エピローグ
永引いた生命は悲哀を永引かせる。
──『人間の願望のむなしさ』より サミュエル・ジョンソン『人間の願望のむなしさ』
あきらめを知らぬ、本能的な女性は、つねに悲劇を起こします。
──『ろまん燈籠』より 太宰治
──風が吹く。
ここは寒い。
──風が吹き荒れる。
ここの支配者は極寒。
──染める色は、
異界の色が、全てを覆いつくす。
時の流れすら、色に染まり、忘却となるこの地、その座標は。
──北緯84度03分、西経174度51分。
即ち、到達不能極。その最北である。
全ての
聞こえる。何が?
──鳴き声。
聞こえる。誰の?
──女の子の、鳴き声。
聞こえる。何故?
──迷子になった、女の子の、鳴き声。
聞こえる。何処から?
──地の底に続く穴から、迷子になった、女の子の、鳴き声。
聞こえる。何時から?
──この星の生誕以来、地の底に続く穴から、迷子になった、女の子の、鳴き声。
なんて言ってるの?
──かえりたい。■■の世界に、
王は聞く。ずっと、ずうっと、嘆きの調べを聴いている。
仮面の奥に見える貌は何処か苦衷に満ちていた。
王は触手を5つ伸ばし、不揃いの異形な五芒星を掲げる。一辺がかぎ爪のような構造を持つそれの中央に
人はそれを
これは純粋な祈りの証であった。
──何年も、何千年も、何万年も、何億年も、手に入らなかった。この世界、
でも、ようやく慣れつつある。後はより効率の良い『情報収集』をするだけだ。
故郷に帰るために──
極彩衣の王、
足元には
「責めぬ故、ついてくるがよい」
それからどのくらい時間が経ったか誰にもわからないが、
その周囲を大勢の異形神がそれぞれの方法で、最上位の敬意を示しながら拝跪していた。
「
王は懐より1冊の本を取り出す。それはこの星の情報が「絵」となって表記されているものだ。
そしてもう1つ、懐より直径30cm程の珠を取り出す。これもまた、星の情報が「絵」となって表記されている。ただし、こちらは立体的に。
本は英語、珠はハングル表記。あの時と違い、王は文字を読み理解することができた。
2つを見て、捲り、確認し、見て、確認し……を繰り返す。やがて、次の目的地を見つけた。
それぞれを複数の穴だらけの触手で支え、頭上へと持っていく。配下に見せつけるように。そして目標を触手で叩く。その場所はこの星で最も巨大な陸塊より横へ大きく飛び出た、巨大な半島。
「ここの情報収集を、
粘つく比較的低温な焔の
一方で無機質な比較的高温の冷気を持つ
そんな彼らの足元を蟲たちが這いまわる。かつて
かつての60億年前よりの栄光は、その影すらもなかった。
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────────
歴史の出来事というのは全て偶然から生じるものである。
少なくとも当事者は、そう考える。
だが……
3年後。
西暦2301年、6月28日。
旧ルーマニア領、戰遺都市ブカレスト郊外にて。
両者はまた、逢った。
「…………久しぶりですね」
片方はやたらと親しげに。そしてもう片方はというと。
「はぁ? 何言っているんだ俺とは初対面だろうが」
<ちょ、ご主人様そんな呑気なことを言っている場合じゃ>
「わかってる。コイツだろ、ブレイン。化け物共の王様というのは」
<データベース照合中……適合率、100パーセント。間違いない、どうしよう急いで逃げ──>
「無策で逃げられると思うか? ぶっちゃけ無理だろ。だから手っ取り早く逃げるためにさ、一戦、やろうか」
男は格納されたナノブレイドを展開。更に周囲に磁気操作式ナノプレート群及び散布型反射緩衝フィールドを展開。全方位型攻撃とエネルギー系攻撃に備える。
また、男の体を覆う格子状カーボンと流体衝撃緩和剤の複合装甲の上にプラセオジム磁石粉末を散布、電流を流し固定化させる。
要は鎧を上乗せしたのだ。
「全く、単なる
<あいあいさー!>
その身に
挑むその先は、極彩衣の王。
双方、刹那の内に激突す。
果たしてその結末は、世界に与える影響は、如何に。
第10章及び『異形ト化シタ極彩色世界ノ冒険譚』、第一部 END
The Next Stage Is …………Europe,Fourth Reich.
お楽しみに!
○
こんにちは、こんばんは。
作者のラジオ・Kです。
約10か月前より連載を開始したこの処女作も、ようやく一区切りとなりました。
人生初の試みがこうして続けることができたのも、読者の皆様方の応援あった故でございます。簡素ではありますが、ここにお礼を申し上げます!
さて、第二部ですが……順当に連載可能かまだ未定でございます。
というのもこれより、私はニートを卒業し職探しの旅をしなければならないのです。そのため先に申した通り、連載再開は「未定」とさせて頂きます。
最後ですが、もしこの作品が面白い! と感じていただけましたら☆評価やレビューをして下されば幸いです。
それでは、またいつの日か、会いましょう。
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