ヘルプ、プリーズ、ミィ!
「💿The Dave Brubeck Quartet by Paul Desmond: "Time Out"、1959、Take Five」
メリット・デメリットを考案して、などと格好つけた言い方をしたが実際選択肢という如何にもゲーム的なものはなかった。
少しだけシュミレートしてみよう。
【A】
この得体の知らない訪問者をラボの連中に差し出してみる……
→(否定的な色の場合)
「お前もグルだったんだな! 連行、初期化、更生!」、となりアウト。
→(肯定的な色の場合)
「大丈夫か、何かおかしなことされてないだろうな? 念のために連行、初期化、更生!」、となりアウト。
まぁどう転んでもゲームオーバーだ。
【B】
この得体の知らない訪問者を匿ってみる……
→こ う な っ た。
「ねぇあなた。この羊羹みたいなもの、何の味もないね」[🤔]
「そりゃあこの国で食事なんて基本しないから――っておいさっき置いた偽食用ブロックはどこいった⁉」
「そんなに慌てなくても。ココ中に」[😋]
「それ食べ物じゃねぇのに!! 腹の中収めちゃったのかよ!」
くそう、今日一日だけで一生分ツッコんだ気がするぞ。
何をしているのかって? 楽しい楽しい食事の時間というやつだ。
第四帝国の連中にとって食事とは、この一辺が20センチ程の直方体――おれはこいつを偽食用ブロックと呼んでいるが――に古今東西の様々な料理のリアルなテクスチャを貼り付けて食べる。そして内容によって様々なバフがつく。例えば耐久値が若干UP! みたいな風に。
……ということになっている。もちろんそこに実体はなく単なる演出。なおバフは錯覚ではなく実際に内部構造が変化して強弱を発生させている。
今話題の味はそう感じていると思わせる、だけ。甘いもしょっぱいも酸っぱいも一切、ない。
「物足りないなぁ……そうだ!」[😈]
「……モニュモニュ( ・ω・)モニュ?……出来上がり! ペッ」[🍽️]
「おい。何、吐きだしたんだお前」
「スクラロースです。天然砂糖の600倍は甘いですよ。是非是非、どうぞ!」[🎁]
「…………ホントに一体何なんだよお前は」
「忘れました。てへぺろ」[🥴]
もう何かを言う気力も失いぞ。
手の甲に仕込んであったカートリッジを作動させる。分子アセンブラが窒化ケイ素・酸化アルミニウムを添加済みのセラミック剤を吐き出す。それはまず直方体――戦闘時に展開されるナノブレイドとなりつつあるが、ここに少し工夫をかけると……よし、できた。
小さなスプーンを創り出すことに成功する。最初の頃はわりとでこずったが、今はご覧の通り。便利なものだ。
掬う。一口。ふむ。ふむふむ。
「どっどうですか、自慢の人工甘味料のお味は?」[💓]
「口に入れる前と後で何も変わんないんだが」
「あれれ」[❓❓❓]
<あーすみませんご主人様。この
「マジか」
<だってほら、今の生活に必要ないじゃないですか。でももしご希望であれば何とかしてみますけど、どうします?>
「そうだな……時間ある時で頼むわ」
<あいあいさー!>
[😊]
【∩,,・д)本日のニュース速報!(∩´∀`)】
2301年6月15日版
🎉次回のアプデについて🎉
→→10月に予定されているオータム・アップデートにて遂にサービス開始以来となる初の期間限定・超大規模レイドミッションを実――
👷ミニ・メンテナンスのお知らせ👷
→→来週、それまでβ版であったオリジナルBGM作成機能を正式版にアップグレード❗ キミもTENISBOU🥎を使ってカンタン――
⚠お知らせ
→→第8000番工廠基地にてここ数ヶ月の間に複数回行方不明械人を確認しました。建造クエストを受注した皆様はくれぐれも警戒――
☠緊急クエスト☠発生のお知らせ
→→現在 東南失地領域内第1459番前哨基地『戰遺都市ブカレスト』にて大規模な異形生命体の
⚠お知らせ
→→特別編成戦隊エイギル〔Eine Million〕の募兵は来月で終了します。特別編成戦隊スロンズ〔
あれから二週間と少し経った。
慣れとは中々恐ろしいもので、突然押しかけ妻をしやがったこの奇妙な同居人の存在も慣れつつある。
朝が来た(ということになっている)。
もちろん「
〔
〔
〔
の3つに大別することができ、これらをクリアすると
これとは別に
なので皆嬉々として
ちなみに
そのほかにもおれのように――おっと。脱線が過ぎたな。もっと詳しく知りたかったらワールドペディアでも見てくれ。
今までの話の中で重要なのは
短く言うと馬鹿正直に早起きする必要なんでどこにもない。そう、ないんだよ……ないのに……さぁ!!
「💿Hector Berlioz、1803-1869、幻想交響曲 Op.14:サバトの夜の夢」
カンカンカンカン!!! [😡]
「――Zzz……」
カンカンカンカンカンカンカンカン!!! [🤬]
<ごっ主人様朝、朝ですよ~! 朝っさでっすよ~!!>
「ぬぉおおおやかましいわお前ら!」
おれは飛び起きた。
目の前に飛び込む姿は2つ。片方は宙に浮かんでいる。次世代的デザイン、青に黄のストライプ、赤のスカーフ、ニコちゃんマーク(こんなの😊)つきのヘアピンを灰色に挿している。ブレインだ。
もう片方は……ってやっぱりこちらも宙に浮かんでいる。四肢がなく、何かによって雁字搦めに拘束されたジト目無表情のおかっぱ頭。
「なぁおたくら。
「でも極東列島文化だとこうして妻が夫を起こすのが伝統らしいですよ?」[🤨]
「どんな未開文化だよそれ」
おれは再び愛しの空間へと潜り込もうとする。できなかった。アセビの舌がおれの胴体を締め上げ、宙づりにする。なんちゅう力だ。
「ダメですよあなた。ちゃんと早寝早起きしないと体内時計が狂ってしまいます。いうこと聞かないと……それっ!」[💀]
「う、おおおおお⁉」
そのままグルグルと縦に振り回される。天井と床と家具に当たらないように配慮された絶妙な半径。絶対コッチの方が健康に悪いね。
<おお~こんなに振り回されるご主人様、初めて見た。超新鮮! いいぞもっとやれ~\(≧▽≦)/\(≧▽≦)/>
「誰が上手いこと言えとというか頼む何とかしてくれ!」
かくしておれの二度寝計画はここに頓挫したのである。
「それであなた、今日はどんな予定?」[🙃]
「そうだな、いつも通り廃墟と資料漁りになるだろうな。あとは実弾射撃訓練とか」
〔
<それなんですけど、どうもそんな暇はなさそうですよ>
「なに?」
<ご主人様、これを>
視界を覆うHUDにスクリーンが投影される。その中身はメール。差出人は……デュークA13、か。アイツが、「硬派」を
開いてみる。タイトルにはこうあった。
『ヘルプ、プリーズ、ミィ!』
…………はぃ?
さて。
よう、俺だ。久しぶりだな。お前らの時間で152日ぶりとなるらしい。あとちょっとで半年とは、時の流れは
で、だ。このあとまさかあんなことになるなんて誰にも思わなかったわけだよ。そう、誰にも、な。
あーいや待てよ待てよ? ひょっとしたらあの王だけは全てお見通しだったのかもしれないな。というか思惑通り? あの行為が?
……うん。いつもの事だが連中の考えていることはよくわからん。
愚痴ばかりしていてもしょうがない。
とりあえずいつものやつ、やりますか。せーの。
Mission2:???
GAME START。
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