第2話No thank you
「まただ…またやってしまった…。」
一人暮らしで独り言を言っているとボケるのが早い。と、誰かが言っていた様な気がする…
十畳のワンルームそんな手狭の賃貸住宅、玄関からベッド迄のほんの10歩程度の距離がやたらと遠く感じてしまう…肩を落とし、俯いた今の僕はどんな顔をしているのだろう…
「いかん!猫背になってしまう!今回もたまたまちょっと希望にそぐわなかっただけだ!次は大丈夫!」
これは経験則だが、良くない事が起こった時に項垂れていると更にちょっと重めの良くない事が寄ってくる。だから、しっかりと背筋は伸ばしておかなくてはいけない。
三十代も半ばに差し掛かり、そこそこ真面目に生きてきた人生の教訓。
手取り19万のしがない会社員。交際相手なんていない。過去の恋愛なんて苦い思い出ばかりだ…
自覚はある。人を見る目があんまり無いのだろうと。挙句の果てに騙されて、捨てられて、残ったのは肩代わりの借金…
「いけない!ちょっと暗い気持ちになっとる!全てはちょっと高い授業料じゃい!」
そう自分を鼓舞しベッドに身を沈めると傍らに立てかけているボロボロのギターに手を伸ばした。
我ながら嫌になる程マイナーコードの暗い曲ばかりが溢れて来る…
「キャンセル不可って言ってもあんな娘寄越す方も絶対どうかしてるって…」
「今月、もう一回くらいは女の子を呼べるかなぁ〜…ま、次は、次こそは大丈夫でしょ!」
そんな事を呟きながら僕は目を閉じる。
来週末に期待を寄せて…
「次、意にそぐわない時はちょっと強気に出てやろう!No thank youとバッサリ切り捨てる覚悟をもってやる!」
と、そんな事を思っていた事もありました…
♫ピンポーン♫
…ガチャ…
『こんばんは〜』
…心に花が咲くってこう云う事なのかな??
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