神ヘト至ル儀式
*
10/27、23:43
言われるがまま、シャワーを浴びて今日買ったばかりの厚手、長袖のパジャマ姿となる。白色だ。
とりあえずダブルベットに腰掛けてティマを待つ。
何故か早鐘を打つ心の臓。
何故か思考は円を描き、永久の輪となる。
*
10/28、24:01
シャワーの水音が聞こえる。
何故か沸騰しそうなほど煮えたぎる体液。
全身に鳴り響く心音。
水音が消えた。
扉が軋む音。
いつもより半分ほど細めた目と微かに口角が上がっている口元。上気し朱に染まる肌。その姿に目が離せない。
「……なにぶん、久しぶりの行為ですから、どこか不慣れなところもあるかと思いますが、安心してください。一応、これでも
ティマが横に座る。微かに肩が触れ合う。
顔がゆっくりと、睫毛一本一本が見える距離まで、両腕を顔へと伸ばしながら
近づい
た。
頭と肩が柔らかく固定される。
最初は接触していただけなのに、やがて少しずつ浸透していく。ドアの隙間から漏れ出る水のように。
やがて扉がこじ開けられ、完全に決壊した。
にゅるり、ちゅるり、と泡立つ粘性を伴う大量の水と湿り気を帯びたざらりとする肉片が侵入。一方的に蹂躙を始めた。
「……!?、ん、んんー!?」
最初は中の広さや間取りと確かめるように、ゆっくりと。が、5秒ほど経つと動きは激しくなり、自身の肉片と絡み合い始める。
決して大きな音ではないが、確実にそのねちっこい、淫らな音は耳介から外耳道を通り鼓膜を震わせ、それはやがて聴神経に伝わる。
「……んっ。ぺろ、はむ……れろ、ちゅっ。……ん、ぅ、じゅる、あむ――っは、ん、れろ、じゅるぅぅ――」
力弱く、けれどもがっちりと
目の前には潤んだ、見たこともないはずの「星」が紫色の空にきらきらと
やがて、「――っ、は、あぁ」という
ファーストキス、という単語が海の底の大樹から落葉し、木の葉のようにひらひらと舞う。
2人の支配権は熱によって完全に掌握された。
瑞々しい橋が指に絡め取られ、
2人分の熱を内包する橋の残骸をティマが舌で舐めとる。
その顔、その表情は肉慾と歓喜と思慕と──思いやり、慈しみ、愛情が複雑にうねり絡み合っていて。両腕による枷を外しそっと僕を押す。
抵抗もなく僕の体は吸い込まれるように水平になりベッドに押し倒された。
その上にティマが馬乗りになる。
ティマの種族、その身体的特徴である紋様──彼女の場合は右半身全体を覆う紫色 ──が神秘的な、かつ妖しげなものに見えた。
全身の熱が顔とある一点に注がれていく中、ゆっくりとティマは僕と体を重ね合わせた。
2人分の影が一直線に重なる。
*
10/28、
瑞々しく、程よい質感のフライパンが跳ねる中、ヘラでもって請われるままに調理を始めた。
油が満ち、カン高くパチパチと鳴り響く。熱気が籠り、原初の本能に火をつける。
とろ火であった調理はやがて激しさを伴っていく。
液状のスパイスがふんだんに素材へとかかり落ち美味な香りで満ち溢れる。
肉どうしを絡め合わせ、よりよく仕上げていく。
時に肉の位置、裏表を変えて、形を変えて、確実に火を通していく。
何度も互いを接触させ、熱を盛り上げていく。
しばらくして、終わりの
両腕のフライパンもヘラもタイミングよく激しく震える。
最後の調味料が一気に溢れ出す。
そして後に残るは余韻。
一直線に並んだ影はゆっくりと2つに再び分裂する。
2つの影はやがて寄り添い、その動きを止めた。
聞こえるのは吐息のみ。
〇〇
彼には仲間がいた。決して孤独・無縁ではなかった。
だが外の敵意は数が多く質も量も膨大だった。
訳も分からず戦い、その度に加速度的に高まる敵意。摩耗する精神。
生まれて2年。自我を確立して半年の身に、それは余りにも酷で。
必要なのは内からではなく外からの、愛。
今、それは与えられた。ある意味偽物なのかもしれない。本来は育むものだから。
それでも確かにこの時、彼は救われた。
●
【これが、そうなのか。生物を、人をそうたらしめる最大の要素か。∞の命と可能性を持つ■■■=■■■■■■が持てなかったもの。
●
〇
はるか遥か昔、神は強かった。神は両性であったが故。
神の眷族たる人もまた、そうであった。
強き力を、不完全な存在が使えば、破滅を
かくして人は切り離された。男と女に。
切り離された人はやがて合一し、1つになることで両性を、神性を取り戻そうとした。極めて原初の、神聖な行為かもしれない。
今晩の行為は神へと至る儀式と言い換えることもできるのだ。
さて、問題は、その片割れが神であることだ……
神とその眷族が
関東地方某所
10/28、09:12
そこの大気は濃密で豊かな忌々しき極彩色であった。
王はふと顔をあげる。
「Heretic……my heart」
「很糟糕,很糟糕」
「لا تزيدوا البدعة ، لا تغفروا」
「Iustum. Hoccine est iocum dare illis experientiam?」
「Xintahlozzs! Come here!」
王はその山、標高3776.12メートルの頂から飛び降り、
その足元には1匹の狩獣がいた。角張った
山がかすかに身じろぎをした。
人間はその山をかつては「富士」と呼び、信仰した。
人間はその山を現在は「
あと、79時間と53分。
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