第3章:変質【TRIO】
WHITE-COLLAR。
ぴちゃん、と何処かで音が鳴った。
――ぴちゃん。ぴちゃん。ぴちゃん。
また音が、鳴った。
ここ、は最も深い場所。全ては深き場所から始まり、深きから浅きに、やがて点は円柱に。
つまりここ、は中心。又は発生地点。それとも起動地点。世界の。
第四帝国 ノード・ゼロ地点『
崩壊した
ここ、は数多の無表情で覆われていた。全て艶のみの、黒。光はなく、それ故に内部構造が実際どうなっているか、誰にもわからない。
「ここ、はいきものなのだから――つまりだね、刻々と震え小刻みに慄きながら変態していく――だから構造なんてわかる筈ないだろう」
今ここ、は湿っていた。
空気中に格納しきれない水分が溢れだし四面を湿らせる。更に足元に広がるオイルと奇妙な結合を見せた結果、何とも形容しがたい不快さを醸し出す。
ここ、には子宮があった。鋼鉄の子宮は小刻みに震え刻々と慄きながら拍動と鼓動を続ける。
やがて中心部が
くぱぁ。
と裂け
べちゃり。
と子を産み落とす。
くぱぁ。べちゃり。 くぱぁ。べちゃりべちゃり。 くぱぁ。べちゃり。 くぱぁ。べちゃり。
そんなことが計6回起きた。
少女らは不快に塗れていたが起きる様子はない。
暫くして子宮の側面にある2つの円状突起から左右それぞれ3つずつ、卵が産み落とされる。卵には瞳があり、管があった。
管は器用な所作で立ち上がり、皺だらけの卵は
とてとて。とてとて。とてとてとて。
と歩き出す。
そうして皺だらけの卵は少女らと結合し、彼女らの瞳に光が入り込んだ。
立ち上がり、お互いを見る。
「ごきげんよう、御姉様」「「ごきげんよう、御姉様」」「ごきげんよう、御姉様」「ごきげんよう、御姉様」「ごきげんよう、御姉様」
ニッコリと笑い挨拶を交わす。
名を呼びあう。
「SHYLOCK。」「「JEKYLL。」」「「HYDE。」」「JOCASTA。」
「MELISANDE。」「IRINA。」
今やここ、は黒一色ではなかった。対色が混じり合い、明確な輪郭を描く。輪郭は
細蟹と。
蠼螋と。
馬陸と。
蜚蠊と。
螧蛯と。
蠏蟹が。
こうして大いなる流れに異色の
もし進化の仮説が真実であるのならば、生物というのは非生物から生じたのであるに違いない。
――トマス・ヘンリー・ハクスリー(1825~1895)、生物学者
凡人の脳みそは、どれもこれも似通っている。全員、一つの同じ鋳型からつくられている。同じ場面に遭遇すると、誰もかれもがまったく同じことを思いつき、さらに各人のさもしい魂胆が加わる。
――アルトゥル・ショーペンハウアー(1788~1860)、哲学者
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