あと65分。
こうしてただ戦闘を見続けるのも皆様退屈でしょうし、さっきの話の続きをしましょうか。
この世界構造の話を――そしてわれらの
我々の世界は五次元であり、『五』とは『表』である。
光あれば影もまたあり。
『五』の次――六次元目が『裏』。
表裏一体という言葉が表す通り、六次元『裏』以降の次元は我々のを裏返しにしたようなものです。『裏』の一次元から始まり、『裏』の五次元で閉じる……という風に。5+5で……10。
つまりは世界全体は十次元構造となるのです。
ああ、憎き皆様を入れれば十一次元ですか。
おっと、失礼。
さて我々の世界は物理法則という絶対的秩序によって成り立っています。
では『裏』の世界は?
答えは――何もなき、混沌。
……読み方? 今更それを聞きますか。『ケイオス』に決まっているでしょう。
そう、
またの名を『外宇宙からの色』。
ご覧の皆様におかれましては『異形次元𐤏𐤍色彩』、のほうが見覚えあるでしょうか。
これらの事実は異形生命体――彼らは『裏』の世界からやって来たと言い換えることができるでしょう。
そんな彼らの目的とは一体何なのか。
(息を吸って静かに吐く音)
ここまで語っておいてなんですが……正直、私自身今でも信じられない思いなんですよ。全てを失い、失意の底にあった私にディアドコイが接触してくれた2066年のあの日に――事の真相を知った時の衝撃は上手く言葉にできません。
宇蟲(シャッガイ)のダレァグ・セテジカーン。
そしてYYitth(イズ)の偉大なる
彼ら――超々先史文明と時空平在文明の生き残りはこう言いました。
異形生命体の目的は、故郷に帰ること。
中央大藩国の神秘部は彼らの行動パターンを解析し『
それらから導き出されたのは……彼らの目的は侵略、であると。
まったくのお門違いですよ。
『裏』世界から来た異形生命体は法則の違いにただ困惑しているだけだというのに……
ふっ――――あっはっはっはっはっは! 面白いと思いませんか? あの姿を見せるだけで人を発狂死させる、
とはいえですね、この事実自体はそこまで難しいものではないんです。あらゆる生物にとって、自らが生誕した地――故郷は
そう言って
同時刻。
堆上人都ドッガーバンク、最下層にて。
【
VS
超人・ともえ & 魔人・ザクウェ】
激闘は続く。
「あれっ、わたしの手と足は?」
「かかりましたね
〈神器・イージス……Activate……Passive mode!〉
ともえ。ともえ。痴漢は同性でもいけないことです。平安時代はそこまで重い罪ではないかもしれませんが――ちゃんと時代に合わせましょうね」
ヌトスの乳房にともえが手を伸ばし、鷲掴みにした瞬間の事である。
邪神の持つ円盾が激しく蠢き、鞭状となって一閃。ともえの四肢を切り落としたのだ! 一瞬で戦闘力がゼロとなったその隙を見逃さず、左手の
「衝撃で粉々に、なんとあっけないことでしょ
「ばぁっ! ざぁ~んねんでしたぁ~」
――!」
違和感を感じた時にはもう遅い。
ほっそりとした両腕が槍に蔦の如く絡みつく。
慌てて引き抜こうとするも、
首の関節を後方へとずらし、槍の先端部を咥えたその端正な顔はいたずらを成功させた悪ガキのように――愉悦に満ちていて。
አፈር――መውደቅ, ክሪስታሎች!
動けないヌトスの頭部に、真上から放たれた鋭利な結晶が次々と命中していく!
「今だやっちゃえ、ザクウェくんっ、結晶落としとかでさっ!」
「俺が技出した後に言うな」
そんなコントめいたやり取りの最中にも結晶は降り注ぎ、たまらずヌトスは一瞬槍を手放す。そしてバックステップを――
አፈር――መሬት, ፍንዳታ!
ステップを終えた足元が突然爆発。思わず邪神はよろめき、
ውሃ――ጭቃማ ጅረት!
背後から前触れなく発生した濁流が
「いまわたしが持つ能力の全部で――きみを殴るっ! なんちゃって★」
「――ッ」
慌てて盾を構えるヌトスに拳が――の前に足元から放たれる蹴り。死角からの一撃に完全に体幹を崩された邪神はモロにその一撃を受け――夥しい量の切り傷が全身に発生。さらにまた後方へと吹き飛ばされていく、が。
አየር――መዶሻ
吹き飛ばしは左右から迫る圧縮空気の槌に挟まれ阻まれ強制停止、空中に固定させられる。
そして身動きが封じられた哀れな邪神に魔人は容赦ぜず。
እሳት――ከባድ የእሳት አደጋ ቦምቦች ይዘንባሉ!
無数の大火弾が艦砲射撃のように降り注ぐ!
更に――
አፈር・እሳት――የሚቃጠል ክሪስታል!
燃え盛る結晶が更なる追い打ちをかける。
着弾地点の床は熱により融解し、溢れる超高温の蒸気はヌトスを包み込む。
この灼熱地獄の中で生き残れる生物はまず、いないだろう。
魔人、ザクウェ。彼を一言で表すならば……大変品のないありふれた表現を使えば……俺TUEEE、だ。
通常、魔人はその身に使える属性はひとつだけ。そしてその属性に連なる魔法は最大で8つしか使えず、しかも同時に発動はできない。
願いを受け入れる精霊もまた、限界があるから。
しかし、彼は違った。
如何なる
仮にザクウェの義姉を歩く戦略兵器とするならば、その弟は歩くマルチロールファイター。
あらゆる状況に対応できるその力、いくらでも応用が利くその力は、まさにチートそのものなのだ。
だが。
「……チッ、火力が足りねぇ。一応フリゲート艦クラスなら余裕でスクラップにできるはずのをブチ込んだはずなんだが。耐久力お化けかよこいつは」
「その
「そういうことじゃねぇ……!」
「ふふふふふ」
邪神、不敵に笑う。
同時刻。
堆上人都ドッガーバンク、上層にて。
【
VS
激闘は続く。
GgrrryaAa……!
WollaaaAt……!
ファースト・アタック後の邪神ノーデンス、
あらゆる口径から放たれる弾幕を手から放たれる光弾と光刃が迎撃。両者の間に閃光と爆炎が咲き誇る。
それからしばし経過するも決着の兆し見えず。
お互いに埒が明かないと判断した彼らは攻撃をかわしつつ懐に入り込む肉弾戦へと戦闘フェーズを進めた。
GgoooryaAa……gGyazaaA!
――ollAa!?
ここで全身重火器の塊とも表現することもできるノーデンスの強みが発揮された。
⁅ゼパル⁆は遠距離攻撃をする際、手から放つ都合上「ながら」動作をすることが難しく、仮に攻撃したとしてもその命中率は著しく落ちる。
だがノーデンスは違う。
基地全体を揺らしつつ進撃するその姿が変形を始めた――
――左手は盾状になり飛行甲板を形成、更にその
⁅ゼパル⁆、回避と接敵を同時にこなすべく前方へとローリング回避を行うが。
Wo、Aaagoyo……daAAA……
立ち上がったその瞬間、後ろから攻撃を受ける。次々と。
機体と遺骨、そして何よりも魂が二度目の死花を咲かす。
それは回避行動の際にすれ違った特攻機たち。
彼らは目標に命中しなかったと気づくや否や急旋回し、自ら体当たりを敢行したのだ!
その背に余すことなく攻撃を受けた⁅ゼパル⁆はたまらず膝をつく。
その隙をノーデンスは逃がさない。
両肩が不自然に盛り上がり、左右それぞれに巨大な砲塔が出現する。
砲塔1つにつき、砲身が4つ。すなわち四連装砲でありそのサイズは33センチ50口径。
それは第二次世界大戦中の「メルセルケビール海戦」にて撃沈された
果たしてその砲火は怨恨か或いは歓びか。
繰り出された一斉射は全弾命中!
多少は的がデカいとはいえ、その精度は最早神業である。
OuUowhaagaa……!
苦悶の声をあげる
体内から飛び出した戦艦を右手が掴み、さながら
同時に――爆発。
戦艦槍の先端部に取り付けられたMark I 38.1センチ42口径砲――
その巨体は中央に聳えるノード・タワーに激突し、力なく落下する。
GgoooryaAa……hAAAhAAAaaa……
先程のお返しだ、と笑いながら左手の飛行甲板を変形させるノーデンス。やがてそれは英戦艦「ロイヤル・オーク」と仏戦艦「ブルターニュ」が醜く合体した世にも奇妙な大剣となった。
右手の得物が戦艦槍、であるならばこちらは戦艦大剣とでも名付けるべきか。
3年前に黒船・白船を喰らったノーデンスは取り込んだ遺体をより自由自在に操れるようになったのだ。
oOOwu……Waloo!
ふらつきながら立ち上がる⁅ゼパル⁆、それを見て何かを決心したかのように一段階高く吠え、右手を頭上に掲げる。
そして――
ダンタリオンの時と同じく肌と顔面が蠢めき融け始める。
GygygyzghbAAAaaa……!!
その行動に危険を感じ取ったノーデンス、技を潰そうと全速力で切りかかろうと
Gyaaa……?
した時にはもう遅かった。
というより
一体どこに――
Vyatt!
――! Byagygyzgh!!
背後頭上からの強襲。頭部に蹴りを入れられ、呻くノーデンス。無数の瞳は驚愕したかのように大きくなり、チカチカまたたく。
バッ! と後ろを振り返る。
――いない。
予感、横に避け――
Vyatta!
Byagygyzghh!!
再び蹴りが。
またも背中に。
衝撃で矢筒を構成する空母たちが破壊され、鉄くずをまき散らす。
VyiVyiVyiiiAaaa……!!!
嗤い声。
姿を捉えられず、苛立ちを露にするノーデンスの前にゆっくりと
シュモクザメのように横に飛び出た頭部。
青白い肌に浮かぶは嘲笑。
目は「^」の字。
悪魔に遠慮も配慮も慈悲もなく。
100メートルという身の丈からは考えられない速度での蹂躙が今、始まろうとしていた。
TO BE CONTINUED……!
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