第40話
「お前、その拳銃は、沢城の拳銃!」
「この時の為に気付かれないように隠しておきました」
「ゲフッ! いつから気付いて……」
「色々疑問点はありましたが、雑でしたね。僕を見くびらないでください」
悪魔が血を流しながら倒れる。
「さて、これで後はあなた方を同じように殺すだけです。井田君もといあなた方から弾丸も貰っているので人数分殺せます」
周りの悪魔が身構える。
「さあ、那内さん、僕の背中に回って……那内さん?」
先ほどから那内が黙りこくっている。
那内がぐぅ~っとその時大きく鳴り響く。
「那内さん! 大丈夫ですか!? 貴方達! 那内さんに何をしたんですか?」
「雨狩君、お腹減った。アマカリクン、タベタイ」
「!? あっがぁ!」
那内の肩を触った雨狩が、サメの様な黄色い歯になった那内に手を引きちぎるように噛む。
「ぐあっ!?」
慌てて手を口から離した雨狩だったが指を四本近く、那内の口の中に食べられている。
「あ、ぐっ! ああっ! 痛っ!」
その時に撃たれた悪魔が起き上がる。
「なぁんちゃって! 俺、生きてるよ~。あらら、食事なうですか! 俺達の作った世界の武器だぜ。通じないようにしてんだよ。拳銃も知ってるに決まってんだろ! なんせずっとあらゆる人物で監視してたんだからよ~。景色も人もカメラ見てぇなモンだよ! 監視、監視ッ! かんしぃ! ってか?」
「えぐ! あぐ、あっ、あっ……あ……ああああああああ!」
「続きだ。質問代わりに答えてやるぜ、雨狩さんよ。エクソシストはでっち上げの組織だ。実在しねぇ、つーかそんな政府の裏組織なんているわけねぇだろ? ただの権力を盾にして他に伝えないようにした口実の為の架空組織だよ。聞いてる~?」
痛みもがく雨狩に、那内が靴のままの足を噛みちぎるように口に入れる。
「あっがががっがががああああああ!!」
「ああ、悪魔が悪魔払いの意味であるエクソシストを名乗るなんて、酷い芝居だ詐欺も良い所じゃないってか? 図書館の異形は俺の使い魔。俺は上級悪魔だから使い魔も出せるんだよな」
那内はひたすらに雨狩の体を喰らう。
「ああああああああああああ!!」
悲痛に叫ぶ雨狩に悪魔は淡々と述べる。
「どうしてこんなことをお前たちにするのかって? 俺達悪魔は神である負の感情を生物として分離されたからだよ。最初の分離された神の負の疑似意識の生物、まぁ悪魔か。それがセレナード様だ」
雨狩の肩足が無くなる。
雨狩は立ち上がれない。
涙を流しながら激痛に言葉を発せられない。
「神の監視下の世界で、俺達悪魔が迫害を受けて悪魔界なんて住むのに過酷な場所に投げ込んだんだぜ? 最高にイラつくよな? だからさ、セレナード様を封印から解けば神の監視下のチキュウを俺たちの物に出来る一歩につながる訳よ?」
もう片方の足が那内に食べられる。
「あがああっ! あっ! ああ! いだい! いだいだぢあいだ!!」
再び戻る叫びと激痛に雨狩は耳で聞く余裕などない。
「セレナード様は分離した神自身が恐れた負の疑似意識でな。俺達を生み出して悪魔界に放り込んで、セレナード様だけ封印されてるんだよ。疑似意識から負の人格である新たな神になるには愛が必要で、その為にお前たちが必要だった」
「あががががっがががあああいいい!!」
「そう熱烈に痛みアピすんなって、そうなる為のセレナード様召喚の儀式の為に、人間の愛を成立させなければならない。なにせ神は愛を得なければ神になりえない。どんな愛でも構わない。そこに付け入る隙が出来たのさぁ!」
「げぐ、おおがああぁ! いだ、いだい、いだ、あぃ!!」
「もう一度いうが、セレナードは負の疑似意識だが、愛を知る事で神に生りうる。愛が無いと神が生まれないと言うのが俺達と天使族の世界での常識だ。ならさ、歪だろうが、なんだろうが愛の儀式とやらにお前らを選ばないとなぁ?」
雨狩の両足が無くなる。
「あっがっが!」
「セレナード様を愛で神に昇華させれば、天使族にとって脅威になるからなぁ! 悪魔界の神になるワケだし、強力だぁ! 聞いてるぅ?」
雨狩は痛みで声も出なくなる。
悪魔は気にせずに陶酔したかのように話を続ける。
「初対面のフリも結構演技力あったろ? ほら、沢城の時のさ。シチュエーション作って愛とか言うの出させるの苦労したけど、結ばれたらもう儀式は終わりなんだよ。後はお前が食われて那内に悪魔セレナード様が体内に内から出てくるだけだぁ」
雨狩が腸の部分を那内に喰われる。
「そうそう、那内は結ばれると同時にもう人格が無くなっているんだよ。モータルブレイクザワールドは指定した対象と合意の上で愛を結べば自己が無くなる。神の監視下の世界で俺たちはこのチャンスを宇宙がチキュウを作り始めてからずっと神の目が離れる一瞬まで待ってたんだぜ」
「……! ……!」
雨狩が言葉を出せずに口を金魚のようにパクパクと弱々しく動かすも言葉が出ない。
「やっとこの星が俺たちの物になる訳だ。ああ、そうだ。最後のサービスでな、異形に殺されてもお前らは能力を借りなくても生き返れるんだわ。痛みは残るけどな。俺たちの悪魔の必死の会議でどうすれば能力を返さずにここまで来るか毎回会議の連続だったんだぜ。ってかもうほとんど喰われて死んでるか……」
雨狩はもう生物として機能しなくなっていた。
目は光を失い。
口には血と涎が地面に伝うように流れる。
涙が流れ、白目になっている。
那内が心臓を喰らおうとしたときに白い光が包まれる。
「なんだ!? この光は? 儀式の本には無いはずだ! どうなっている?」
悪魔がその光に怯える。
その光の中からスーツ姿の金髪のツーポイントの四角眼鏡をかけた男が現れる。
その男は雨狩の心臓を指したあの男だった。
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