り10分って送られて来て、早く戻らないとデマ流されると思ったので、戻ろうとしたら、時雨がその場で立ち止まって動かなくなったから、手を取って走った。」

で、時雨の言い分はこうだ。

「私は別にデートって思われてもいいな〜って思ったっすから、このままでも良いのかな〜って思ってたら先輩が私の事を名前で呼んできて、そして、そのまま手を取ってきたんすよ〜」

私達は両者の言い分を聞きどっちの方が信憑性があるかを審査した。丁度、人数が奇数なので引き分けは無い。罰ゲームは何でもする。その言葉を聞き両者目を瞑って祈ってい

る。そして、判決は──

静井・時雨

片霧(妹)・時雨

五月雨・時雨


「ってことで片霧、お前、ここに居る全員から何でも言うことを聞かなければならなくなったな。おめでとう!」

片霧はもうダメだ、おしまいだぁ……、などと言っていた。そんな片霧に私はこう言った。

「何でもする内容は個人個人で送って貰う。別にこの中に居るメンバーにだったらする事を言ってもいい」

そう言い切った時、丁度 部活が終わる時間になっていた。だから私は買ってきた本をしまわせて。家に帰らせた。

仕事が終わり家に帰るとメールが三通来ていた。

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五月雨

先生ありがとうございます!上手く行きましたね!

────────────────────

時雨

さすがっす先生!よくわかってるじゃないっすか〜!

────────────────────

片霧(妹)

先生ありがとうございます!これ感謝の印です。


片霧(妹)のメールの下に写真が貼ってあった。それは、ひと目では分からなかったがそこにはのような姿をしているが居た。

私はスマホを一旦閉じて、部屋の机の上にある写真立てを見た。その写真立てにはの写真を触って。

「片霧…」

誰も居ない部屋で呟いた言葉は暗い部屋の隅に消えてった。



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