VERTEX(THE KING IN BRILLANFINITY)
(前略)さざ波も、水面を乱す風もない、細長く、無人のハリ湖が見え、月の向こうに立ち並ぶカルコサの塔が見えた。
アルデバランが、ヒアデスが、アラーが、ハスターが、雲の切れ目を滑るように流れていき……
――『黄衣の王』 仮面 より
※著者、訳者は前話と同じものです。
【こ ん に ち は。 ず っ と、 逢 い た か っ た で す よ】
男のもの、女のもの、第三性、変進性、圧可性、珪性、とても言葉にできない様々な声帯より発せられる音々。奇妙な波動が大津波の如く、認識と咀嚼と理解。その度に頭蓋を震わせる。
【本 当 に 来 た ん だ。 つ ま り 実 験 は う ま く い っ た 証。 面 白 い ね
見ている。視らてれいる。その目、眼、メ。キラきラ アルデバランの仮面の奥らか、
【で も、そ の 形 態 は 全 く の 予 想 外。 極 小】
そのすたがはヒアデスの外套すっりぽとかっぶたとひがたであまたにあたるいちには∞のかがやきをmotuアルデバランの仮面がっあて左触にはっさあつの戯曲ク、『黄衣の王』gそのひうょしをせみていてああ!NANnDAのあのあ表う紙は頁のぶしょん「
【・ ・ ・ ・ ・ ・ そ ろ そ ろ 適 応 す る か な】
<あぁやばいやばいやばい! ううう~っ、電子存在異言語解析構造体緊急停止、粗製
――はっ!
「おおっれおれお……おれ、は」
<大丈夫!? 自我崩壊はしてない!?>
「……していたらこうして答えられるわけないだろ」
<よ、よかったあ~(´;ω;`)あのままだとご主人様の自我がバラバラになっちゃうところだったから(´∩`。)グスン>
「またお前に助けられちまったな。ありがとう」
視界の片隅で泣き顔のブレインがコクリと頷いた。
さーて?
目の前にいるヤツは
その
そこまで観察した時、目の前の存在は微笑んだ、ように感じられた。微笑みからは流暢な言語が飛び出す。何故か、やたらと親しげに。
「…………久しぶりですね」
「はぁ? 何言っているんだ俺とは初対面だろうが」
<ちょ、ご主人様そんな呑気なことを言っている場合じゃ>
「わかってる。コイツだろ、ブレイン。化け物共の王様というのは」
<データベース照合中……適合率、100パーセント。間違いない、どうしよう急いで逃げ──>
データベースの最後には「2298年の12月25日にカスピ海北方にて採取された」とあるな。それはともかく。逃げる、だと? そいつは――賛成だな。けど。
「無策で逃げられると思うか? ぶっちゃけ無理だろ。だから手っ取り早く逃げるためにさ、一戦、やろうか」
左手からナノブレイドを、更に周囲には磁気操作式ナノプレート群及び散布型反射緩衝フィールドを展開。これで全方位型攻撃とエネルギー系攻撃に備える。
防御には先程『エクスプロシブ』を放った時と同じように、プラセオジム磁石粉末を散布、電流を流し固定化させる。おれの表皮は格子状カーボンと流体衝撃緩和剤の複合装甲なのだが、これで更に鎧を上積みした格好となったワケ。
「全く、単なる
<あいあいさー!>
背面に電磁パルス波を発生させ、超高速移動を繰り出す。目標はただ一つ、強烈な一撃を喰わらして、奴が怯んだ隙に――逃げる事!
双方、刹那の内に激突
しなかった。というよりできなかった、の方が正しい。
【黄金の微風】
「何⁉」
「ちっ、さっきのお礼返しかよ」
地面に叩きつけられる前にGEAM(Geomagnetism amplifier)システム『ブラード』とPEWシステム『エクルズ』を同時に使用。空中にて態勢を立て直す。そして着地する前に――
「行け、ナノプレートども!」
おれの周囲に旋回していたプレート群に指令を出す。
【黄金の微風】
再び風壁が発生。質量体は受け止められ、やはり僅かな間を置いて外側に吹き飛ばされる。彼らの軌道を遠隔操作しつつ着地。即座に今度は背中よりM25グレネードランチャーを取り出し、連射。計6発の指向性を持たされた
「痛いです」
Haxszthulrは逃げることなく、頭上に触手を持っていき破片から身を守る動作をした。当然、無数の破片が触手に食い込み、そのまま切り裂き、極彩色の穢汁と膿片が飛び散る。破片どもは僅かに震え動いた後、沈黙した。Haxszthulrの傷口は観察する限りでは再生しないようだ。
……何だ? コイツは確かに化け物共の王、要はラスボスっていう立ち位置の筈。なのに今のところラスボスらしい強さというものをまるで感じない。
さっきまでおれは後ろを向いたら
「…………」
にしても何故動かない? さっきからHaxszthulrは仮面の奥を瞬かせているだけ。何もせずに突っ立っている。
「ねぇ私はよく覚えているのに。<
何だ、これは。なんなんだその、声は。まるで恋人に甘えるような猫撫で声。仮面がカパッと開く。そしてワスレナグサの形と成る。花言葉は確か――『私を忘れないで』。
奇妙なほどの静寂が場を包む。相手から殺気のようなものは全く感じられない。双眸は少し傾いて。待て、一体何処を見ている? 誰に向かって言っている?
視線を追うとおれの少し左側を見ているようだ。そこには何があるのかって?
宙にふわふわと浮いている――基本的におれにしか認識できないはずの――ブレインが――いた。
<えっ、ひょっとしてさっきの全部ワタシに言っているの⁉>
「一応聞くが何か心辺りは」
<あるわけないでしょ!>
仮面が閉じ、再び開く。今度はキンセンカ――『寂しさに耐える』だ。こっちの
Haxszthulrは
【黒きハリ湖の湧水】
足元に真っ黒な、それこそ吸光率が100パーセント近くもあると思われる沼が現れた。直径は2メートル程。そこからまるでお伽噺のように何かがゆっくりと浮上してきた。
それは
というか。なんかその武器、凄く
「なぁもしかしなくてもさ、アレって」
<うん。あの時の、
「
その刃先はこちらへと向けられている。それが滑らかに動いた、その時。
おれは驚くよりも先に『ブラード』を展開、爆風に巻き込まれるよりも早く後方へ退避。地に伏せる。
轟く轟音。揺れる大地。更に空中からは大気を切り裂く剣舞の鋭さを持つ爆音。視線を上げると急降下を繰り出す数々の戦闘機。彼らを間を縫うように、競争でもするかのようにロケット弾が追い抜き、遠慮なくその破壊をまき散らす。
これは……
その圧倒的な火力の前には些細な個人のそれなぞ何の役にも立たない。思わずそう思ってしまう。心が真っ白になってしまう。
だからだろうか。その声が――新たな邪神の
「【急急如律令‐静‐半球】でぇとはしつぱいしたようですなおうよ。こりたらもうおてんばはつつしむべきかとぐこうかんげんしまする」
○
おはようございます、こんにちは、こんばんは。
作者のラジオ・Kです。
一応ここに話タイトルの解説をば。
Vertex⇒最高点、頂上、天頂 等の意味。
()のThe King In Brillianfinity は訳すると「
Brillianfinity は造語でして……
brilliant( 光り輝く、さんさんと輝く)+ infinity(無限、無限遠)となっています。極彩色、を意味する英単語がどうもしっくりこなかったので。
ちなみに。
ハスター
Hastur
本作のハスター
Haxszthulr
The King in Yellow
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