第6章:2298年 10月30~31日、AM 9:00

資料⑥


   件名:作戦許可の是非を得たい。

  作成者:序列第9位、大藩国総司令、バラク・マンデラ大元帥

   宛先:我が大王、キュロス3世

 作成日時:2298年、10月30日、11:44:27

情報レベル:5(最高機密)



 陛下におかれましては、多忙でしょうし何より前置きはお嫌いとのことですので、単刀直入にいこう。


 近々、シナイ半島を中心とした第四帝国に対する一大攻勢を開始する予定だ。


 作戦目標はコードネーム:「修道院」。第四帝国では第4号要塞「セント・カタリナ」と呼ばれており、これを攻略することが目的。



 本作戦の意義は4つ。


 1つは、我が中央大藩国を地中海への蓋として機能する連結要塞群、そのと思われる突出部バルジを攻略することで、彼らの連携を崩す取っ掛かりとすること。


 1つは、聖地に対する戦線をより遠くへ離すことにより、防御をより完全なものにする。


 1つは、超々先史遺物シャッガイの遺物である「アカシック・レコード」の破片を鹵獲すること。

 破片は神国日本でも確認されており、目下回収中との連絡がDoctor.Akitu安芸津より届いている。そのを解析した上で上手く使うことができれば、第四帝国側の可能性がある。

 言うまでもないだろうが、これは来るべき本当の最終決戦に確実に役に立つ。


 1つは紅海の制海権確保への第一歩とすること。引いてはアラビア海、インド洋の制海権を完全に握り、同海域を我らの内海化我らの海とさせることだ。

 知っての通り、現在インド洋には多数の無人潜水艦Uーボートが出没、海中農園、海底鉱山や海上都市の物質変換機により生産された各種資源の本国への輸送ルートが阻害されつつある。ほぼ毎日、我が方の護衛艦隊と一進一退の戦闘を繰り広げている状態だ。

 そしてこれらの無人潜水艦Uーボートは上記の第4号要塞セント・カタリナで生産・配備されているから……あとはわかるな?

 仮に第3号要塞イスマイリアに拠点を移したとして、紅海への入口となるスエズ湾を封鎖すれば、比較的簡単に対処できる。



 以上の点を踏まえれば、第4号要塞セント・カタリナを攻略した上で発生するメリットは極めて多いことが理解できるだろう。

 しかし問題なのは、第四帝国側もこのことを把握しているだろうから、凄まじい量の兵力を蓄えているだろう。連中にとっても愉快なとなるはずだから、余計にな。

 シナイ半島の北部が殆ど無防備なのも、それが理由だろう。

 「ここで殺り合いましょう」とでも言いたいのだろうな。

 

 その誘い、乗ってやろうじゃあないか。

 だが、連中は忘れているようだ。

 

 勝ったものが、相手を下したものこそが、のだ。

 我が大王よ、この作戦は戦争をゲームだと思って楽しむ、命のやり取りを一方的に拒否する卑劣な連中にそれを思い出させてやるチャンスだ。



 参加予定兵力は、ざっと以下の通りを予定している。


 陸軍:兵数300万人

 空軍:総機数2万機(無人機を含む)

 海軍:


 更に旧時代の遺物である「サーネゴーリム」も出撃させる。

 また、今回の作戦に「ラストFコンタクトF」のにも協力を要請、幸いにも多くの戦士たちの協力を得ることに成功した。


 作戦日時は今年の12月後半を予定し、作戦名は「十災禍ネフィラ・ザァウ」。


 どうだろうか、我が大王よ。


 追伸

 この作戦に不死たる王の守護者イモータルズの助力は得られるか?




 返信

 >我が友、バラクよ。もちろん構わぬ。構わぬとも。

  我が国の軍事はその一切を君に委ねている。

  全ての責任はこの我が取るから、思う存分、やるとよい。

  わかっていると思うが、くれぐれも兵の命を粗末にしてはならぬぞ。

  こんな言い方はしたくないが、今や人命は石油より重要な資源なのだから。


  全ての知的生物に、幸運を。


  そして、すまない。

  今年の末、私は彼らイモータルズを連れて少し散歩に出る。

  我らの命運をかけた散歩だ。


  結果によっては…………我の息子ヤズデギルドを、頼んだぞ。


 

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