三種の神船
元・欧州連合独立海軍、同軍スピッツベルゲン島基地「スヴァールバル世界遺伝子貯蔵庫」所属
緊急避難用遺伝子情報貯蔵船『ゴフェル』 入船管理室
「
「……27日に見たぞ。
「そ。全くもって情けないわよね。
「
「話が早くて助かるわ。魚の養殖だって去年、初めて成功したんだから」
それ以前までの養殖は悉く失敗したらしい。どうして? と聞くと。
「いい? 笑わないでね――マグロ、イセエビ、牡蠣、ワカメ……」
「ええ……。そりゃぁ、無理というものだ」
「やっぱりそう思う?」
「俺が知る限りの情報だが、どれもこの国にとってコスパが悪すぎる。特にイセエビの養殖なんかは
割と辛辣な物言いになってしまったが、実際そう思う。ロクな
「だよね。結局私達は『知識の断絶』を甘く見過ぎたのよ。だからあんな無様なことを、資源の無駄遣いをしてしまった。そしてある日、たまたま関連する本を召喚出来て……
「それで、食料自給率の残り90パーセントは……
力なく首肯する
「さて、先の質問にこれで答えとなったわけだけど。どうせならもう少し付き合いなさい。この機会に残り2つの『神船』を紹介するわ」
実のところ、その表情は命令ではなく「ついてきて欲しい」と語っていた。
10/30、22:13
あと、約18時間47分。
俺と
端末の地図アプリによるとここは
そこには主に軍艦が寄り集まり、1つの人工島のようになっていた。ミニ
AIpphone
・中心部
双胴式立体印刷機装備工作艦
現在改装を受けている艦
元サウスダコタ型戦艦、電子戦闘/工作艦「マサチューセッツ」
改装内容:対空火器装着、バルジ撤去、機関換装(蒸気タービン→ガスタービン機関へ)
・外縁部
航空母艦
エセックス型「レキシントン」
タイコンデロガ型「オリスカニー」、「イオー・ジマ」、「フィリピン・シー」「レプライザル」
工作艦
「関東」(元ロシア汽船「マニジューリヤ」)
大型原油タンカー(VLCC、20万~30万トン級タンカー)
「クナールⅣ」、「オーセベリⅫ」、「ゴクスタⅤ」、「トゥーネⅧ」
石油タンカー船
T2-SE-A1型、計8隻
「
帆走タンカー船
「フォールズ・オブ・クライド」
給兵艦
敷設艦
「つがる」
初島型「
戦車揚陸艦
シャーダル級「ケサリ」
トリュー級「アルジャン」
こうして一覧表として見ると眩暈がしそうな量だ。しっかし本当にごちゃまぜ、といった感じだな。あるもの全てを利用しつくす、ということがよくわかる。
アルゴー号はゆっくりとさざ波を立てながら、外縁部に位置する「
10/30、22:32
あと、約18時間28分。
元・大日本帝国海軍所属、
「何ですって!? 一機も残さず分解しちゃったの!?」
「うっ……つ、つい楽しくて……」
「そ、ん、な言い訳で許すわけないじゃない、このおバカっ!」
「いでっ!?」
連絡か何かの行き違いにより所有していたB29を全てスクラップにしてしまった
超高身長の
即ち「
端末内アプリの
俺は先程からふと思い出した超気になる大和型戦艦「信濃」や、「三種の神船」について調べることで暇をつぶす。
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∧ ∧
(っ'ヮ'c)ノ解説です(音声付き)~~~「三種の神船」のゆえん
・電子戦闘/工作艦「マサチューセッツ」
私達の知識の源ってわけ。でも残念ながら本来の性能を引き出せていないんだ……だから今は単なる知識の保管庫や各地域の通信インフラのみ機能させているんだ。
本来の働きって、どんな感じなんだろうね? きっとすごいことが起きるかも!?
・双胴式立体印刷機装備工作艦
要らない素材はΛήμνος《リムノス》が全て吸収、各種材料に再構成して
軍艦の改造、新しい船の設計製造、船の修理、生活必需品の合成……衣食住のうち、「衣」と「住」を支える大切な船なんだ!
ちなみに、規模が大きい改造なんかは小型ドローンやナノマシン群が対応するよ!
・緊急避難用遺伝子情報貯蔵船『ゴフェル』
でも、稼働時間が短いからあまり恩恵を受けてないかも? と思ったそこのアナタは勘違いをしているよ!
この船の最大の価値は旧時代に生息していて、既に絶滅した数多くの動植物の遺伝子情報が沢山あるってことなんだ! その数、ざっと10万種!
しかるべきところに持っていけば、彼らを完全復活させることができるんだ!
夢のある話だと思わない?
音声読み上げ協力:CeVIO AI 極北イブキ
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丁度解説が終わる頃、目の前では複数のクレーンが動き出し第1船倉からT-34を取り出し、次々とマサチューセッツに乗っけていく。
さらにマサチューセッツに隣接する戦車揚陸艦のハッチが開き、現れる
彼らを無数のドローン・ナノマシン群がわらわらと取り囲んで、それはそれは大変そうに、えっちらおっちらと運んでいく。行き先は……
ふと上を見上げれば同じような感じで
「どう、私の成果は?」
「本当に召喚できるものはランダムなんだな」
「そうよ。アタリハズレがあるぶん統一性が皆無なのが弱点なのよね。さ、もう用事は終ったことだし帰りましょ?」
「ああ」
差し出された手を俺は握り返した。
その手は差し出すのではなく、救いを求めて藻掻いているように俺には見えた。
○○○○○○○○
10/31、24:02
あと、約17時間と3分。
この日付を、よく、覚えておくがよい。
いよいよ始まるのだから。
○○○
アルゴー号、船上にて
「今日は突然付き合わせちゃってごめんね」
「これは『罰』なんだろう? 別にいいさ」
「……そういえばそうだったわね」
薄く笑う
――ここは船上。傍には、誰もいない。秘密の相談事には持ってこいだ。先手を打つとしよう。
「なぁ、
「何よ急に畏まって? ひょっとして告白だったりするの? 既に相手がいるのに――」
「いやいや、ほんのちょっと聞きたいだけさ」
真正面から
「無理して茶化さなくてもいい。俺が聞きたいのは大和型戦艦『信濃』のことだ」
「――っ! あ、あの戦艦がどうかした?」
「あの存在、一体何なんだ? 過去に存在したのは空母『信濃』のはずだろ」
空気が止まった。
目の前の女性の瞳には驚きと予想通り、という2つの色が交じり合っていた。
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