第2話 Better to ask the way than go astray

「いつも適当に作ってるから、作り方なんて見てないでしょ」



 妻の冷静な突っ込みが骨身に染みる。


 

 確かに、その通りだった。インスタントラーメンなんて適当に作ってなんぼだろ。そんな慢心が己の胃を焼いたのだ。あれから体中が燃えるように熱い。大きな代償は払ったが、得るものは多かった。


 基本中の基本だが、メーカー推奨の正しい作り方を元に、正しい手順で調理しなければ大きな実りを得ることはできない。


 

 見てろよ。

 やってやる。

 絶対に、『彼』を美味しく食べてやる……っ。


 私(作者)は風呂に浸かりながら、入念なイメトレを繰り返す。のぼせる前に風呂から上がって、酒飲んで就寝。



 その夜――


 不思議な夢を見た。


 

 なぜか私は大きな鳥となり、優雅に宙を舞っていた。


 眼下には青い海と、西洋風の建築物が建ち並ぶ港町が見える。


 うわあ、すごい。


 思わず、嬌声を上げた――











 と、いうのは嘘だ。



 

 素敵な夢なぞ何にも現れず、普通に時は流れて、いつもの朝日が昇っていた。

 天気は快晴。

 今日もきんきん、さんさんに太陽が降り注ぐ。

 

 今度は袋の裏側を読み、ちゃんと調理開始。

 ふむふむ。なるほど。この辛ラーメンって、日本のインスタントラーメンとはちょっと違うわけね。



 辛ラーメンの特徴。それは――基本的に麺は煮込む。ということである。



 つまり、これはインスタントなラーメンでありつつ、一種の鍋料理ともいえる。ようは、乾麺と同時にお好みの野菜を入れてぐつぐつ煮込み、日本でいえば寄せ鍋ラーメン風に食べるのが韓国式だそうだ。


 そのため、かやくと粉末は先に鍋に入れる。当然、水の分量はきちんと量った。この前は適当に水を沸騰させただけ。どうりで、辛かったわけだ。己の無知を痛感。ついでに鍋にネギ、もやしを入れて、麺と一緒に煮込んで味を染み込ませた。最後に溶き卵を流し込んで、はい出来上がり。



 さて――この前のリベンジなるか……。



 どくん。

 どくん。



 想像以上に胸の鼓動が早い。



 初恋……。



 いや、違うな。

 これは、強大な敵と対峙した時に現れる武者震いに近い。



 へへっ。

 オラ、わくわくすっぞ。


 なんて、G空(DラゴンBール)の一人や二人も出てしまう。


 辛いだけの思い出なんかいらない。

 私(作者)が欲しいのは。

 ああ、美味しかった。

 これだけあれば世界も私も幸せだ。



 いざ――。

 実食。



 ずるずる。

 ん?

 ずるずるずる。

 んん??

 ずるずるずるずるずる………………………………って、おい!



 やっぱり、辛ええ―――――――――――――!



 とんでもない辛さだこれ。

 全っ然、辛味が中和されてないし(>_<)

 確かに、ウマカラなんだけど。パッケージに嘘偽りはないんだけど……。


 おいおい。これどうすれば、いいんだよ……。

 薄れゆく意識の中で(気絶はしてないけど)私は絶望的なことを思い出した。



 それは――。




 私は辛いのが苦手。



 残り1袋。


 It’s always darkest before the dawn――。

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