第6話時間

「やってしまった…」

(どうした?)

「お小遣い無くなっちゃった…」

(お前に計画性と云う言葉を教えてやりたいよ…)

初めて、あの女を家に呼んでからというもの大分ご執心なようだ。

もう何度呼んだだろう。その度ただ話しをして1時間が終わる。

一万五千円…この男にとって決して安い金額では無いだろう…そんな報酬を払う価値が果たして、あの1時間にあるのだろうか?

ワタシは甚だ疑問に思う。まぁ、しかし、その1時間はこの男は終始笑っている。

(お前がいいのならワタシはそれで良いのだが、しかしな…)

「この手を付けてはいけない支払いのお金を使ってしまえば…」

(!?)

(おいおいおい、ちょっと待て!お前はバカだがそれは無いだろ!冷静になれ!そのスカスカの脳みそをフルに働かせてみろ!)

意思の疎通が出来ない。会話が叶わない。只々、見守る事しか出来ない自分がもどかしいと今ほど感じた事は無い…

「なーんてねw流石にそれはマズイでしょwww」

ガガァーーン

…伸びをした手が当たったのだろう…ワタシは倒れてしまった。

「あー!ごめんごめん!」

ホントにこの男には小言の一つでも言ってやりたい。

ギッギギィ…

まったく…世話の焼ける奴だ。何もする事はできないのだが…

「げっ!?マジか⁉︎あちゃー…修理に出したらいけるよね⁇…」

(ん?どうしたんだ?…あぁ…これか…)

「ヘッドのヒビってどんくらい掛かるのかな…」

違うんだ。お前のせいではないのだ。

こちとら、もう60年は経とうとしているんだ。

安物の量産品の耐久性なんてたかがしてれている。

ギッギギィ…

ワタシの部位が軋む音が止まない…

この体にあとどれほどの時間が残されているのか…

出来る事ならこの男のこの恋をもう少し、もう少しだけこの男を見守らせてほしい。

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