第1章:回視【SCOUT】

戰遺都市プラハ編

「おれ」

 おれはようやく気付いた。

 今いる「世界」は熱狂的かつ無機的におかしい事に。

 知性が訴える。良心が訴える。人間が訴える。

 他人の命を翫弄がんろうし、それを嗤う。そんな狂気が満ちていると。

 おれしか気づいていない。誰も気づいていない。見て見ぬふりとか、そんな甘い事など何処にもなく。お前たちは五千万もいるというのに。皆、人間を忘れている。


 おれは決心した。

 この「世界」から脱出してやると。おれまでも狂わないように。二度と言動を、行動を、取らないように。

 おれが、おれ自身でいるために。


 だが、今のおれは弱い。

 考えも無しに、直ぐに逃げる事は出来ない。絶対に失敗する訳にはいかない、この世界にリセットやり直しはないのだから。他の連中と違って。

 だから今やることは──強くなることだ。

 少なくともと対等に戦えるぐらいには、いや。それ以上に強くならなくては。


 そしてもしこの「世界」から逃げおおせることができたのなら。

 探すんだ。





 

 おれのルーツ、アイデンティティ──己の正体を。


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