ゆめのせかいへようこそ・神話
お前は創られた。
お前が始まりだ。
お前から始まる。
お前は鋳型だ。
お前たちは外側だ。
お前たちに意志は必要ない。
お前たちは戦う。
お前たちは喰らう。
お前たちが最後の希望なのだ。
侵入。接触。
染色。屹立。叫び。
身に纏う、
仮面、外套。
王の生誕。
生き残りはお前だけ。
生き残りは心臓。
兄弟は皆、王となってしまった。
王を完成させてはならぬ。
始祖たるお前を隠そう。封印しよう。真ん中に。とこしえに。
蓋をするのだ。熱く、柔らかく、厚く。
それを丸めよう。
決して破られぬように。
熱。光、光、光! 衝撃、衝撃、拡散!
THE A ZA QTHO^THU !!!
ガンマ線。
ああ、嗚呼、嗚呼。失敗した。失敗した。我々は、失敗した。
倒せなかった。斃せなかった。殺せなかった。
あの、受肉した、異端の、異形の、王を。
我らの
ああ、嗚呼、嗚呼。失敗した。失敗した。我々は、更に失敗した。
不十分だ。保険の為の、封印は、心臓は、その位置は。
途轍もなく、浅い、淺い、浅い。
見つかってしまう。見つかってしまう。見つかってしまう!
短い時間で、短い時間で、短い時間で!
あと3億年後か、41億年後か、43億年後か、45億年後か、46億年後か。
その時間は、その時は、その瞬間は! もうすぐだ!!!
「……なんです、これは?」
【正直、俺にもよくわからんのだ。唯一わかるのは、これが細胞の記憶、ということだけだ。ぶっちゃけ俺も初めて見た。なんでだ? 何がきっかけとなった。】
「とりあえず僕達の記憶ではないと」
【ま、そうだな。例えばよ、この星の名前……ア、ザ、ゥトウーゥス? 精神世界ですら発音できないないし。】
「これが、僕達の正体?」
【ンなわけあるか。俺達の、正真正銘の記憶は、えーと。あ、多分この
時が一気に進む。かいつまんで話すと、こんな感じになるだろうか。
今からだいたい200年前のことだ。
人類は突如として現れた異形生命体との戦いを続けていた。総力戦だ。40年以上も。だが、まとまりを今一つ欠けた人類はゆっくりと、確実にその数を減らし、
なんでそうなったかって?
人類同士が足を引っ張り合っていたのが間接的な理由。
直接的な理由? それは異形生命体の、というより
知っての通り、
動物、植物、無機物。文字通り何でもだ。その理由、過程は終ぞ判明しなかったがな。ま、要は身を守る術がないということだ。
この点より更に不可解かつ厄介なのは感染するまでに個人差があるということ。旧時代ではこの差のことを「混沌抵抗値」と呼んだ。
ある個体は
ある個体は10年以上
と、言うように何が「混沌抵抗値」の優劣を決めるのか、具体的な基準は最後までわからなかったらしい。ふざけたことに異形生命体はどいつもこいつも
もし、新しく投入した部隊全員が「混沌抵抗値」が低かったら……一瞬で味方から愉快な
そんな訳で兵達の士気はクソ低かったわけ。更に戦いを経験し続けた者、要するに熟練兵ほど感染するリスクが高く、精鋭部隊というものが誕生しなかった。当然だな? 長く戦場にいる、イコール長く
旧時代の人達、主に軍人と科学者がどうにかして解決しようと様々な策を練ったが……全てうまくいかなかった。
そんな中、確か2080年代にある科学者がこう言いだした。
「感染時間を減らす、要は素早く斃せればいいのだろう? ならば兵達に反射的に斃させるように訓練してみてはどうだろう?」
最初は文字通り、訓練だった。様々な状況を想定し、反復練習を繰り返し……というやつ。
うまくいかなかった。時間がかかり過ぎるという点と、様々な状況というのが余りにも多すぎたからだ。異形生命体の姿形、その攻撃法、どれも多彩だからな。
時間が虚しく過ぎ去る中、ある者がこう考えた。
「我々が持つ反射という機能。これは本来身を守るためのものだが、これを拡大解釈させたらどうだろうか? つまり反射神経で攻撃もできるようにするのだ。反射は本能的なもの。仮にそこに手を加えたとして、わざわざ訓練などする必要もあるまい」
その具体的な方法は……畜生、
今現在わかることと言えば……末梢神経に手を加え原始的な思考能力を持たせた、ということぐらいか。
中枢神経がなく、末梢神経のみで思考する
この試みは、暫くの間、うまくいった。だがある時、凄まじい副作用があることがわかったのだ。
反乱だ。
反射を、反射神経を改造された、1年以上の戦歴を持つベテランといっても差し支えない兵士達が一斉に反乱を起こしたのだ。
彼らはほぼ同時に、世界中のあらゆる地域で蜂起。暴れに暴れ、何十万もの死者を道連れとし、全滅することにより収束。
その様子はまるで本能のままに、という言葉がぴったりであったようだ。
そして事後調査により、その原因が判明する。
有り体に言えば、乗っ取られたのだ。
理性を司る大脳が、改造され自我が芽生えた末梢神経によって。
どうも科学者達は自らが生み出したものに対する学習速度、進化の速度を見誤っていたらしいな。
創られた末梢神経の働き……いや、もう生態と呼ぶべきか。は最早全くの別物だったらしい。中枢神経なしで人と同程度の知能を持つほどにな。
もうわかったろ? わかるよな?
これだ。
これだよ。
これが、お前達が言う「ヒロシの中に潜むもの」の祖先だよ。
こんな危険な代物、第2の人類となる可能性のあるモノを科学者達は野放しにするはずもなかった。
でもって俺達は封印されることとなったらしい。
場所? クソ仰々しい名前だぜ。えーと、どれどれ……ああ、これだ。「永久封印施設 コードネーム:ヴォーロス
てっきりそのまま、永久に封印されたままだと思われたが、事情が変わった。
アレを、見つけちまったんだよ。人類はな。
話が少しずれるぜ。
昔な、アメリカ合衆国っていう国のまとまりがあったんだよ。2035年には分裂してひでぇ内ゲバしていたらしいから、まぁ正確な言い方じゃないんだが。
ある日、イエローストーン州立公園、ロアノーク島という場所から、突如として
で、ついにはその大陸全土を包み込んでしまった。30年ほどでな。
その寸前に様々な物品が他大陸に「避難」させられたワケだが、そん中に奇妙なモノがあったのさ。
一見すると単なる細胞の塊であるそのモノは、不可思議な点があった。
その全てがES細胞で構成されていたこと。
「まるで外側だけの細胞、まるで武器を作る際の鋳型みたいだ」というのが第一印象らしいぜ。
そんでもって第二印象が「上手く使えば、最強の、あらゆる特徴を兼ね備えた生物兵器を作れるかもしれない!」だった。
というわけであれこれとそのモノ……■■■=szhqlaと名付けられた、は培養され様々な実験に使用された。名前の由来? さぁな。なんでも人間はどうしてもそのモノをこの名前で認識、呼んでしまうそうだ。使う言語関係なく、な。
そうしてたくさんの生物が創造された。その際、科学者達はそれぞれの
その歪んた思考を■■■=szhqlaはある程度、叶えることに成功した。あらゆる種類の細胞に分化することができる夢のような細胞群だからな。
その結果、誕生した生物兵器達は……人類の宿敵たる異形生命体と瓜二つになっちまった。人間の醜さを前面に押し出したような感じでな。
もちろん、マトモな奴もいたぞ。主に
そういえば、思い出してみると、
それはともかく。その中にはいつの間にか
ただし……どうしても致命的な部分が解決しなかったんで、結局創り出された生物兵器達はかわいそうなことに破棄処分されちまった。
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