第3話 Nothing comes of nothing

「そんなに辛いなら、食べなければいいんじゃない。毎回、辛い辛い言われるのも聞き飽きたんだけど」



 妻の一言は世知辛い。



 くそっ。

 一体、どうすりゃいんだ。

 私(作者)は頭を抱えて、ひとり呆然と佇む(リビングで)。



 別に辛ラーメンは不味いわけじゃない。


 このエッセイを通じて、辛ラーメンは不味いという誤った認識を持たれたら、それは私(作者)の意図するところではない。なんなら、辛党の人にとっては「ちょーうめー」「パリやば!」「BS(秒で昇天しちゃう)じゃね?」って言わしめるぐらい旨い!


 だが――。


 辛いのが苦手だけど、辛いのが好きという人間はどうすればいいんだ……。


 辛いのが苦手な私(男)と、辛いのが好きな私(女)が、恋の駆け引きをしている……っ!



 ……んなわけないか。



 ようは、辛味をもっとマイルドにさせて、辛ラーメンのもつポテンシャルを最大限に引き出せばいいわけだ。しかし、説明通りに調理しても一向に辛味が中和されない。一体、どうすれば。カタカタとPCを叩いている私の目に、ある閃きが浮かんだ。


 それは――youtube。


 きっと、どこぞの誰かが辛ラーメンの辛味を克服している動画を投稿しているの違いない。



 どれどれ。ぽちっとな。



 おお。あるある。大量の動画が投稿されている。いやはや便利な世の中になったものだ。一昔前なら、料理本ぐらいしか情報を得る手段はなかった。こんな個人のニーズに合わせて、様々な動画が投稿されている事実に驚愕を隠し得ない。



 のだが――。



 おいおい。どれも、この前、私が作った調理方法で旨い、旨い、言ってないか。辛い、辛い、なんて動画一つもないぞ。この動画、本当かよ。皆、辛党ってこと?


 ぽちぽちと更にクリックをしていると、どうやら辛ラーメンというものは、アレンジが多いラーメンであることが分かった。個人の嗜好によって辛めにしたり、マイルドにしたり様々だ。格闘すること数分。やっとこそ、マイルドバージョンを発見することができた。その調理方法に目が釘付けになる。



 なるほどっ! その手があったか。



 目から鱗とは正にこのこと。今までのインスタントラーメン人生において、こんな作り方があるのかと感動すら覚えてしまう。


 よし。私もこの方法でやるぞ……!


 テレレッテテレレ、テレレッテテレレ、テレレッテテレレレッレッレレ――。


 はい出来上がり。


 ずるずる、ずるずる。

 ああ、旨かった。



 おし★まい(^_-)-☆。


 



 とは、ならない。

 

 流石に雑すぎるので、ハッピーエンド?に至る結末を次に記す。



 Heaven helps those who help themselves―― 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る