プロローグ
──1914~1918、第一次世界大戦。
──1939~1945、第二次世界大戦。
──2038~2098、第三次世界大戦。
そして。
今宵数字が変わる。
変わりつつあ──
変わった。
三から、形状は
四に。形状は
──2302~????、第四次世界大戦。
正確には、2302年8月23日に、幕を開ける。
その7番目であるエッフェル塔、の残骸……高度91.13メートルの地点にて。
「ふーん。言語に絶する、巨大な、恐ろしげな純真な
沈黙。屈折、痙攣し、銅鑼を鳴らす、笑い声。
「ふふふファッッ──ァアアアハハハハハハハハハハハハハハハッアハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ──!!」
女は嗤う高らかに。身を大きくくねらせ仮面の奥から隠し切れない侮蔑の色が漏れ出す。
その轟音に反応するように足元を這っていた炎が音の主を避けるかのように外側に広がり、頭上の絡み合った鉄骨たちは不愉快そうに軋み声をあげる。
「ばっかじゃねぇの! なーにが真の平等だよ永遠の命だよ、見ろ見てみろよなぁ! そんなの所詮『0』と『1』の集合体、おとぎ話の妄想でしかなかったんだよデータっていう名前のね! そんな
赤と黒、白で彩られるゴシック風軍服(耐熱加工済み)に身を包む中央大藩国に所属する女──ハルスネィ・リーパー本人たちの眼前に広がるのは……滅び。
ハンブルグで、アルステルダムで、ブリュッセルで、パリで、マルセイユで、ベルンで、インスブルックで、ミラノで、ローマで、マドリードで、リスボンで。全てのノード・タワーにて見ることができるのは。
大地は灼熱の煉獄と化し、あらゆる地形を飲み込み、溶かし、区別を無くす。
大空は極寒の冰獄と化し、あらゆる個体を停滞させ、墜とし、騒乱を無くす。
即ち、第四帝国の終焉が広がっていた。
24時間前まで無限の物量を誇り散々藩国軍を苦しめていた帝国は今や過去のもの、記憶にしか存在しない。
北はデンマークのコペンバーゲン、南はシチリアのカターニアに至る、鋼鉄で造られた国家にはこの世の地獄が顕現していた。言語に絶する、巨大な、恐ろしげな純真な
新たな支配者──
意思を持つ焔……
様々な咆哮が世界を揺るがした。
「──ふぅ。笑った嗤ったぁ、あー疲れた。偶にはガス抜きもしなきゃね。てかなんかキャラが被っている奴いるんですけど。……さてと、この光景をちゃんと持って帰って若き大王サマに報告しないと……って、アレ?」
咆哮と比較すると、それは大変小さな、足音。だが、瓦礫を踏む僅かな音は彼女の体を強張らせる。理由は何も
音を立てる神物の、纏う気配故に。
思わずゴクリ、と喉を鳴らしつつそっと、振り返る。
白。ぬめる純白、しかし穢れに染まった名状しがたき、人型の、白。
視界一杯に広がる。
シロイルカの如き純白の、
ウルミと
開く。そこには目があり、立ち止まり、ハルスネィを見つめ、再び閉じる。
開く。そこには口があり、顔面にそれ以外の器官は存在せず。
【
「あっどーも……ってうわこりゃぁやばいなぁ。今この場にはガイアン先輩いないしこれってひょっとしなくてもアタシが殺らなきゃ、ダメ? ってか今『たち』と言いました? ひょっとしてアタシの力、バレてる感じ?」
懐からククリナイフとキンジャル・ダガーを取り出し、下向きにした両手を左右に広げ構えるハルスネィ。その顔には冷や汗と共に引きつった表情が張り付いていた。
壁のかたわらで
わたしはおまえにひとこと話そう
私の言う事を聞きなさい
私の教えに耳を傾けなさい
われわれの……により
大洪水が聖地を洗い流すだろう
人類の種をたやすために……
これが神々の集会の決定であり
宣言である……
──古代シュメール粘土板の記述より
さて。
よう、俺だ。どうしてこうなったか、突然時間が進んだモンだからみーんな気になるんじゃないか?
というわけで。少しばかり時間の針を巻き戻して、物語を語るとするぜ。俺が見たり聞いたりしたこと、よーく耳を傾けるんだぜ?
まずはそうだな……今から一年前、中欧の戰遺都市プラハっていうところに赴いた2人の帝国
ん? そいつの名前? それはな……
異形ト化シタ極彩色世界ノ冒険譚
第二部、START。
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