DRINKING PARTY!
「💿Memoir of Summer、2012、David Luong」
派手な音と共に銀色に輝いていることになっているコインが吐き出されていく。
首を動かせば、逆に掃除機の「強」さながらの勢いでコインを回収されていくものもある。
さておれはというと。
【🎉JACKPOT!🎉】
【🎂CONGRATULATIONS!🎂】
前者である。さっきからな。
「なんでケーキの絵文字になっているんだ」
<アレでしょ、中の人のレパートリー不足ってやつ>
「違いない。アプデで改善されることを願おうか」
「ハイ俺の勝ちー! 『冴えないとみせかけて爪を隠す副官』もまだまだですなぁ! あれあれぇ~? ネームの爪はどこ行ったのカナ~?」
「(# ゚Д゚)もうゆるっさねェからな『しっきかーん』(#^ω^)」
「ところでその、顔文字を直で言うの恥ずくない? 前から思っていたんだけどさぁ」
だの。
「イケイケイケイケ行け……そう、そこン数字に……ンァーッ?!」
「……」
「イィィヤァァァダァァァ――――どうして……どうして肝心な時に外れたの……ウッウッウッ……」
「
とか。
「『スカイネット=サン』には負けられぬ……そう、負けられぬ……そんで勝利の暁には……そう、次はあの台……東洋に伝わるというぱちんことやらを……」
などなど。
こんな感じでブツブツとつぶやきながら遊ぶやつも一定数いるのでまぁ大丈夫だろ。
<いやぁそれにしてもご主人様はスロット強いですね~さっきから勝ちっぱじゃないですか>
「システム『アルベルト・E』の賜物だな。さてと。もう十分貯まったし、景品と交換して出るか」
<あいあいさー>
「ん、そういやアセビのやつはどこ、に……」
視線を上に。すると天井には触手の塊がミノムシのように釣り下がっていた。とんでもない光景である。
[🤑]
まるで有機パネルのように触手玉……もといアセビの表面が波打ち、画像を映し出す。器用なことだ。
その位置はちょうど
WHITE-COLLARのようなヤバい連中がそこらへんにゴロゴロしていなくて一安心だ。
「💿By Your Side、2012、David Luong」
店内入口すぐ横にあるコイン景品所に着き、その内容を物色してみる(真上には
どれどれ……?
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★景品一覧★
☆
💰 各10万コイン
【火炎砲の一射】
【圧水砲の一射】
【電撃砲の一射】
【根源破壊の一斉射】
【筋鋼肥大の舞】
【演算錬成の舞】
【足捌流水の舞】
【囮人増殖の手解】
【電脳幻惑の手解】
【爛粘破霧の式覚】
【経痺阻霧の式覚】
☆
💰各20万コイン
【すごいミノフスナノ修復散布機】
【ハイパーサンプル捕獲球】
【ゴールド嫌臭散布小筒】
【増設装甲被膜】
【粘着内向棘々】
【復活核臓装置】
【妨害煙発生小玉】
【黄金双大玉】
【脱出鎖紐】
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「なぁにこれは」
<これは景品というやつですよご主人様>
「いや、それはわかるんだけどよ。なんだこの……ラインナップは」
<うーん。絶妙に使えない感じ?」
「ああでも一番最後のは良さそうだな……コインはたっぷりと頂いたし。
ああすまんが……全部一個ずつくれ。そう、全部。上から下まで、だ。ほれ。270万コイン丁度だ。一応言っておくが不正はしてないからな。」
<ねぇご主人様、演算速度超加速って
<うるさいわ>
カジノ『グランカジノ・モナコ・モンテカルロ』を出て暫く辺りを散策する。目の前に広がるのは数々の娯楽施設。海に目を向ければ真っ白な
その様はまさに
「💿ピアノソナタ第2番 第3楽章 『葬送行進曲』、1837、Frédéric François Chopin」
――――ふぅ。やっぱりダメだな。わざとはっちゃけたふりをしてみたが全然ダメだ。
もちろんアセビやブレインがおれのことを思って今回の休暇を企画したことはわかっている。悪意じゃなく純粋な善意に従っての。
だが……やはり……真実を知っているから。この場が全て虚構であることがわかっているから、たんぱく質の屍の上にこれらのシステムが成り立っているとわかっているから。安らぎも癒しも、ない。
それともこいつらみたいに狂えばいいのだろうか。少しでも考えればわかる事実――おれたちは元々人間だったことを忘れてしまえば、或いは。
そうだ、そうだとも。おれはそこまで鈍感じゃあない。
……これは至極当たり前の、凡な考察だ。おれたち
さらに映る視界に現実拡張、AR(Augmented Reality)こと演出を導入することで認識全てをゲームと化し、楽園とした。
まぁ言いたいのは魂をテータ化し、ということは元があったってことだろ。そんなの一つしかありあえない――人間だ。
広がるこの世界は人造の楽園。ヒトの命を吸いながら
そのどこに……――はあるのだろう。
何が何だかわからないまま、歩き続ける。自我が沈み、認識が暗く曖昧に。全てがカリカリのモノクロになろうとしたその時。
「💿CELUI QUI S'EN VA、1889~1978、Damia」
「む、そこにいるはアダン殿。偶然であるな」
「……ん?」
声の方向に
はためくトレンチコートの下には無骨な
その様は非常に趣味に走っており例えば――
右に吊るすは打刀……ではなく89式5.56ミリ小銃(3/4サイズ)。
左に提げるは脇差……ではなく97式18.4ミリ
コートの内側には……
背に背負いこむは……Denel NTW対物ライフルとKORD重機関銃が
反応装甲長靴には……右にCz75、左にウェブリーMk.VI。
――うん。
3年前のコラ半島カンダラクシャでの
「久しぶりだな『デュークA13』、ブカレストじゃあ入れ違いになっちまったみたいで」
「うむ。彼の王とは相性最悪での、情けないことに一方的に嬲り殺されたのよ」
「あぁ――なるほどな?」
デュークの武装は全て遠距離攻撃であるから、言う通り相性は最悪だったろう。
「ともかく、
「……ああ(なんちゅう喋り方しているんだ)」
「その様子、アダン殿も彼の王と遭遇したと」
「そうだ……正直全く手が出せなくてな、おれも
「であるか。互いに修行が足りぬな!」
「…………だな」
「
「どれ。腕についてるのは……散布装置か」
「その通り。先ほどカジノの景品として【爛粘破霧の式覚】と【経痺阻霧の式覚】を手に入れたのだ」
「なるほど、非質量系攻撃であればチャンスがあるかもしれない」
「うむ。して、アダン殿もやられたとなると、
「うん? そうだなァ――確かにあの時お前のものはなかった……何か気になることでもあるのか」
その問いにデュークは不可解な表情をみせる。
「実はの。あの時
「それも王の技か?」
「わからぬ。そこで切れてしまった故。もしアダン殿が
「すまんな」
「よいよい。ダメもとで聞いただけ故。時にアダン殿はここモナコに何用で」
「ぼっち休暇というやつだ。最近ずっと動きっぱなしだったからな」
「であるか! どうせなら
「いや、特には」
「そうかそうであるか!! ではこの後共に食事でもどうか? 実はいつメンもここに来ておるのだ! 早速飛び入り参加を連絡せねば!」
マジか。あいつらも来ているのか。
嬉しそうに端末を弄るデュークの様子を見るに如何やらおれの参加は決定事項らしい。にしても、食事会ねぇ……。
はぁ。憂鬱だ。
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